見渡す限り一面の白。
わぁ〜!雪が綺麗!!
では無いんです。
決してすんげえ寒い訳じゃないし、ポカポカ〜な訳でもないんです。
壁も床も天井も一面、いや六面?真っ白な部屋。
しっかりとものの陰影は分かるし、どこからどこまでが歩けるのかだって分かる。
照明もないのに不思議な部屋。
そう、みなさんはもうお分かりだろう。
先程のくだらねぇ掛け合いは「漫才をしろ」というお題
の札を見て始まった。
もちろん素人2人が集まったところで面白味なんかはあるわけがない。
実はこのお題だけれど、もう5つはした。
1つ目は逆立ち、
2つ目は男女逆転姫抱っこ、
3つ目はお互いの嫌いなところを3つずつ言うこと、
4つ目は早口言葉対決で負けた方にしっぺとデコピン、
そして5つ目が今の漫才という訳だ。
ここに来るまでの記憶はふんわりと覚えている。
確か夜に近藤さんと飲みに行って、その先に銀がいた。
そこでなにかお互い会話を交わしながら離れた席で晩酌し、よしいざ帰宅しよう!となった。
うん、覚えてるぞ…?
その後酒に弱い銀がべろべろ状態で私の方へこう言ったのだ。
その瞬間私は何かに触れて意識を手放した。
あれ?沖田くん来たの??
銀はそう言った。
え、沖田くん来たの???????????????
そう、こんな大掛かりなセットを用意することは可能なのだろうか。
照明もないのに明るい部屋。
蹴っても殴っても音がしないほどピクリともしない壁。
ただのセットで、こんなに不思議なものはあるだろうか。
しかも扉も何も、この部屋から出入りできるような穴という穴は見つからない。
紙を覗き込むと私の見やすいように位置を下げてくれた銀が、ふと私を見て口の隙間からすーっと音を出した。
そしてなんだか嬉しそうな、なんとも言えないニヤついた顔をしてふ、と声を漏らす。
小さく縮こまった銀がこちらを見上げて本当に真の読めない目をするものだから、思わず目を逸らして考える。
銀の言うことも一理あるだろう。
もし仮にこれが総悟のイタズラだったとしたら、私達はおそらく関係の悪化か、もしくは良くなること…を願われてるような、気もする。
関係の悪化であれば総悟のただの悪戯であると取れるけど、関係の良好化であれば、私を心配しての善意とも取れる。
たしかに、私たちは最近昼ごはんも共にしていなかった。
周りから見ればあんまり上手くいっていないのだろう。
だけれど実は、そんな心配は無いのだ。
最近電話で会話することを覚えた。
銀はお風呂に浸かりながらかけてくることもあるし、私はことある事に報告はするようにした。
だから前と何ら変わりない、ちょっと会話も多くなったぐらいなのだ。
ちゃんと仲がいいの見せつけてやらなきゃ、もしかしたらこれは終わらないかもしれない。
それは困るんだ。
読者がこの空間に飽きてきたら私たちはどうすればいい?
飽きられ読まれなくなった空間の文章で、ひたすらお題を消化し続けるだけのただのキャラクターじゃないか。
読者がいて成り立つキャラクターとしての尊厳みたいな、そーゆーのってあるからさ。
ふわりと両腕を広げた銀がこちらを向く。
目が合って少し気まづくて、目を逸らした。
そっちから来ないのかよ、
胸にそろりと飛び込むと嫌な匂いがして身を引こうとするも、その頭をがしりと抱え込まれてしまった。
え、ほんとに臭い。
え、やだなにこれ、????
なんかもらいゲロしそうなぐらいキツイ。
うわ、もうヤダ酒臭いしゲロ臭いしなに?なんなの?
耐えられなくなって銀の体を押し、腕から脱出する。
かなり臭かった。
こんなのに夢なんてないんだ、おじさんだもん。
ハグなんだからちょっとくらいドキドキするかもなんて思った自分が馬鹿だった。
臭いものは臭い、おじさんならなお臭い。
ただのそこらにいるカップルならばきっと臭いなんて本音で口にしないだろう。
言ったとすれば、冗談交じりの笑いを込めたもの。
ねぇくーさーいぃっ!みたいな。
私実はデリカシー無いんだよな…
結構はっきりものを言ってしまうタイプだと自分でも自覚している。
それが少し銀との距離が開く原因だとも自負している。
小さい頃から私に女の子の友達ができなかったのも、このデリカシーの無さも関係していたのではないかと今でも思う。
SとMは紙一重とよく言うもので。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。