第81話

62.New Game
68
2026/01/27 21:39 更新
カッと視界が明るくなる。
誰かがカーテンを開けたみたいだ。

目を開ける。
上から何かが落ちてきた。

アズリエル
アズリエル
うわ、うわあああッ!?!?
アズリエル
アズリエル
なッ、なにこれ・・・!む、虫ィ!?

顔にかかるムカデのオモチャ。
これはアイツの仕業だ。

アズリエル
アズリエル
んもー、何をするのッ!!びっくりしたじゃないかッ!
_ _ _
_ _ _
おはよう
ねぼすけ


大罪人は、ははっと笑ってベッドから飛び降りた。
虫のオモチャこんなに散らかして・・・!しかも片付けもしてくれないし。

一個一個拾い集めてハコに入れる。
─── あしたは、やり返す。


絶対に。



_ _ _
_ _ _
アズリエルが寝穢いぎたないのがわるいよ
アズリエル
アズリエル
そんなことないよーだ

「ばーか」
「そっちのほうがばーか」

二人で言い合って、
そのうち下らなすぎてどちらともなく笑う。


お着替えをして、顔を洗って・・・。
玄関を出る。


あなたがヒョコと顔を出す。
───そして、みんなも後ろに集まっていた。

ボクたち待ちだったみたい。

あなた
おはよ
_ _ _
_ _ _
んむ。出迎えご苦労
あなた
へいへい・・・
おはよう、アズリエルも
アズリエル
アズリエル
おはよあなた。
みんなもおはよー

あなたはちょっとしゃがみ込んで、ボクの前髪をつまんだ。
ゴミでも付いてた?と聞くと「ううん」と否定が返ってきた。

アズリエル
アズリエル
じゃあなに?
あなた
寝グセが、・・・・・・ちょっとまってね、
アズリエル
アズリエル
いいよ、別に
・・・いつものことだし
_ _ _
_ _ _
あなた?その寝癖がなかったら
アズリエルって分かんなくなるよ
_ _ _
_ _ _
雨に濡れても、
すーぐにビョンって出るんだ。
まるでアズリエルの内面みたいさ
アズリエル
アズリエル
ねえ!? それ、どういう意味!?
_ _ _
_ _ _
素晴らしく”決意が固い”ってこと
アズリエル
アズリエル
む、むぅ、褒められて、るんだよね
・・・・・・まだ?
あなた
ん・・・、まあこんなところかな!
アズリエル
アズリエル
ありがと
_ _ _
_ _ _
・・・傍目には変わらないが
プロが見たら違うのかな?
あなた
そうそう、そんなかんじ
あなた
・・・じゃっ、行くか~!
みんなー、しゅっぱーつ!

みんなが、拳を上げたり手を振ったりした。
・・・さて、今日は何処に行くんだろう?






─── 歩く、歩く。

先頭に立った子が、前へ前とボクたちを連れて行く。

横にいる子がつついてきた。
わあとびっくりした声を挙げると楽しそうにした。
お返しにつつき返すと身をよじる。


どちらともなく飽きたタイミングで、
木の枝を拾って床を叩く。

ボクが拾うと、他の子もマネして拾う。
棒を滑らすとザリザリと音が鳴る。
皆で木の枝の大合唱。



先頭を歩いている子が、ついに脚を止めた。

あなた
おぉ、ここは・・・川、釣りでもするの?

先頭の子が頷いた。
なるほど。ココが今日の目的地ってことね。

みながいつの間にか持ってた棒が役に立った。
先頭の子がカバンに入れていた細い糸を取り出し、
棒に結びつけて、針を取り付ける。

もやい結び?とかいう結び方で固定すると取れにくいらしい。
へぇえー。

_ _ _
_ _ _
さて、釣れるかな?
あなた
どうだろう?ぼんやりした魚なら穫れるかも
あなた
・・・キミって釣りがすきなんだ?

その子は「うん」と頷いた。
シュルリ、と手慣れた手つきで水面に向かって竿を投げ入れる。

それを見様見真似で、皆が次々と竿を振った。

・・・。
あなた
・・・
_ _ _
_ _ _
・・・魚影みたいなものは見えるけど・・・
_ _ _
_ _ _
・・・・・・
_ _ _
_ _ _
やーめた!!!つまらん!
あなた
ぅえぇ!?
あなた
あーあーあー
あぶないあぶない



10分と経たず飽き始めた_ _ _が、
川に飛び込んだ。

すると他の子たちも次々と飛び込んでしまう。

水しぶきが顔に掛かった。

アズリエル
アズリエル
・・・うわッ!?
あなた
つべたッ・・・どうする?
わたしらで別の場所行って釣る?─── あ、キミも行く?
いいよいいよ、いってらっしゃ~い。

釣りを提案した子も、水へ飛び込んだ。
そうなると、ボクはあなたと二人だけ岸に残った。

あなた
・・・ふー、川の魚はもう全部どっかいってそう
アズリエルもあっち行ってきたら?
アズリエル
アズリエル
ううん、いい。

・・・濡れるのスキじゃないし、
ツルツルのニンゲンと違って、乾かすのが時間が掛かるし・・・。

あなた
ふーん?そーかい、
あなた
じゃっ、わたしもいいか
・・・ッへ、くしッ

あなたがくしゃみの後に寒ッと呟き、ぷるりと震える。
─── なんだか、ボクらより大きいのに、身体が弱そう。

すると、あなたはボクの真後ろに座る。
笑って背中に軽く体重を掛けた。

アズリエル
アズリエル
寒いんだー?
おおきいくせにー
あなた
んー、そー。
子ども体温あったけー

アズリエル
アズリエル
いいけど洟水ハナミズを付けないでね
あなた
そう言われると
逆に付けたくなる・・・コヨリ作るか・・・
アズリエル
アズリエル
やめてッ!?フリじゃなくてッ!!
なんで無から生産しようとするの!?
あなた
ナチュラル・ボーン・コメディアンの血が・・・あッちょ、ガチで引かないで・・・
やりませんよ、_ _ _じゃないんだから
アズリエル
アズリエル
さすがにこの歳になってからは、付けてはこないよ・・・
_ _ _が聞いていたら、怒るよ?
あなた
「昔は」付けてはきたんだ・・・?
そっちの黒歴史バレの方が怒られん?
アズリエル
アズリエル
・・・あ゛ッ
あなた
・・・はは!お互い秘密の内緒だ


バツが悪くなって、背中にさらに体重を掛ける。
だが、別にバランスを崩す程ではないようだ。

── 意外だった。

アズリエル
アズリエル
重くないの?
あなた
平気~。アズリエルくらいの体重ならぜーんぜん。肩車もできちゃうぜ
アズリエル
アズリエル
ふーん?
あなた
あん?ちょっと鼻で笑ったな?
じゃあやってみるか?おん?
アズリエル
アズリエル
あっはっは、ムキになってさぁ
・・・あ!みんな戻ってきたよ!
あなた
おっ、ホントだ。
お~~い、おかえり~!


結局魚は取れなかったし、
なーんにも起きなかった。


今日はこれでおしまい。





─── 今日は、小さな冒険の始まり。
森の奥へときたボクたち。

今度は昨日とは別の子が先導。
またもや大活躍の木の枝が、ワサワサと道をかき分ける。



突然、ボクの後ろの子がころんでしまう。
泣いてしまった。

あちゃあ、という雰囲気。


_ _ _
_ _ _
ちょうどいい。わたしも疲れてきた
_ _ _
_ _ _
休憩だ
アズリエル
アズリエル
・・・・・・そうだね

あなたは、レジャーシートを敷いて、
水筒の水で膝と手のひらを洗った後、絆創膏を貼った。

あなた
上手に力を分散させて転べたね、
えらいね。これなら治りは早そうだ

ころんだ子は他の子よりも小さい。
あなたは、背中にその子を乗せて、歩くことにするようだ。

・・・・・・改めて冒険再開。

_ _ _
_ _ _
コレの目的ってなんだっけ?
毒キノコ調査?それともバードウォッチング?
あなた
そういえば決めてなかったかも?
ねえキミ、何探検したら良いと思う?


先頭の子は「?」と首を傾けてウウムと唸った。
本人も決めていなかったみたい。

_ _ _
_ _ _
あきれた。
これじゃあ、ただの散歩じゃないか
あなた
別に、意味なんて無くても
「冒険」って言葉だけで
ワクワクするもんじゃない?

それに賛同するように、その子は拳を突き上げた。
別にいいけど・・・でもそれは幼い考え方過ぎない?
ボクら、もうそういう年齢は過ぎたんだよね・・・。

_ _ _も、興が削がれたようにため息をついた。
_ _ _
_ _ _
ま、わたしはオトナだからな。
下の子に付き合ってやるかな~。
・・・あなたっていう最も幼稚なヤツに
あなた
はは、そーだな!
わたしもそう思うよ

そのまま真っすぐ進むと、大きな滝が木々の隙間から見えた。
びっくりして、感嘆の声を上げた──すごい!
・・・・・・こんな場所があったんだ。


先頭の子が走り、次々とついていく。
ボクもと駆けようとしたら、木の根に足を引っ掛けて身体が傾いた。

あっ、まずいと思ったが、
─── もはや不可避。石のある場所に膝を打ち付けた。


・・・・・・いたい。
子どもたちはさっさと滝の方に一目散に走っていったので、ボクの醜態を目撃したのはあなたと、背中に居る小さい子だけだった。

アズリエル
アズリエル
───ッ、
あなた
・・・

さっきの子よりも大きいケガをしていそう。
歩けないかも・・・くそ、油断した。

だが、既にあなたは、背中に小さい子を背負っている。
ボクを背負うのはもう難しい・・・と思う。

背中に居る小さい子は、ボクを見て「大丈夫?」と首を傾けた。
─── あなたは、黙っていた。





ボクは、あなたの顔を見ることはできなかった。
・・・・・・もし、失望とか、だったら?

他の子に「アズリエルも怪我しちゃったから、みんな戻って」と叫んだら?
「油断してたからそうなったんだ」「バカやったね」と、笑われたら?

どうしよう。
それってすっごく、恥ずかしいじゃないか!!



アズリエル
アズリエル
・・・・・・、っぐぅ


ダメだ、ボクは男だ。
そんな子どもみたいな、とにかくいやだ。


手を付いて、膝に付いたものをなすって、
いたいけど、すっごく痛くて・・・いたいけど。

耐えて、なんとか・・・立つ。

・・・いたくない、大丈夫。
ボクは平気だ。

これくらい対したものじゃない。
だから全然、へっちゃら。

あなた
さっ、行こうか?
あなた
一人で、立てたね
アズリエル
アズリエル
・・・・・・ん?何が!?
何もないけど!!
あなた
・・・そーだねぇ



よく、わかんないけど・・・。
不思議な気持ちだ。

あなたは何も言わないし、手当しようかとも聞かない。
背中の子と違って、ボクへの扱いが全然優しくないなとは思った。



だけど、顔を見ると、ちょっと・・・嬉しそうで、
ボクを、認めてくれたみたいで。

・・・・・・。




滝では、_ _ _が、でっかいカエルを捕まえていた。
みんな大笑いしていた。




今日は、また別の子が先頭となって、今度は映画館。
子どもたちはみんな横並びで座る。




ここでは静かに、とのこと。

だが隣のノンデリがポップコーンをずっと齧っていて咀嚼音がうるさい。
牽制で肩をつつくと、はあ?という顔をしてポップコーンを渡してきた。

キミのが食べたくてやったわけじゃないのに。
卑しいヤツ扱いしてきて正直腹は立ったが、ポップコーンに罪はないのでもらうことにした。
・・・・・・おいしい。


アズリエル
アズリエル
・・・・・・


誰がコレを見ようと言ったのか覚えてないけど。
奇妙な話だ。

ちょっと、小さなウソをついてしまったオジサンが、
どんどん引っ込みがつかなくなって、次々にウソにウソが重ねていく。

どうしようどうしようと家でバタバタしながらも、ソレをウソでしたとはみんなに言えなくなって、仕方なく辻褄合わせで頑張る。可愛い彼女がいるんだと自慢してしまって、上司からホームパーティーにぜひパートナーといっしょにおいでと招待されてしまって、金を出してバイトを雇おうとしたけど上手く行かなくて、本気の彼女探し。
可愛い子にアプローチする時に、自分は高級住宅地に一軒家で住んでいると言い張って、彼女は笑って信じたせいで、どうにか条件に合う不動産を探し買いに行く、みたいな・・・。

結局、誠実さなんてものはこの作品には要らない子だったみたいで、死ぬ気でやればなんとかなった・・・みたいな話だった。実に時間を無駄にした気持ちになるとんでもない映画だった。



なんと、隣のやつは
ポップコーンを食い終わったらグースカ寝ていた。

なんとはしたない。

あなた
うーん・・・稀に見るクソ映画・・・
_ _ _
_ _ _
いやー面白かった~
あなた
あれ?わたしとおなじ映画見てた?
何が刺さったの?巨大ダコ?
_ _ _
_ _ _
・・・凄く、いい夢が見れたんだ
あなた
ああ・・・・・・そう、よかったね
あなた
気持ちが共有できなくて残念だが
・・・多少ヘンな映画のほうが、
喫茶店で盛り上がるってもんさ。
アズリエル
アズリエル
あはは・・・


喫茶店へと移動する。
コーヒーのいい匂いがする。
でも匂いは良くても、別に美味しくはないんだよねぇ。


みんな仲良くオレンジジュース・・・
のはずが・・・
なぜか_ _ _だけ、
チョコレートたっぷりのデラックスパフェを頼んでいた。

_ _ _
_ _ _
わたしは今日誕生日だから
アズリエル
アズリエル
・・・あ、違う!!
あなた、騙されないで!?
勝手に誕生日をコロコロ変えるんだ!!
あなた
あれぇ?そーなの??
スグバレるウソは辞めな~?
_ _ _
_ _ _
チッ、どれかは本当かもしれないじゃないか?
・・・わかんないんだから。
あなた
ああ?そーなん・・・
あなた
じゃ、「今日」でもいいやー。
今日を誕生日としてフツーに祝って・・・わたしが一年間覚えていれば理屈はつくし
あなた
制定!今日はハッピーバースデー!!
よおっ!!オメデトー!

_ _ _
_ _ _
そうだ、祝えアズリエル!
アズリエル
アズリエル
ええ?そんなテキトーな・・・
アズリエル
アズリエル
ボク以外みんな・・・受け入れちゃうんだ・・・?


拍手されて、調子に乗った_ _ _が手を広げた。
すると店の照明が暗くなる。

追加で店側が気を使ったのか、新たにミニケーキがやってきた。花火付き。
おい、辻褄を合わせるなよ。
なんだか面白くなくて、無くなりかけのオレンジジュースを大きな音を立てて吸った。






会計前にボソっとあなたが呟いた。
あなた
あ、ミニケーキ別料金だ・・・やられた・・・
あなた
あんなっ・・・サービス感をッ、出しておきながら・・・!
これがッ大人のやり方かよッ・・・!!
アズリエル
アズリエル
・・・っふはッ、あはは



世界とはどうやら映画の通り、
辻褄合わせと騙し合いで回っているらしい。

ボクはまたひとつかしこくなった。

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