第42話

NAOTOの話
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2021/05/26 03:03
健二郎
健二郎
臣ちゃん…結局戻って来んかったなぁ…。

打ち合わせを終えた三代目。

スタッフが出ていった会議室で健二郎は独り言のように言った。
岩ちゃん
岩ちゃん
大丈夫ですかね…?
臣さん…。
隆二
隆二
どうかな…。
相当怒ってる感じだったからなぁ…。
直己
直己
ナオトさん………。
NAOTO
NAOTO
後で俺が電話しとくよ…。

それぞれ荷物を掴んで会議室を出た。


少し先で集まっていたTHE RAMPAGE。

その中に壱馬の姿を見つけたナオト。


静かに近づいていく。
陣
あ、ナオトさん(笑)
THE RAMPAGE
THE RAMPAGE
お疲れ様です!!

元気のいい声が揃った。


口元に笑みだけ浮かべるナオトは、壱馬の腕を掴む。
NAOTO
NAOTO
ちょっとおいで…。
壱馬
壱馬
えっ、あっ、ちょっ…。

驚く壱馬の腕をグイッと引っ張る。

静かなラウンジまで連れて来た。
壱馬
壱馬
なんですか…?

すぐに離された腕をさする。
NAOTO
NAOTO
壱馬…。
あなたとキス…したの?
壱馬
壱馬
えっ……。

単刀直入な問いに露骨に逸らした視線。
NAOTO
NAOTO
演出…だよね…?

確認するように聞いてくる。

その声色が、そうだ…と言って欲しいみたいに。
壱馬
壱馬
違い…ます…。

ナオトは顔をしかめた。
壱馬
壱馬
俺が…俺の意思で…彼女にキスしました…。
NAOTO
NAOTO
それは…そうした方がMVが盛り上がると思ったから…?それとも…。

その先を言葉に出来なかった。
壱馬
壱馬
登坂さんが聞け…とでも…?

ナオトは小さなため息をついた。
NAOTO
NAOTO
登坂さん…ね…。

ズボンのポケットに手を突っ込む。
NAOTO
NAOTO
自分の兄貴を…随分冷たく呼ぶんだね…(笑)
壱馬
壱馬
えっ……どうして…。

驚きを隠せない。

ナオトはフッと鼻で笑った。
NAOTO
NAOTO
なんで驚くの?
マネージャーも知ってるでしょ?
壱馬
壱馬
それは仕方がないって言うか…。
NAOTO
NAOTO
俺だけじゃない…。
三代目はみんな知ってる。
壱馬がTHE RAMPAGEになった時話してくれた…。

俺の…

実の弟だと…


可愛いやつなんだと…

可愛がってやって欲しいと…

俺たちに頭を下げた…
NAOTO
NAOTO
そんなこと…わざわざ頼まなくったって…可愛がらない…なんて選択肢はないのにさ…。
壱馬
壱馬
……兄貴が…?
NAOTO
NAOTO
臣ちゃんは…いつだって壱馬を心配してる…。
見せないかもしれないけど…レコーディングの後は必ず様子を聞きに行くんだよ…。

ライブがあれば…

時間を割いて見に行くし…


テレビに出れば…

打ち合わせやリハの合間に全て見る…


お前にも思うとこがあるだろう…


でも…

お前の兄貴は…

そういう兄貴だ…



聞かされた臣の話。



知らなかった…

兄貴がそんな事してたなんて…
NAOTO
NAOTO
知らなかった?
壱馬
壱馬
はい………。

知らない…


と言うよりは…

考えたことも無かった…


兄貴が…

俺を見てるなんて…


ナオトの話は、壱馬に戸惑いだけを与えた。

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