第14話

わかってくれない‪💚💙(❤️)
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2025/07/20 13:12 更新
昼休み前、給食の時間。配膳台に並ぶクラスメイトの列。

タクヤはいつものように、自分の牛乳だけを静かに断って、水筒のお茶を持って席に戻った。



でもそのとき、後ろから聞こえてきた声。



「なあ、タクヤ」
隣の席の男子が、牛乳瓶を片手に、ふいに声をかけてきた。


「いつも牛乳飲んでないよな?」


タクヤ「……うん。アレルギー、だから」

タクヤは、ちょっと目を伏せながら答えた。


「なにそれ〜どうせ嫌いなだけだろ!」


男子の声が少し大きくなって、近くの数人がこっちを見た。




タクヤ「ちがう……飲んだら、苦しくなったりするから……」

言いながら、自分の声がどんどん小さくなるのがわかった。


「うちの弟も牛乳キライだけど、飲んでるよ?」
「なんで飲まないの? ずるくない?」

小さな笑い声が机のまわりに広がった。



その瞬間、カッと立ち上がったのはユーキだった。

ユーキ「やめなよ。タクヤはアレルギーってお医者さんに言われてるんだよ。飲んだら具合悪くなるんだってば」


その声は強くはなかったけど、真っ直ぐだった。



「ユーキうるさい。ちょっといじっただけじゃん」
「てか牛乳飲んだだけで具合悪くなるとかださ笑」



ユーキ「タクヤが悪いんじゃない」

ユーキの目が、みんなを真っすぐ見ていた。
その空気に、笑っていた子たちは少しずつ黙っていった。


タクヤは、何も言えなかった。
嬉しかったのに、喉に何かが詰まったように、何も声が出てこなかった。

その日の給食の味は、まったく覚えていない。
水筒のお茶を飲むのもなんだか怖くて、手が止まった。







________



放課後。

ランドセルを背負って青空の家に帰ると、タクヤはすぐに自分の部屋にこもった。
宿題もそこそこに、机に突っ伏して動かなかった。

リビングからは、タカシの元気な声と、テレビの音が聞こえる。
でも、その世界がすごく遠くに感じた。


その夜、夕食の時間になっても、タクヤの箸は進まなかった。
カイが卵焼きをすすめても、首を横に振っただけ。

お風呂に入っても、布団に入っても、胸の奥のモヤモヤは消えなかった。







夜、廊下の音に気づいて目を開けると、ドアの隙間からやわらかい灯りが差し込んでいた。




カイ「タクヤ、起きてる?」


タクヤ「……うん」

ドアが静かに開いて、カイがそばに来た。


カイ「今日、元気なかったけど……なにかあった?」


タクヤは、すこしだけ顔を背けた。



タクヤ「……べつに」


カイ「……ユーキが、少し話してくれたよ。給食のときのこと」

タクヤの背中がぴくっと動いた。

タクヤ「……おれ、バカにされた」
声が震えていた。


タクヤ「なんでみんな、わかってくれないの……」


タクヤ「アレルギーって言っても、どうせ嫌いなだけだろって……。牛乳も飲めないって、俺やっぱり弱いのかな…」


その言葉に、カイはすぐに首を振った。

カイ「違うよ。タクヤは悪くない。アレルギーっていうのは、身体を守るために大事なことなんだよ。無理して飲んだら、倒れちゃうことだってある」


タクヤ「……でも、みんな笑ってくる」
タクヤは小さな声で続けた。

タクヤ「俺、頑張って説明もしたのに……。もう、いやだ」

カイ「タクヤ……」

カイはそっと、タクヤの頭を撫でた。

カイ「アレルギーってね、外から見えないから、理解されにくいんだよ。でも、それはタクヤのせいじゃない。わからない人が、まだいるだけ」

タクヤ「でも、言っても、また笑われるかも……」

カイ「うん。それが怖いのも、すごくよくわかるよ」

カイは、静かに続けた。

カイ「でも、今日のユーキみたいに、ちゃんとわかってくれる人もいる。俺も、リョウガも、タカシも。……タクヤのこと、大事だと思ってる」

タクヤの目から、ぽろっと涙が落ちた。

タクヤ「……カイ、なんでそんなにやさしいの?」

カイ「うーん……タクヤが、がんばってるの、知ってるからかな」

その言葉に、タクヤは目をぎゅっと閉じた。

タクヤ「……もうすこし、だけ……ここにいて」

カイ「うん、いるよ」

カイは布団の上に座って、タクヤの背中をやさしくなで続けた。

静かな夜のなかで、タクヤの心の傷が、すこしずつ癒えていくようだった。

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