大好きだよ。
選択肢1、晴れて恋人になって命が無事になる代わりに、魔法がキスしようと何しようと、もう二度と使えなくなる。
選択肢2、このまま結ばれないまま、人生の終わりまで魔法使いとして全うして死ぬ。
選択肢1を選びたかった、なんて思わない。思っちゃいけない。
前提魔法使いとして生きるこの人生は楽しくて、何よりも生き甲斐でしかない。
執着だとか依存だとかも河村に言われたっけ。
子供の頃に魔法使いになるな、と言ったお父さん。それを無視して魔法使いになった俺。
お父さんも、魔法使いの自分の事も恨んでない。
恨むとしたら、
そんな綺麗な顔をした、河村だよ。
今まで一目惚れなんて、ましてや恋なんてした事無かったのに、
たった一瞬、ウイスキーを置いたその瞬間、
惚れさせたお前が悪い。最低。
俺がいなくなるなら、お前も________
11月27日(水) 16:49
今、訳も分からず河村に抱きしめられている。
落ち着いて見渡すと、ここは俺の家で、ソファに寝ているようだ。
……なんだか、嫌な夢を見ていたような気がする。
自分なのに自分とは思えない事を言っていて、凄く苦しい夢だった。
泣かないでよ、俺らは恋人じゃないんだよ、仕事仲間なんだよ。
それが、両想いでも。
言われて鼻を効かせてみると、優しいだしの香りがした。
福良の恋の病の原因。僕は医者じゃない。でも、知りたかった。
今一度、家にある本を読み返した。図書館に行って、読んだことのない本も読んだ。
でもそれっぽいことは見つからなくて。
ふと思い出して、実家に帰った。
そして、ようやく見つけた。原因だと思われること。
それは重く分厚い本でも、最新の本でもなく、
とある1冊の、ぼろぼろのノートに書いてあった。
『呪術師 基礎学』
表紙に書いてあった年号は、今から15年と少し前。
正真正銘、中学生の僕が書いたノートだった。
あの頃、たしか██と出会って半年ぐらいの頃。興味はすっかり呪術へと向いていた。
██に呪術の話を聞いたり、教科書的な本で██に聞きながら勉強して、ノートにまとめたり。
端の方に殴り書きで、
「恋の病」
と題して、メモが残っていた。
なんで忘れてたんだろ、こんな大事な話。
多分、まだその時は魔法使いに少し憎しみが残ってたんだ。
きっと██の話も雑談程度に聞いていた。
メモには、追加で調べたのか、██が話していたのかは忘れたけど、「遺伝性」と記されていた。
あくまで僕の考察にはなる。
恐らくメモの通り、福良の恋の病は遺伝的なもの。そして、福良のお父さんも同じ恋の病を患った。福良のお父さんは、福良が頑なに選ばなかった選択肢、恋心に従って魔法使いを辞めること、を選んだ。きっと、物凄く苦しい決断だったに違いない。でも、魔法使いを無理やり続けて命を削るよりは良いと思ったのだろう。
だからお父さんは、福良が魔法使いになることを初めに引き止めた。「幸せになれない」と言って。
でも福良少年は、魔法使いを選んだ。
お父さんとした、「絶対に魔法使いを辞めない」という約束と付き合いながら。
言葉は途切れ、俯いてしまった。
遺伝性は、抗えないもんな。恨むとしたらこの遺伝を引き当てた俺の運、だけか。
それから半月、予約は「再開未定」として受付を止めた。贔屓にしてくれている友人に理由を聞かれ、心配されたが、色々誤魔化していった。
すっかり冷え込んで、外に出るのも嫌だったけど、最後と思うと愛おしくて、澄んだ朝の空気を吸いたくて、河村を誘って早朝に散歩したりした。
体調も割と良かったので、楽しく、過ごしていた。
12月19日(木) 9:46
最後の仕事の日。
お客さんは初めて来る人。
正直それで良かった気がする。変に知っている人だと泣いちゃいそうだったから。
前日から一緒にいた河村は、淋しそうな顔をしていた。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。