俺は、今年も変わらない
空一面を埋め尽くす星空と
この季節ならではの夏草の匂いを感じる
約束の駅のホームへと降り立った。
俺は微かに香る夏草の匂いを
胸いっぱいに吸い込み、
君の元へと小走りで向かう。
改札から少しだけ見える待合室には
君らしき人の姿が見えたような気がした。
その姿を見て俺は、
急いで待合室へと向かった。
待合室の扉の前まで行くとそこには、
俺の姿を見て、
はにかんだ笑顔で涙を零す君の姿があった。
君が俺の名前を呼んでくれた瞬間
今まで胸に秘めていた気持ちが全部全部
溢れ出した。
気づくと俺は、涙を零し微笑む君を
抱きしめていた。
話したい事は山ほどあるはずなのに、
君に触れた瞬間飛んでいったんだ。
言葉は要らない。
高鳴る鼓動が変わらない気持ちを
伝えてくれたから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。