第17話

17話 恋人
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2026/02/25 09:00 更新
大好きだよ。



選択肢1、晴れて恋人になって命が無事になる代わりに、魔法がキスしようと何しようと、もう二度と使えなくなる。

選択肢2、このまま結ばれないまま、人生の終わりまで魔法使いとして全うして死ぬ。






選択肢1を選びたかった、なんて思わない。思っちゃいけない。



前提魔法使いとして生きるこの人生は楽しくて、何よりも生き甲斐でしかない。


執着だとか依存だとかも河村に言われたっけ。






子供の頃に魔法使いになるな、と言ったお父さん。それを無視して魔法使いになった俺。

お父さんも、魔法使いの自分の事も恨んでない。



恨むとしたら、














そんな綺麗な顔をした、河村だよ。










今まで一目惚れなんて、ましてや恋なんてした事無かったのに、






たった一瞬、ウイスキーを置いたその瞬間、





















惚れさせたお前が悪い。最低。







俺がいなくなるなら、お前も________









呪術師
福良!



魔法使い
…へ





11月27日(水) 16:49




呪術師
…良かった……良かった…



今、訳も分からず河村に抱きしめられている。



落ち着いて見渡すと、ここは俺の家で、ソファに寝ているようだ。











……なんだか、嫌な夢を見ていたような気がする。

自分なのに自分とは思えない事を言っていて、凄く苦しい夢だった。




呪術師
福良、いつ倒れたか覚えてる?
魔法使い
え、えっと……
魔法使い
…家に帰って、それで……その時かも
呪術師
…じゃあ、ほぼ丸一日
倒れてたってこと!?
魔法使い
え今日何日なの!?
呪術師
27日!
魔法使い
え……ほんとに丸一日…
呪術師
……怖かった…良かった…
魔法使い
……あれ、河村なんでここに…
呪術師
あの後、掃除手伝おうと思って
夕方ぐらいにここ来たら、
呪術師
玄関でもう倒れてるんだもん…
魔法使い
…ごめんね、迷惑かけて
呪術師
大丈夫…大丈夫だけど……
呪術師
…ほんとに、死んじゃう…
魔法使い
…もう、だめなんだね




泣かないでよ、俺らは恋人じゃないんだよ、仕事仲間なんだよ。


それが、両想いでも。










魔法使い
…お腹すいたな、
呪術師
…そのままでいて、お粥
あっため直すから、


言われて鼻を効かせてみると、優しいだしの香りがした。















魔法使い
ご馳走様、ありがとうね





呪術師
福良、今からする話は…
呪術師
…今聞いたって何になるって訳じゃない
呪術師
勿論恋の病が治る訳でもないし、
新たな解決策、なんて話じゃない
呪術師
…でも、この恋の病の原因……知りたい?





魔法使い
……原因って、その一目惚れとかじゃ…
呪術師
ううん、そういう話じゃなくて、
呪術師
なんで福良が、他の誰でもなく福良だけが
呪術師
この恋の病になってしまったか












魔法使い
…うん、教えて











福良の恋の病の原因。僕は医者じゃない。でも、知りたかった。



今一度、家にある本を読み返した。図書館に行って、読んだことのない本も読んだ。


でもそれっぽいことは見つからなくて。







ふと思い出して、実家に帰った。















そして、ようやく見つけた。原因だと思われること。





それは重く分厚い本でも、最新の本でもなく、












とある1冊の、ぼろぼろのノートに書いてあった。












『呪術師 基礎学』



表紙に書いてあった年号は、今から15年と少し前。











正真正銘、中学生の僕が書いたノートだった。















あの頃、たしか██と出会って半年ぐらいの頃。興味はすっかり呪術へと向いていた。

██に呪術の話を聞いたり、教科書的な本で██に聞きながら勉強して、ノートにまとめたり。






端の方に殴り書きで、




「恋の病」






と題して、メモが残っていた。












████
これは、呪術師にしか
分からないことなんだけど、
████
呪術師は、恋の病を診断できるんですよ
中学生
恋の……病?
████
そう、恋の病
████
恋に落ちて頭がその人のことで
いっぱいになっちゃうのは、恋の病。
████
そうでしょ?
中学生
そうだけど…あまりにも概念的じゃない?
████
そんなの、呪術の話はずっと概念的だよ
████
あとはね、






████
魔法使いの一部は、恋に落ちると
魔法が使えなくなっちゃうの





████
治療法はお星様が教えてくれるんだけど、
人それぞれなんだって












なんで忘れてたんだろ、こんな大事な話。


多分、まだその時は魔法使いに少し憎しみが残ってたんだ。





きっと██の話も雑談程度に聞いていた。















メモには、追加で調べたのか、██が話していたのかは忘れたけど、「遺伝性」と記されていた。















あくまで僕の考察にはなる。

恐らくメモの通り、福良の恋の病は遺伝的なもの。そして、福良のお父さんも同じ恋の病を患った。福良のお父さんは、福良が頑なに選ばなかった選択肢、恋心に従って魔法使いを辞めること、を選んだ。きっと、物凄く苦しい決断だったに違いない。でも、魔法使いを無理やり続けて命を削るよりは良いと思ったのだろう。
だからお父さんは、福良が魔法使いになることを初めに引き止めた。「幸せになれない」と言って。


でも福良少年は、魔法使いを選んだ。

お父さんとした、「絶対に魔法使いを辞めない」という約束と付き合いながら。














魔法使い
…遺伝性……か
呪術師
うん、きっとお父さんが
言ってた事もそういうこと
魔法使い
……俺、幸せだよ
魔法使い
魔法使いの仕事を生涯出来て、
魔法使い
大好きな人に出会えて…
魔法使い
…死んでもいいって
思えるぐらい、幸せ……






呪術師
福良、今週はもう予約ない?
魔法使い
え、確か無いよ
魔法使い
…12月の半ばぐらいに、1件あるけど……
呪術師
……福良は、あと1件仕事を
する分魔法を使うと、
呪術師
…死ぬと思う





魔法使い
…それでも、幸せだよ
呪術師
…僕も、幸せ
呪術師
大好きな人に出会えて…本当に…




言葉は途切れ、俯いてしまった。









遺伝性は、抗えないもんな。恨むとしたらこの遺伝を引き当てた俺の運、だけか。














それから半月、予約は「再開未定」として受付を止めた。贔屓にしてくれている友人に理由を聞かれ、心配されたが、色々誤魔化していった。

すっかり冷え込んで、外に出るのも嫌だったけど、最後と思うと愛おしくて、澄んだ朝の空気を吸いたくて、河村を誘って早朝に散歩したりした。

体調も割と良かったので、楽しく、過ごしていた。













12月19日(木) 9:46




最後の仕事の日。







お客さんは初めて来る人。



正直それで良かった気がする。変に知っている人だと泣いちゃいそうだったから。






前日から一緒にいた河村は、淋しそうな顔をしていた。












魔法使い
ねぇ河村、
魔法使い
大好きだよ。

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