「ほんとに雄英受けるの?」
またこの夢だ。
オレは、この夢が夢だって自分でわかっている。
明晰夢ってやつだけど、いつも不思議だなと思う。
『…受けるって言ってるだろ』
一応用意してくれている朝ごはんが、ホカホカと湯気を上げている。
これもいつもの風景だ、とふいに懐かしく思った。
「どうしてそんなにこだわるのよ」
母さんはそう言う。
こんな話もしたなぁって、遠い記憶を遡りながら味噌汁をすする。
『母さんは分かってくれないから』
そう小さく〝いつもの言葉〟を呟くと、母さんの機嫌は露骨に悪くなった。
「…いつもそうやって…」
「女の子らしい女の子に、育てようと思ったのに」
〝お母さん〟の顔が、くしゃりと歪む。
…ああ、やめて。
〝オレ〟を否定しないでくれ。
「どうしてお前は…」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。