第82話

63.Continue
57
2026/02/03 20:45 更新
一度は布団でしばらく待っていたが・・・ボクは、再び目を開ける。

はっきり言うと・・・・・・寝かけていた、だが。
そう ─── 決戦の時が、今だ。






ボクは、音を立てずに起き上がり・・・ 。
足の裏の肉球の角度に気をつけながら、隣の方へ忍び足。
掛け布団が上下している_ _ _のベッドに手を付いて、時計を取り・・・、

時計の針をきっかり30分・・・遅らせる。







いつも、
アイツは決まった時間に起きる。

明日、集合時間丁度を示す時計を見て時間に焦り、
また隣に寝ていないボクをみて、
あぁやってしまった置いていかれたんだと焦り、
慌てて下に降りるはずだ。



─── そしてボクは
リビングで、スープを飲みながら、
かっこよく新聞でも広げてこういうわけ。


「おやおや、お寝坊かい?」・・・・・・ってねッ!!!

これは、完璧な、計画だ。




アズリエル
アズリエル
ふふッ、ふふふふ・・・
_ _ _
_ _ _
Zzz・・・
















次の日。
ボクは確信する。

自分のほうがお隣のヤツより早く起きているぞ、と。

部屋は静寂といっていい。
隣のベッドは膨らんでいる。

カーテンをこっそり動かして開けるとまだ暗い。

・・・・・・よし!よし!!よっし!!







い。いや、油断するなボク。

こういうときに床に落ちてるものを踏んで足を滑らせ、
大きな音を立てるなど・・・あってはならない事態だ。
シュッタと、床に伏せて四つ足で移動する。


薄く扉を開けて・・・、どき、どき、どき・・・。
右よーし、左よぉーし。

そして、リビングへと・・・・・・。





アズリエル
アズリエル

腕に何か突っ張るような感触がした。
えっ ── 釣り糸??
しゅるり、と張力を失って、釣り糸が


視線を辿ると、紐は天井へとつながっており、
さらに突き当りの鉄製の掃除用バケツに。



アズリエル
アズリエル
── ッ!!!


それはふらりと傾いた、
あッ、やばい。


大きな音を立てて、それは落下した。

─── ボクの、頭に。



アズリエル
アズリエル
い、・・・・・・っったあああ~~~あッ!!!
アズリエル
アズリエル
~~ッ!!!
ひっ、ひどいッッ なんて容赦がないんだッ
_ _ _
_ _ _
アズリエルは、
本当に・・・ ・・・
_ _ _
_ _ _
時計ズラしなんて・・・生ぬるいね
やるなら、これくらいはしないと
アズリエル
アズリエル
うあーッ!!!ぃいぃ!
日を空けて、わ・・・忘れたと思ってたのにッ!!
アズリエル
アズリエル
・・・ ・・・次ッ!! 次はぜったい仕留めるッ!!
_ _ _
_ _ _
…さてさて、
今後の成長に期待、だな



うーん。コレが才能ってやつ、かなあ。
上手く行かないなあ。




今日は、また別の子が木の枝を持って先導する。
くるりくるりと振り回して、向かった先は ─── 巨大水上アスレチックだった。

わあと驚く。

遊具の至る所にはそれぞれ違うアスレチックが盛り込まれており・・・
隙間の空いたトランポリンわたり、ジグザグの平均台に、スラックライン。

すごい、すごい!!
森のアスレチックと違って、下が水で満たされているから、
小さな子がうっかり落ちても怪我する心配はなさそうだった。

あなた
お~!これはまた、キツそ~
_ _ _
_ _ _
年上なんだから、
あまり醜態を晒してくれるなよ?
あなた
・・・できる限り!

── 気温も水温も温かい。
チャプ、と付けていた手を引っ込めた。

それぞれスイムウェアに着替えて、挑戦。
・・・ ・・・さっそくぷにぷにの橋で、
一人目の子が足を滑らせて水に落ちてしまった。


アズリエル
アズリエル
わ、・・・行けた!
_ _ _
_ _ _
ふむ
あなた
すごーい!!

みんなは、無理せずゆっくりおいき~
・・・おお、ポンポンと・・・
あなた
やや、・・・すごー!!意外とみんな行ける!?
運動神経いいねー
あなたは勝負はせず、
ボクたちより小さい子たちの面倒をみることにしたようだ。

・・・ちょっとつまんないけど、
こっちが見てなくてもいいなら、
それはそれでラクかな、と思い直した。

_ _ _も同じ考えなのか、ニヤリとこちらに笑いかけた。
_ _ _
_ _ _
先に行こ!アズリエル。
アズリエル
アズリエル
おッ!負けないよー!
アズリエル
アズリエル
さっそくお先!
_ _ _
_ _ _
!!


朝の恨みもこめて、
合図すら待たずスタートダッシュを決める。
ぷにぷにの床は水に濡れて滑りやすい、
着地の位置に気をつける。
あなた
わー。二人とも速ー・・・
・・・ほいほい、
キミは飛び石は抱っこ~?
あなた
キミは?大丈夫?
そーかい、おっけー


最終的には
ボクのほうが先に
第1ゾーンゴールに到達した。

ぃよっし!!

_ _ _
_ _ _
・・・ふう、負けた負けた
_ _ _
_ _ _
アズリエルにこんな特技があったとは
アズリエル
アズリエル
ふふー。でも_ _ _がスグ後ろに
ずーっとくっついていて、
正直、焦ったよ・・・
アズリエル
アズリエル
少し、待とっか
_ _ _
_ _ _
・・・ん

最初に水に落ちた・・・この場所を「選んだ」子が、
ボチャンと水の中に落ちて、水柱が立った。


なんか、意外だ。
別にアスレチックは得意とかじゃないのに
ここ選んだんだなんて、変わってるよね。


その子が別の子に手を貸されて、滑り台へと復帰。
なんとも覚束ない足取りだが、確実に前へ前へと進んでいった。

アズリエル
アズリエル
── あ!!
_ _ _
_ _ _
またアイツ落ちたな・・・
_ _ _
_ _ _
ここまで来るのは・・・時間が掛かりそうだ
アズリエル
アズリエル
ふふ、確かに・・・
でも諦めないで何度も挑戦するの、すごいね
_ _ _
_ _ _
まさしく
やり遂げたいという「強いケツイ」だな
アズリエル
アズリエル
・・・ ・・・
アズリエル
アズリエル
・・・そうだね
あなた
いよっ!お暇?
_ _ _
_ _ _
あなた。
_ _ _
_ _ _
先に来てしまって良かったのか?
あなた
ん・・・まあ、大丈夫かなって。
大きいヤツが不必要な手助けしてくんのも鬱陶しいだろー?
アズリエル
アズリエル
・・・あ、また落ちた・・・ケド・・・?
あなた
だ・・・大丈夫!多分ッ!
子どもたちだけでもなんとかやれる・・・はず!
あなた
一応カナヅチは居ないぽいし
_ _ _
_ _ _
ふーん
あなたのなんというか・・・適当さ?
オトナのくせにあんまりオトナっぽくない気がする。
ヘンな波風立たせたくないから、黙っておくけど。

まあいいや。
じゃあ、今度こそ3人でだね!

みんなより大きいあなたは、
リーチの差を活かして難しい場所も難なく飛べそうな気がする。

これは、手強い相手だ。
あなた
分かれ道が二つあるねぇ
どっちもゴールにはいけるみたいだよ
アズリエル
アズリエル
わぁ、ホントだ!
_ _ _
_ _ _
なになに・・・?
片方は近道高難易度コース、もう片方は確実遠回りコース・・・か。
あなた
選択肢はよくあるヤツだとしても、おいおい
あなた
近道コース、なんかヤバくね・・・?
伝説のローリング丸太・・・?
アズリエル
アズリエル
その先のステージも・・・う、動いてる!?
アスレ2個だけとはいえ、すごっ!
あなた
あれはフィッシュボーンか、おいおい…
わたしはHIKA⚪︎INじゃねーが?
_ _ _
_ _ _
少なくともお子さまむけ水上アスレチックでやっていいノリじゃあないな。
それだけは確実に言える・・・
アズリエル
アズリエル
こんなの一択でしょ!
・・・ボク先に行くね!
あなた
おあっ!アズリエル判断が早い!

確実コースだ!

ていうか、近道コースは1個目から「挑戦者を絶対に落としてやる!」っていう装置としか思えない。
2本のレールの上に対して太い丸太が一本だけ橋みたいにに架けられており、その丸太に抱きついたまま回転しながら対岸へ渡るみたい。いやいやあんなの、怖すぎ。

その先のアスレは、自動回転する無数のやわらかそうなポールを避けつつ、高さの違う4つの足場を渡ってゆくという鬼畜コース。あなたはそれを“フィッシュボーン”と名称を言ってたけど、どの辺がフィッシュでどの辺がボーンなのかもボクにはよく分からなかった。


───あっちの近道もとい、ネタコースはさておき、こちらの「確実コース」も難易度は上がっている。
気をつけないと落ちてしまいそうだ。

アズリエル
アズリエル
わぁッ、
アズリエル
アズリエル
・・・よしっ、なんとかいけたっ!


高いところに到達して、
他の子たちの様子が良く見える。
名実ともに・・・ボクが、一番だ。

気分がいい。さいこー。
朝の一件には心底腹が立ったけど、
もうそれすら忘れた。

この先は、高い場所からのターザンロープで滑ったあと、いくつかのバランスストーンの上を歩き、最後に大きなザイルクライミングのところを進んだらクリアのようだ。





さてさて、あなたたちは・・・どの辺かな?
振り返ったら二人は、

アズリエル
アズリエル
え!?まさかッ
・・・うわあッ!ホントにあっち近道コース行ってる!?

先に行ったボクに追いつくには、
後から確実コースを進むだけでは
勝てないとみたのか、
危険な近道コースを選択していた。

ていうか_ _ _は丸太の存在を完全無視し、
レールの上から移動し(そんなのアリ??)ており、
先に到達したあなたは_ _ _に、腕を広げていた。

え・・・ちょっと、それは卑怯じゃない?

ボクは慌てて、ターザンロープを掴んで下へと降りる。
もう、変わる景色を楽しむ余裕はない。
あなた
われわれ・・・ニンゲンはッ!!
_ _ _
_ _ _
困難にこそ挑戦し、目的を達成せし、
…ものッ!!
アズリエル
アズリエル
・・・・・・!?
ちょうどボクがターザンロープ着地地点についた頃には、
とうっ!とジャンプして、_ _ _はあなたにキャッチされていた。


更に、二人は目を見合わせて頷きあう。
・・・ええ、うそッ!!
まさか、ホントに!?!?


更に、
あなたはゆらゆらと抱えたソイツを揺らして・・・
_ _ _を、向こう岸へ放り投げた。


アズリエル
アズリエル
ぅええええ───、ッ!?



ぽにょんと、向こう岸の上で跳ねて・・・。
やがて、止まって・・・立ち上がった。




つまり、

超高難易度アスレの後半をスキップして、
_ _ _が先にゴールに到達した、ということ。


ボクは、あまりにもカオスの連続に、
受け入れられることができずついに膝をついた。

なんだそれ、なんだそれ・・・。


アズリエル
アズリエル
い、いやッ、
まだあなたが残ってる!!

ボクの目線の先には
ゴール到達済みの_ _ _が笑ってる。

た、確かにアイツには負けたけど・・・、
あなたに負けるのだけは、
絶対にッ!!イヤだッ!!


大丈夫だアズリエル。あなたには勝てる。
さっきのようなショートカットはもう使えない。
ここにあなたを投げられるヤツは居ないから。
つまり、あの謎回転する超高難易度アスレを一人で地道にクリアするしかない。


一方のこっちには何もリスクもない。
落ち着け、落ち着け・・・。

ボクはぴょんとバランスストーンを
5つ連続で飛び越える。


おちついて、おちついて・・・。


アズリエル
アズリエル
うッ!!!


一気に詰められたことで、
ボクの精神的余裕が一気に削られたからだろう。

さっきまでだったら
なんてことのないロープですら、
足をかける仕草を誤った。

つるり、と手が空を切った。







背中に冷たい水が当たった。





アズリエル
アズリエル
・・・ ・・・





深く、深く・・・
それに逆らわず、潜っていく。

水の中は思ったよりも静かだった。
そこそこ大きな音を立てて
どぷんと落ちたはずなのに、
音はすぐに遠ざかって、
耳の奥で低く響く水温だけが残る。

泡が、上へ上へと逃げていく。
視界が歪んで、輪郭が曖昧になる。




───別に、競争じゃないし。


水だから危なくないし。


そもそもボクはモンスターだから、
魔法を使えばこんなもの、即座にクリアできてた。


ニンゲンたちの・・・レベルに合わせて、
力を抑えていただけだし。


・・・だから、ボクは負けてない。



身体が沈むのをやめて、わずかにふわりと浮く。
重さも、悔しさも、水に溶けてしまえばいいのに。






でも、実際はそんなことなくて・・・。

浮き上がる身体に抵抗するように、
ボクは手を掻いて水中に留まる。





悔しくて、なさけなくて、
──ボクは水上に顔を出すことはできなかった。

ぽこり、と口から泡がこぼれる。
・・・ぽこり、ぽこり。
もうあなたはゴールしちゃったかな?



・・・そりゃ、するか。
ボクなら、先に行く。







アズリエル
アズリエル
!?


突然、
2本の泡柱が目の前に現れた。

やがて泡柱は崩れ…、
その影は再構成した。

輪郭は水のゆらめきでボヤけているのに、
なぜかその正体はすぐにわかった。

_ _ _とあなただ。


遅れて、胸がどくんとなる。
勝っていたはずの二人。
上にいたはずの二人。

なのに、
影が近づく。

伸びてくる手。



───どうして。
どうして、落ちてきたんだ。


せっかく勝ってたのに。
ボクは一人でに自滅して、チャンスなのに。


問いかける暇もなく、
それぞれから差し出される両手が、ボクの指先に触れた。

_ _ _
_ _ _
・・・、
あなた
・・・?

一瞬。
ほんの一瞬だけ。

水ごしでもわかる温度、
指が絡む前の、ためらいのない接触。

・・・それだけで、胸の奥が、ぎゅっと縮んだ。



手がしっかりと掴まれる。
逃げない力、引き上げる力。

あぁ、

アズリエル
アズリエル
(ボクを迎えに、来てくれたんだ・・・)


上から下へ、
天上の世界から、下界の方へ。


天使みたいだ、なんて
二人には全く相応しくない言葉が浮かんで、
ボクは、自分で自分に呆れそうになった。


でも、光の中で笑っている二人は、
どうしようもなく綺麗だった。


水の中なのに、
息が苦しいはずなのに、
なぜか、それを忘れてしまったみたい。


アズリエル
アズリエル
・・・ ・・・


水面が近づいて、
光はもっと眩しくなって、


この手を、離すのが勿体無い。
ただそれだけが、はっきりと残った。



──正直、帰り道に何を話したのか、
水に落ち続けてた子が本当にゴールできたのかも、あんまり覚えてない。



ボクは、家に帰ってからも
・・・その日はずっと、ぼうっとしていたからだ。






・・・あいつが風邪をひいた。

そんなに身体が頑強なわけでもないのに、
昨日張り切りすぎたからだと思う。

とはいえ、心配は心配なので、
今日はみーんなお出かけはナシ。

ボクは_ _ _の看病に専念することにした。
部屋の窓を開けて、カンキをする。

ニンゲンはこうやって
ときどき新しい風に入れ替えをしないと、
調子を崩すんでしょ?
_ _ _
_ _ _
げほッ、ごほ!

アズリエル
アズリエル
・・・熱が、高いね
おとなしく寝ておかないとダメだよ
_ _ _
_ _ _
別に、たいしたことじゃない
疲れてもないのに寝れない
あなた
・・・ふあぁ〜・・・
アズリエル
アズリエル
あなたが、寝るの?
キミ全然働かないよね・・・?
あなた
人手が欲しい時は動くつもりはあるけど、わたしお医者さんしてるワケじゃないし〜
アズリエル
アズリエル
そうは言っても、
病人の看病らしい「こうどう」があるんじゃないの?
居るだけっていうか、本を読んでぐうたらしているだけじゃないか
あなた
あー・・・、体の汗を拭くとか?
_ _ _
_ _ _
ヤだ
あなた
・・・でしょー?
兄弟のがマシよね?
_ _ _
_ _ _
ごほ・・・ッ、当然だ
アズリエルならいくら迷惑かけても胸が痛まない
アズリエル
アズリエル
・・・それはそれでどうなの?
もちろん、やるけどさぁ?


あなたが、手助けとして居ることにはいるが、
正直に言うと全く戦力にならない。

仕方なくボクがアイツ用の飲み水、冷やしたタオル、甘くて食べやすそうな食べ物を用意したりと奮闘した。あなたは甲斐甲斐しく動くボクをみて「ほーう」と感心したような声を上げた。

あなた
お兄さんみたいだ
_ _ _
_ _ _
・・・聞き捨てならないな、
アズリエルは、弟だ
アズリエル
アズリエル
は?純然たる兄だけど??
ムチャやる下の子を見守る側だけど?
_ _ _
_ _ _
背の高さは、わたしのほうが高い
なんと・・・勉強もわたしのほうができる
アズリエル
アズリエル
ふ、服装に悩んで「これって大丈夫?」って毎回ボクに聞いてくるでしょう?
あと、キミって人見知りで、いっつもボクが仲介役をしているじゃないか!!
あなた
おっとー・・・地雷話題だったか・・・

いい機会だ、上がどっちか、わからせてやらなきゃ。
そもそも今の状況、ボクが兄説以外あり得なくない?

お互いに自分が上だという証拠を提示し、同じだけの反証が返ってくる。

あなたは、しばらくは眺めていたが、
_ _ _がヒートアップの末に、咳の発作が出て強制終了を言い渡した。

あなた
互いにムキになるあたり、
あんまりどっちが上とかはないよね・・・良くて双子じゃない??
アズリエル
アズリエル
”双子で良いじゃん“結論は、
前にもやったから今回こそ白黒つけるべき
_ _ _
_ _ _
やれやれ、強情だな。
わたしの方が上、それ以外ないというに
あなた
はは、そっかそっか
もうこれは飽きたか。
あなた
・・・はやくオトナになったほうが、上なんじゃない?
_ _ _
_ _ _
ならば、基準はなんとする?
あなた
わからん!
_ _ _
_ _ _
・・・あきれた、
基準にすらならない発言どうも。
あなた
・・・だよね

でもなんかその「言い方」に、
言いようのない“オトナ”、
そして勝手な敗北感を覚え、
ボクも_ _ _も同時に閉口した。



───空間を、自然と静寂が支配した。
ボクが次の話題に逡巡していたら、
いつのまにか_ _ _が寝息を立てていた。


熱で赤くなった頬、少し乱れた呼吸。
さっきまでうるさくて強情だったのに、変な感じだ。
あなた
お仕事おつかれ。
アズリエルは出かけてきたら、わたしとくから
アズリエル
アズリエル
ううん、心配だからここに居ておく
あなた
そう?
なら、お好きに

再び静かになり、
あなたが本をめくる音だけが
この場における唯一の音源となった。

開いた窓から、冷たい風が差した。
腕をさする。

あなた
さむい?この膝掛けかそうか?
・・・く、しゅっ!
アズリエル
アズリエル
あ、いや・・・、ああもう。
そうするとあなたが寒くなるでしょう・・・?
あなた
確かに・・・!
なら、こうしようか?
アズリエル
アズリエル


あなたに背中から膝掛けごと抱きしめられた。
なんか、前にもあっけど、今回は「違う」ような気がした。

密着するボクたち。
咄嗟に出そうだった言葉を、どうにか飲み込んだ。


「(ねえ、なんか── へん、じゃないかな??)」

拒みたい衝動が、ある。
やわく生ぬるい接触が、ボクの平穏を乱す。

何かそぐわない行動をしたら「どうかしたの?」って言われてしまう。
不審に思われて、「これ」が壊れてしまう。





だからボクは───変わるわけには、いかない。
それなのに、鼓動だけが、うるさい。



アズリエル
アズリエル
・・・ ・・・


優しい、空間。
ボクは、まだ・・・この場所を。


アズリエル
アズリエル
・・・まったく、あなたは!
何かと引っ付きたがるんだから!
アズリエル
アズリエル
モンスターのフワフワの毛は、暖を取るのに最適かい?
あなた
・・・そうそう!
子供体温に加えて、フワッフワの毛!!
まさに高級防寒具に匹敵するね!
あなた
あ、・・・イヤだったかな?
アズリエル
アズリエル
・・・ ・・・
アズリエル
アズリエル
別に



_ _ _
_ _ _
わたし!!ふっか───つッ!!!
あなた
おー!!
心なしか後光が差してるぞ!!
アズリエル
アズリエル
ちょ、
病み上がりなんだから無理しないで・・・?
_ _ _
_ _ _
・・・大丈夫、しっかり寝たからなッ
普段以上に明朗快活ッ、わたし様の降臨だ!
アズリエル
アズリエル
あーもー・・・
みんなごめんね、巻き込んでしまって・・・

ありがたいことに、_ _ _のテンションがハイになりすぎている様子も、その子たちは受け入れてくれた。
・・・・・・今日は、公園で「ヒーローごっこ」の日。

滑り台の上で一人の子が、
おもちゃのゴムでっぽうをくるりと回して、ポーズを決めた。
しかもそれだけにとどまらず、結構遠くにある空き缶を見事ゴム弾で撃ち抜いた。

カラーンと空き缶が転がった。
すごい!!

最初は正直子供っぽいからイヤだなと思ったけど、
いざやってみると各々が思う「かっこいいヒーロー像」が違って見えて、非常に興味深い。


あなた
きさまら覚悟しろー!!
アズリエル
アズリエル
・・・
あなた
このあなたサマのヤリの餌食となるのだぁーッ!!
ぬああああッ!!
_ _ _
_ _ _
わー!ヤバい輩が襲い掛かってくる〜!
みなのもの、斃せ〜!

あなたは・・・。
明らかに特定の誰かのモノマネしていた。

そいつが「推し」なんだね・・・?


_ _ _
_ _ _
アズリエルは混ざらないのか?
アイツ、強いよ? 何回も復活するんだ。
アズリエル
アズリエル
今日は、いいかな・・・

楽しそうでなによりだけど、自分が混ざるのはいいかなあ。
・・・ていうか、やっぱりボクの方が兄なんじゃない??
別に喧嘩したいわけじゃないから言わないけどさ。

ふう、とため息をつく。
_ _ _
_ _ _
ふーん??あ、そ。
ま、いいけど

また挑みに行く_ _ _を見て、
ほんの少し羨ましいなと思わなくもないけどね。


・・・と思ったら、_ _ _があなたの腕を掴んで戻ってきた。


アズリエル
アズリエル
え?
_ _ _
_ _ _
この、集団行動を乱す──、
オタンコナスに成敗をお頼み申す!!
・・・いけっあなた!!
あなた
クククッ、フゥ──ハハハハ!!
雰囲気ぼっち気取るのは・・・1000年は早いぜアズリエルッ!!!
あなた
お前も氷人形にしてやろうかァ!!
アズリエル
アズリエル
ちょ、脇腹チクチクやめて!!!
あなた
ブゥワ〜ハッハハ!ぬわはははッ!
_ _ _
_ _ _
やれやれ。口ではめんどうがるが、
中身は相当な「かまってちゃん」。
──ホント、アズリエルはシマツに置けないよ
アズリエル
アズリエル
おーまーえーが、いうなぁ〜ッ!!

子供たちがボクらを笑いながら囲む。

色とりどりのヒーロー主人公たちが小さな公園に集った──。
いつの間にかボクもその中の一つとなって、
ボクも「いちばんのヒーロー」に、なった。



夕焼け小焼け。
今日もまた、おしまい。
でも・・・なんとなく「みんな」に言いたくなった。


アズリエル
アズリエル
・・・また、「明日」も遊ぼうね
_ _ _
_ _ _
・・・ああ、
あなた
だね

おもちゃの剣や、おもちゃの鉄砲、
みなそれぞれ「当然」とばかりにボクに返事をしてくれた。



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