第8話

ゆとり過去編 「魔女の血と君の夢」
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2024/08/16 12:00 更新















俺の家系は代々有名な魔術師ウィザードで、その血を引く父と魔女の谷出身の母との間に俺が生まれた









長男ということもあって親戚や町の人達は俺の誕生をとても喜ばしく思ったらしい









しかし中には、魔女の母を嫌う者も何人かいて生まれてくる子はきっと恐ろしい力を持っているのではないかと酷く怯えていた









なぜなら、基本魔術師ウィザードと魔女族の結婚は許されていないから









それでも両親が愛の約束を果たせたのは母が父に異常なほど依存していたからだそうで









俺は正直、母の考えが全く理解できなかった









そもそも母が住んでいた魔女の谷と父が住んでいるミューンではあまりにも環境が違いすぎるし









町の人達も正体不明の魔女に嫌悪感を抱いている









最悪の場合、母が殺されてしまっても仕方がない状況だったのだ









そんな身の危険をも感じず、父に全てを捧げた母が俺は大嫌いだった









そこまでして一人の人間を愛したいと思える母が大嫌いだった














でも…今になってようやく、母の気持ちが理解できる









一緒にいたら嫌味を言われてしまうかもしれない









自分の名誉に傷が付いてしまうかもしれない









それでも俺は…ずっと一緒にいたい









そう思える人物に俺は出会ってしまったんだ


























ゆとり(幼少期)
ほんと、俺の母さんはすぐに料理を焦がしちゃうんだ!
ゆとり(幼少期)
魔女なのにフライパンも扱えないなんてどうかしてるよ〜
もるでお(幼少期)
そうなんだwww料理苦手なんだね
ゆとり(幼少期)
いやいや苦手っていうレベルじゃないよ!w
ゆとり(幼少期)
全部黒焦げ!炭づくりの職人になれるくらいww
もるでお(幼少期)
あはははwwwww
ゆとり(幼少期)
……!www
ゆとり(幼少期)
(…もるでお、前よりも笑ってくれるようになったな)



ゆとり(幼少期)
そういえば、もるでおにも家族はいるの?
もるでお(幼少期)
え?…うん、いるよ
ゆとり(幼少期)
へぇ〜!会ってみたい!
もるでお(幼少期)
………
もるでお(幼少期)
……何も酷いこと言わない?
ゆとり(幼少期)
もちろんだよ!もるでおを産んでくれた人だからね!
もるでお(幼少期)
……じゃあいいよ、ついてきて
ゆとり(幼少期)
うん!



タッタッタッタッタッタッ…




















ガチャッ




もるでお(幼少期)
お母さん、ただいま
ゆとり(幼少期)
お邪魔しま〜す!





もるでおの家は町のはずれにある小さくて古い家だった




中は狭く、至る所に壊されたような跡やラクガキが書かれている




その部屋の奥に、女性が一人布団に包まっていた




もるでお母
あら…おかえりなさい…ゴホッゴホゴホ…
もるでお(幼少期)
…お母さんッッ
もるでお(幼少期)
ごめん、今お水変えるね
もるでお母
悪いわねぇ…ケホッケホッ
ゆとり(幼少期)
………



その女性は酷く痩せ細っていて顔色もあまり良くない…




何度も咳き込んでは、小さなその手で口元を抑えた


ゆとり(幼少期)
…お母さん、病気なの?
もるでお(幼少期)
…うん、もう何年も前から
もるでお(幼少期)
今までずっと俺が看病してきたんだけど…多分もう永くない
ゆとり(幼少期)
……そっか
もるでお(幼少期)
家もこんなんだからさ、薬すらまともに買えなくて
もるでお(幼少期)
…お母さんには申し訳ないと思ってる
ゆとり(幼少期)
………
ゆとり(幼少期)
…お父さんは?
もるでお(幼少期)
俺が生まれる前に死んじゃった
もるでお(幼少期)
…お父さんの血筋が裏切り者トレイターだったから、嫌がらせかなんかで自殺しちゃったんだと思う
ゆとり(幼少期)
………
ゆとり(幼少期)
…もるでおはお父さんに会いたい?
もるでお(幼少期)
うーんどうだろ…顔も見たことないからわからない
もるでお(幼少期)
でもお母さんが言うには、すごく勇敢で親切で英雄みたいな人だったんだって
ゆとり(幼少期)
へぇ〜そうなんだ!
ゆとり(幼少期)
じゃあもるでおはお父さん似なのかもね!
もるでお(幼少期)
……そうかな//
ゆとり(幼少期)
うん!絶対そうだよ!
もるでお(幼少期)
…ありがとう//



もるでお(幼少期)
俺…ゆとりに出会えて本当によかったよ
ゆとり(幼少期)
……え?
もるでお(幼少期)
お母さんがいなくなっちゃったら…俺、ひとりぼっちになるから
ゆとり(幼少期)
……もるでお
もるでお(幼少期)
俺の友達になってくれてありがとう…!
ゆとり(幼少期)
……!//
ゆとり(幼少期)
うんっ!!



ニカッと笑うもるでおの表情はとても輝いていて、美しいその瞳は希望という名の光で満ち溢れていた




あの日がくるまでは…





















ダッダッダッダッダッダッ!


ゆとり(幼少期)
はぁっ…はぁッッ…はあ!



あれから数週間たったある日、もるでおから突然電話がかかってきた




どうやらお母さんの病態が急変し、流石のもるでおでも手に負えない状況になっているらしい




俺はすぐに家を飛び出してもるでおの家へと向かった









ダッダッダッダッダッダ!




ガチャッ!




ゆとり(幼少期)
もるでおッッ…!
もるでお(幼少期)
……!ゆとりッ!



ベッドに横たわっているもるでおのお母さんの目は、まだ微かに開いていた


もるでお(幼少期)
…どうしよう、お母さんがッ
ゆとり(幼少期)
………っ



状態を見る限り、彼女を救うことは出来ないと判断した俺はもるでおの手をぎゅっと握りしめた


もるでお(幼少期)
……ッッうぅ
ゆとり(幼少期)
………、



すると突然、彼女の唇が少し動き始めた


ゆとり(幼少期)
……もるでお!お母さんが何か言ってる!
もるでお(幼少期)
……え?



もるでお母
…も……お……るで……お…
もるでお母
……もる……でお
もるでお(幼少期)
……!俺はここにいるよ!
もるでお母
あなたに…言わなくちゃいけないことが……あるの
もるでお(幼少期)
…なに?
もるでお母
…あなたの……お父さんは…自殺したんじゃない…
ゆとり(幼少期)
……え?
もるでお母
……間に合わなかったの…
もるでお(幼少期)
…間に合わなかった?
もるでお母
…お父さんが…亡くなったと知らされた時…
もるでお母
…仲間の方に……これを渡されたの…



そう言ってお母さんは棚の最奥にあった分厚い本を取り出した


もるでお(幼少期)
……こ、これは!
ゆとり(幼少期)
…まさか!
もるでお母
…もるでお……あなたならきっと…



もるでお母
──────────



もるでお(幼少期)
……!
ゆとり(幼少期)
……!
もるでお母
…愛しているわ……





その言葉を最後に、彼女は息を引き取った






















ザッザッザッザッザッザッ…




ゆとり(幼少期)
はぁっ…もるでおッ!待ってよ!…はぁッッ!
もるでお(幼少期)
………
ゆとり(幼少期)
…本気でやるのッッ?
もるでお(幼少期)
……うん
ゆとり(幼少期)
…でもッ、何が起こるかわからないし危険だよっ!
ゆとり(幼少期)
……それに…もし間に合わなかったらッ
もるでお(幼少期)
…うるさい!俺はやる
もるでお(幼少期)
俺がやらなくちゃいけないんだ



ザッザッザッザッザッザッ…


ゆとり(幼少期)
…はぁはぁッッ…ま、待って!





そのままもるでおは丘の上に建っている大きな教会の中へと入っていった




息を切らしながら俺もその後を追う




聖書台の前に立ったもるでおは十字架を逆さにすると呪文のようなものを唱えながら分厚い本を開いた




ゆとり(幼少期)
…もるでお!ダメだ!!



もるでお(幼少期)
闇に支配されし悪の魔導書よ!我の生と引き換えに魔物の力を解放せよ!よって我を主とする!



その瞬間、黒い煙がもるでおを包み込んだ




そしてみるみる体の中へと吸い込まれていく




あまりの光景に俺は息を呑んだ




ゆとり(幼少期)
……ッッ
もるでお(幼少期)
…う"ぅ…う"あああああああ!
ゆとり(幼少期)
……もるでお!
もるでお(幼少期)
う"ぅぅッ…ゲホゲホッ……はぁっ、はぁ
もるでお(幼少期)
………
ゆとり(幼少期)
……!



立ち上がったその姿や表情はいつもの優しいもるでおではなかった




鋭い目つきと凛とした美しい横顔から凄まじい殺気を感じ途端に恐怖を覚える




俺は声を震わせながら彼に話しかけた




ゆとり(幼少期)
…もるでお、だよな?
ゆとり(幼少期)
…どうしてッッこんなことを、



するともるでおはゆっくりと俺に歩み寄り手を伸ばしてきた




もるでお(幼少期)
ゆとり……



もるでお(幼少期)
お前なら…付いてきてくれるよな
ゆとり(幼少期)
……ッッ



ニコッ


ゆとり(幼少期)
もちろん♡















身の危険をも感じず、父に全てを捧げた母が俺は大嫌いだった









そこまでして一人の人間を愛したいと思える母が大嫌いだった









でも俺はあの時、母と同じことをした









俺には彼を一人にすることなんて出来ない









だから俺は彼に全てを捧げる









どんな時でも必ず傍にいる









例えそれが、彼の最期だとしても…
























ゆとり
こうやって草原に寝転んで空を見上げてるとさ、小さい頃を思い出すよね〜
もるでお
うん…あんまり思い出したくねぇけど
ゆとり
もうこんなに経っちゃったんだ…早いねぇ
もるでお
あっという間だな…
ゆとり
ねぇ覚えてる!?俺がもるでおを連れて家出したこと!
もるでお
そりゃあもちろん覚えてるよ
ゆとり
『その穢れた血の少年とつるむをやめろ!お前は我が一族の恥だ!』なんて父さんに言われちゃってw
もるでお
ブチギレたゆとりと俺で逃げ出したんだっけな
ゆとり
うん……あそこは俺の居場所じゃなかったんだよ…





遠くまで広がる空は真っ青で肌に触れる芝生が少しくすぐったい




時折、優しい風が俺たちの頬を撫でた




もるでお
………
ゆとり
………
もるでお
……ゆとり
ゆとり
ん?
もるでお
……俺、



もるでお
──────────
ゆとり
………
ゆとり
……そっか
もるでお
……うん
ゆとり
心配しなくても俺がいるよ
もるでお
……!
ゆとり
数年前の今日、俺は教会で君に全てを捧げた
ゆとり
……忘れないでよね
もるでお
……うん
ゆとり
さっ!寝てる暇なんてないよ!ほら立ち上がる!
もるでお
わ、わかったって!



スクッ…




ゆとり
……ん?
もるでお
どうした?ゆとり…
ゆとり
なんかあそこ、人倒れてない?
もるでお
……ホントだ!



タッタッタッタッタッタッ























ユサッユサユサッ…


ゆとり
あの〜、大丈夫ですか?
もるでお
おい!起きろー!
ゆとり
死んでるかなぁ?
もるでお
どうするんだよ…
ゆとり
うーん…しるちゃんの所連れてく?



???
……うぅ…
ゆとり
お!?起きた!





~𝐄𝐍𝐃~




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