第11話

2人っきりのお出かけ‎💙‎🤍
995
2025/07/14 13:35 更新
今回のお話はほのぼの系箸休めとなっています


タクヤくんは出てきません







今日は休日。


家の中は騒がしくなるかと思いきや、リョウガは補講、ユーキとタクヤは友達の家へ遊びに行くと言っていて、今日はタカシと2人きり


小さな両手で大きな食パンを頬張る姿を見ながらカイは考えた


カイ「タカシ、今日2人でどっかお出かけしよっか」


そう言われたタカシは、ぱっと目を丸くして、パンくずをつけた顔を輝かせた


タカシ「いくーっ!! カイとふたり!?ほんまに!?」


カイ「ほんとだよ。きょうは、特別」


そう言いながらタカシの口周りを拭いてやる


カイ「だから食べ終わったら出かける支度しようね」




タカシは大きく頷くとばくばくと残りの食パンを頬張った












________






タカシ「うわ〜〜! みずいろの電車やー!」

カイ「これは快速っていって、ちょっと速い電車なんだよ」

タカシは乗るたびに目をまるくして、窓の外をずっと見ていた


タカシ「今日どこ行くん?」

カイ「んー、ないしょ。タカシの好きなとこだよ。」


電車の中でもワクワクが止まらないタカシにカイは頬を弛めた






在来線を乗り継ぎはるばる2人がやってきたのは大きな動物園だった



タカシは目を輝かせ、園に入ると手を繋いでいたカイの腕をぐいっと引っ張った



タカシ「カイにい!見て!ライオン!おっきい!」

カイ「ほんとだ、おっきいね。あ、ほらタカシ、隣にホワイトタイガーもいるよ!」

タカシ「ほんとや…かっこいい…」



広い園内を、小さなスニーカーで一生懸命歩いていく



途中で乗馬体験をしてみたり、カイと一緒にモルモットを触ってみたりと、タカシは大忙しだった



お昼はベンチに腰掛け、職員さんの作ってくれたおにぎりを頬張る


カイ「タカシ具何入ってた?」


タカシ「おかか!カイにいは?」


カイ「俺は鮭だったよ」


タカシ「タカシもしゃけすき!」



お弁当はタカシが好きなウインナーや、星型の卵焼きがぎっしり

カイがひとつずつ説明するたび、「それタカシの!」「あ、それもすき!」と盛り上がっていた





午後も歩きまわって、カバを見てから、鳥ゾーンへ

大きなクジャクが羽を広げる瞬間には、ふたりとも「おおぉ〜!」と声を上げる




帰り際にはタカシが物欲しそうにぬいぐるみコーナーを遠くから見つめている姿を見て、カイが「1つだけ何か買ってもいいよ」と言うとタカシは「ほんまに?」とカイを見上げる


カイが頷くとお店へ一直線に駆けていき、カモノハシのぬいぐるみを手にした


カイ「あれ?今日その子見てないよね」

タカシ「うん。日本の動物園にはおらんねん。でもタカシ大好きやから!」

カイ「そっか。うん、じゃあそれ買おうね」







帰り道、タカシはカイに買ってもらったカモノハシのぬいぐるみを大切に抱き抱えていた




カイが駅のホームで乗り換え案内を見ていると、タカシが後ろからぎゅっと服を引っ張った


カイ「どうした?」

タカシ「ちょっと、つかれちゃった…かも」


カイ「そっか。抱っこする?」

タカシ「うん」

カイはしゃがんで、カモノハシを受け取ってタカシを抱き上げる

傍から見たら片手にタカシ、片手にカモノハシとすごいことになってるんだろうなと思いながらも電車に乗り込む


電車の中は、ちょうど帰宅時間と重なったのか、座席はほとんど埋まっていた



カイは端の席にタカシを下ろし、横に倒れ込まないように時折支えながら、もう片方の腕では、カモノハシのぬいぐるみを大切に抱えていた


そのタカシ寝顔には、動物園で遊び疲れた満足感と、まだ名残を引く夢の余韻が残っているようで、カイは小さく笑った


カイ「いっぱい遊んだもんな、タカシ……」


そう呟いて頭をそっと撫でた時、タカシの隣に座っていた年配の女性が、ふと声をかけてきた


「……いいお兄ちゃんねえ。弟くん、ぐっすりじゃない」


驚いたように顔を上げたカイは、少しだけ戸惑ってから、笑って「ありがとうございます」と返した



弟、と言われたのは、実はこれが初めてだった



青空の家では、皆家族同然のように思っているけど、他人の目に本当の兄弟として映ったのが、カイはなんだか不思議でうれしかった



駅に着いて、カイはタカシを起こさないようそっと抱き上げた


あたたかな重みを感じながら、大きなカモノハシを持ち直し、改札を出る


夕暮れの風が涼しくて、タカシの髪がさらりと揺れた


タカシ「……うーん」


目をこすりながら少しだけ起きたタカシが、小さな声で「かえってきた?」と聞いた

カイは笑って頷いた

カイ「うん。もうすぐ着くよ。リョウガたちも待ってるって。」






タカシ「……たのしかった……」


タカシがぽつりとそうつぶやいて、またカイの肩にもたれかかる





夕暮れの帰り道





ちゃんと“兄”になれてるのかな……




カイは伸びる大きな影を見つめながらそんなことを考える




タカシの小さな手が、自分のTシャツをぎゅっと握っていた





うん、なれてるよな




心の中でそっとそう答えて、カイはもう一度、腕の中の弟を見つめた









カイ「……タカシ、おつかれさま」









声に出したその一言は、カイ自身の胸の奥まで、優しく響いた

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