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卒業式が終わった。
ほんの数時間前まで、クラスメイトの笑い声と泣き声が入り混じりあれほど賑やかだった教室。
今はまるで別世界に取り残されたかのように、しんと静まり返っている。
窓の外には校庭で記念撮影をしている子たちがちらほらいて、まだ余韻が残っている気がした。
最後にもう一度と教室まで足を運んだけれど、私の他には誰もいない。
黒板に書かれた先生からのメッセージと、お世辞にも上手とは言えない桜や花束のイラスト。
机、椅子、ロッカー、壁に掲示されているプリントまでもそのひとつひとつが涙腺を刺激する。
自分の席に座り、ぐるりと教室を見渡す。
高校生という長いようで短い3年間はこんなにも呆気なく終わりを迎えるのかと、心の奥で名残惜しさが押し寄せてきた。
そうしていると、廊下から足音が近付いてきて私のいる教室の前でピタリと止まった。
どういう訳か3年間ずっと同じクラスだった祥彰。
クイズが好きという共通点から、よく一緒に遊んだり謎解きイベントへ行ったりする仲だった。
しかし別々の大学へ進学する事が決まっていて、春からは高校生の時みたいに同じように過ごすことはない。
スマホをチラつかせながら、隣の席へ。
なんて言ってるけど、私の心臓はうるさいくらいにドキドキしている。
ほぼ3年間片思いの相手が卒業式の日、こんな風にきてくれるシチュエーションとかどんな恋愛ゲームのイベントですか?
インカメで撮影するため距離がぐっと縮まる。
そして「撮るよー」と、1枚パシャリ。
こんな会話もきっと今日限り。
私に勇気があれば、あなたのボタンが欲しいって言いたいですけどね。
ははっと乾いた笑いが漏れる。
首を傾げ、眉をひそめた。
祥彰は机の前に立ち、学ランの上から2番目のボタンを器用に取ってみせる。
それを手のひらに乗せ、私の前に差し出した。
こんなの、狡い。
卒業式が近づいたある日の休み時間・・・
いつものようにクイズを出し合っていた時、祥彰が出題してきたあの問題を思い出した。
【問題】
卒業式の日に男子学生が好きな人に制服から外して渡すことがある、心臓に一番近いと言われるボタンは何でしょう?













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!