第60話

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2022/08/11 12:51
ダイモンジソウの花言葉は…
"自由、好意、不調和、情熱、節度、恋の訪れ"
あいつ…ダイモンジソウだけを手に持って、何処に行く気だ…
そう疑問に抱きながらも、折角だから他の花も観てみるかと思い、そのまま図鑑に目を通した




あれから、数時間後…
それが、彼女達にとっては一瞬だったのか、永く感じられたのかは分からない
そろそろ、アリアが帰って来る頃だろうとなんとなく思い、あなたの下の名前は図鑑を満足そうに閉じ、自分の近くにある、さっき自分で作った本の山の上に、図鑑を静かに乗せた
「それでは、そろそろ私は上に行きますが…大丈夫ですか?」
と心配そうに、あなたの下の名前はまだ本を熱心に読んでいるアリナを見つめながら、そうアリナに問い掛ける
アリナは、返事するのすら煩わしかったのか、返事はせず小さく頷いた
その様子を確認したあなたの下の名前は、ゆっくりとアリナに背を向け、ドアを静かに開け、外に出ようとした…
「お姉ちゃん、これ、落としたよ?」
その声に、外に運んでいた足をピタッと止め、ゆっくりと振り返ったあなたの下の名前は、さっき落としたであろう自分の懐中時計を持って、こっちにまで近付いてきていたアリナの手から、「ありがとうございます」とお礼を伝えて、懐中時計を受け取った
あなたの下の名前は、それを自分のポケットの奥まで入れた
あなたの下の名前は気を改めて、くるっと身を翻し、廊下に出て、振り向かずにドアを閉めた
ここには、静かに響き渡るあなたの下の名前の足音しか音は無かった…
「紅い月…ね…」
歩きながら、そう静かに呟いたあなたの下の名前の口角は、柔らかく少し上がっていた
懐中時計を仕舞った方のポケットに手を突っ込み、懐中時計を取り出す。その際に、ジャララ…とチェーン同士が擦り合う音が響く
脚を止めずに、ゆっくりと動かしながら、機械的に動く懐中時計の針をじっと見つめて
「あと……時間」
と、近くで耳を傾けていないと聞き取れない程の声で、そう言った

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