カッと視界が明るくなる。
誰かがカーテンを開けたみたいだ。
目を開ける。
上から何かが落ちてきた。
顔にかかるムカデのオモチャ。
これはアイツの仕業だ。
大罪人は、ははっと笑ってベッドから飛び降りた。
虫のオモチャこんなに散らかして・・・!しかも片付けもしてくれないし。
一個一個拾い集めてハコに入れる。
─── あしたは、やり返す。
絶対に。
「ばーか」
「そっちのほうがばーか」
二人で言い合って、
そのうち下らなすぎてどちらともなく笑う。
お着替えをして、顔を洗って・・・。
玄関を出る。
あなたがヒョコと顔を出す。
───そして、みんなも後ろに集まっていた。
ボクたち待ちだったみたい。
あなたはちょっとしゃがみ込んで、ボクの前髪をつまんだ。
ゴミでも付いてた?と聞くと「ううん」と否定が返ってきた。
みんなが、拳を上げたり手を振ったりした。
・・・さて、今日は何処に行くんだろう?
─── 歩く、歩く。
先頭に立った子が、前へ前とボクたちを連れて行く。
横にいる子がつついてきた。
わあとびっくりした声を挙げると楽しそうにした。
お返しにつつき返すと身をよじる。
どちらともなく飽きたタイミングで、
木の枝を拾って床を叩く。
ボクが拾うと、他の子もマネして拾う。
棒を滑らすとザリザリと音が鳴る。
皆で木の枝の大合唱。
先頭を歩いている子が、ついに脚を止めた。
先頭の子が頷いた。
なるほど。ココが今日の目的地ってことね。
みながいつの間にか持ってた棒が役に立った。
先頭の子がカバンに入れていた細い糸を取り出し、
棒に結びつけて、針を取り付ける。
もやい結び?とかいう結び方で固定すると取れにくいらしい。
へぇえー。
その子は「うん」と頷いた。
シュルリ、と手慣れた手つきで水面に向かって竿を投げ入れる。
それを見様見真似で、皆が次々と竿を振った。
・・・。
10分と経たず飽き始めた_ _ _が、
川に飛び込んだ。
すると他の子たちも次々と飛び込んでしまう。
水しぶきが顔に掛かった。
釣りを提案した子も、水へ飛び込んだ。
そうなると、ボクはあなたと二人だけ岸に残った。
・・・濡れるのスキじゃないし、
ツルツルのニンゲンと違って、乾かすのが時間が掛かるし・・・。
あなたがくしゃみの後に寒ッと呟き、ぷるりと震える。
─── なんだか、ボクらより大きいのに、身体が弱そう。
すると、あなたはボクの真後ろに座る。
笑って背中に軽く体重を掛けた。
バツが悪くなって、背中にさらに体重を掛ける。
だが、別にバランスを崩す程ではないようだ。
── 意外だった。
結局魚は取れなかったし、
なーんにも起きなかった。
今日はこれでおしまい。
─── 今日は、小さな冒険の始まり。
森の奥へときたボクたち。
今度は昨日とは別の子が先導。
またもや大活躍の木の枝が、ワサワサと道をかき分ける。
突然、ボクの後ろの子がころんでしまう。
泣いてしまった。
あちゃあ、という雰囲気。
あなたは、レジャーシートを敷いて、
水筒の水で膝と手のひらを洗った後、絆創膏を貼った。
ころんだ子は他の子よりも小さい。
あなたは、背中にその子を乗せて、歩くことにするようだ。
・・・・・・改めて冒険再開。
先頭の子は「?」と首を傾けてウウムと唸った。
本人も決めていなかったみたい。
それに賛同するように、その子は拳を突き上げた。
別にいいけど・・・でもそれは幼い考え方過ぎない?
ボクら、もうそういう年齢は過ぎたんだよね・・・。
_ _ _も、興が削がれたようにため息をついた。
そのまま真っすぐ進むと、大きな滝が木々の隙間から見えた。
びっくりして、感嘆の声を上げた──すごい!
・・・・・・こんな場所があったんだ。
先頭の子が走り、次々とついていく。
ボクもと駆けようとしたら、木の根に足を引っ掛けて身体が傾いた。
あっ、まずいと思ったが、
─── もはや不可避。石のある場所に膝を打ち付けた。
・・・・・・いたい。
子どもたちはさっさと滝の方に一目散に走っていったので、ボクの醜態を目撃したのはあなたと、背中に居る小さい子だけだった。
さっきの子よりも大きいケガをしていそう。
歩けないかも・・・くそ、油断した。
だが、既にあなたは、背中に小さい子を背負っている。
ボクを背負うのはもう難しい・・・と思う。
背中に居る小さい子は、ボクを見て「大丈夫?」と首を傾けた。
─── あなたは、黙っていた。
ボクは、あなたの顔を見ることはできなかった。
・・・・・・もし、失望とか、だったら?
他の子に「アズリエルも怪我しちゃったから、みんな戻って」と叫んだら?
「油断してたからそうなったんだ」「バカやったね」と、笑われたら?
どうしよう。
それってすっごく、恥ずかしいじゃないか!!
ダメだ、ボクは男だ。
そんな子どもみたいな、とにかくいやだ。
手を付いて、膝に付いたものをなすって、
いたいけど、すっごく痛くて・・・いたいけど。
耐えて、なんとか・・・立つ。
・・・いたくない、大丈夫。
ボクは平気だ。
これくらい対したものじゃない。
だから全然、へっちゃら。
よく、わかんないけど・・・。
不思議な気持ちだ。
あなたは何も言わないし、手当しようかとも聞かない。
背中の子と違って、ボクへの扱いが全然優しくないなとは思った。
だけど、顔を見ると、ちょっと・・・嬉しそうで、
ボクを、認めてくれたみたいで。
・・・・・・。
滝では、_ _ _が、でっかいカエルを捕まえていた。
みんな大笑いしていた。
今日は、また別の子が先頭となって、今度は映画館。
子どもたちはみんな横並びで座る。
ここでは静かに、とのこと。
だが隣のノンデリがポップコーンをずっと齧っていて咀嚼音がうるさい。
牽制で肩をつつくと、はあ?という顔をしてポップコーンを渡してきた。
キミのが食べたくてやったわけじゃないのに。
卑しいヤツ扱いしてきて正直腹は立ったが、ポップコーンに罪はないのでもらうことにした。
・・・・・・おいしい。
誰がコレを見ようと言ったのか覚えてないけど。
奇妙な話だ。
ちょっと、小さなウソをついてしまったオジサンが、
どんどん引っ込みがつかなくなって、次々にウソにウソが重ねていく。
どうしようどうしようと家でバタバタしながらも、ソレをウソでしたとはみんなに言えなくなって、仕方なく辻褄合わせで頑張る。可愛い彼女がいるんだと自慢してしまって、上司からホームパーティーにぜひパートナーといっしょにおいでと招待されてしまって、金を出してバイトを雇おうとしたけど上手く行かなくて、本気の彼女探し。
可愛い子にアプローチする時に、自分は高級住宅地に一軒家で住んでいると言い張って、彼女は笑って信じたせいで、どうにか条件に合う不動産を探し買いに行く、みたいな・・・。
結局、誠実さなんてものはこの作品には要らない子だったみたいで、死ぬ気でやればなんとかなった・・・みたいな話だった。実に時間を無駄にした気持ちになるとんでもない映画だった。
なんと、隣のやつは
ポップコーンを食い終わったらグースカ寝ていた。
なんとはしたない。
喫茶店へと移動する。
コーヒーのいい匂いがする。
でも匂いは良くても、別に美味しくはないんだよねぇ。
みんな仲良くオレンジジュース・・・
のはずが・・・
なぜか_ _ _だけ、
チョコレートたっぷりのデラックスパフェを頼んでいた。
拍手されて、調子に乗った_ _ _が手を広げた。
すると店の照明が暗くなる。
追加で店側が気を使ったのか、新たにミニケーキがやってきた。花火付き。
おい、辻褄を合わせるなよ。
なんだか面白くなくて、無くなりかけのオレンジジュースを大きな音を立てて吸った。
会計前にボソっとあなたが呟いた。
世界とはどうやら映画の通り、
辻褄合わせと騙し合いで回っているらしい。
ボクはまたひとつかしこくなった。





























編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。