11月10日(日) 12:59
天文学者の彼山本が抱える箱は、小柄な彼には大変そうな荷物に見えた。
そう言って箱から出てきたのは、
重々しい地球儀。最近よく見る丸い台に三日月のような支えがあるタイプではなく、4本足で立つ、かなり昔のタイプの地球儀。
壊れないよう慎重に地球儀を持って、魔法部屋へと運んだ。
慎重そうに箱を抱えて店をあとにした。
このまま死のう。今一瞬痛くなれば、苦しくなれば。
目の前はぼんやりとした紺色の水と、僕の心に似た空。
聞こえる音は打ち付ける荒波の音。
鼻には水との近さを思わせる程濃いしょっぱい香り。
手は握りすぎて爪がくい込んで、跡がついて少し痛い。
口には緊張とか不安だとかで止まらない唾液が溜まる。
……黒いと思っていた空は、
決心した途端に何故か、白い粒を現した。
白い粒…?否、満天の星空だ。
死ぬ前に、大好きなものを見れてよかった。
月だとか星だとかは、凄く好き。誰かのものじゃないから。
魔法使いの素質だとか、ふざけ合える友人だとか、気楽な人生だとかを持っているあいつらだって持ってないから。
こんなこと、昔は思ってたっけ。
憎いあいつらを意識しだしたのなんて精々小学校の高学年から。
でも、宇宙を好きになったのはもっと前、3歳ぐらい。
あれ、なんで好きになったんだっけ。
好きな理由が、こんな僕のただの妬みでいいはずが無い。
ごちゃごちゃ考える前に、死ぬか。
そう声をかけたのは、
僕より幼いであろう男の子。
……なんなんだこの子は。いきなり僕の自殺を止めたかと思ったら小学生だし。
…あ、
しまった。小学生相手に何してるんだろ、
最悪、最低だ。僕は。
少年はどこからか分厚い本を取り出した。ペラリ と本を開く。
少年が息を吸った。
『 星よ、誠を知るものよ、 』
『 どうか彼の心にかかる苦い雲から、 』
『 星の光の筋を、見せて欲しいのです 。 』
心に絡まっていたうざったい糸が、半分ぐらい、するり と抜けた気がした。
ふと見上げると、
小さな頃から大好きな空があった。
困ったように笑う貴方が、大好き。
生きててくれて、出会えて、良かった。
《お直しカルテ》━━━━━━━━━━━━━━━
XXXX年 11月 19日 火曜日 10:04/10:41完了
件名[ 割れたマグカップの修理 ]
依頼者氏名[ ???? ]
備考《 色味の変化に気をつける 》











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。