うんざりする位、あなたに腹が立って
憎くて憎くて仕方が無かった。
ふとした瞬間に、違和感を覚えるのだ。
私と違って、あの子は幸せなのではないかと。
例えば、最低な母親、と言ったって
よく聞いてみれば、どれも
彼女の事を思っての行動言動だと分かった。
成績もよく、容姿も器量も性格も何もかも
彼女は、全てに恵まれていたのだ。
……仲間なんかじゃなかった。
そう思った瞬間には既に
憎しみにどっぷりと堕ちていたのだと思う。
*****
私がそう「微笑んで」挨拶をすれば
彼女は途端、切なそうに、哀しそうに
それはまぁ酷く顔を歪めた。
私の固有魔法、「嘲笑魔法」。
一度唱えたら暫く途切れぬ
持続魔法で、私が微笑んだ
相手の精神を、傷つける事が出来る。
最初は、ちょっとした嫌がらせな
はずだったのだが、いつからだろう
本格的に、「虐め」へと
発展させていってしまったのは。
あぁ、でもやっぱり
あの時は最高に気分が高揚していた。
彼女に、「出来損ない」のレッテルが
貼られた時は。本当に、気分がよかった。
*****
教師からテストで酷い点をとった事について
問い詰められている様子をみるのは
本当に、本当にそれはもう楽しかった。
ここ最近は、彼女を虐める態度を
表に出してきているから、クラス中…
なんなら、本人までもがこの事を知っていた。
そして、クラスの標的にされた彼女は
みるみるうちに成績を落として行き
今では、私と同じ「出来損ない」になった。
「 やっぱり出来損ないは
最初から出来損ないだったのね 笑 」
私がそう言って笑うと、彼女は
泣きそうに顔を歪めた。
じくりと痛んだ心には
気が付かない「フリ」をして。
今日もまた私は、彼女を
傷つける為に、彼女に微笑む。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。