第11話

第一章八話観察アズール視点

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2020/12/27 05:18

アズール・アーシェングロット

魔力の無い人間がユウさん以外にも居ると聞いて見に来てみたはいいですが……僕とした事がレイシさんについて忘れるなんて

ジェイドからユウさん以外に魔力の無い人間がこのナイトレイブンカレッジに通っているという話を聞き、僕達はその人間……レイシさんの居るクラスの前まで様子を見に来ている。

フロイド・リーチ

アズール、ソイツの事知ってんのー？

アズール・アーシェングロット

親しくはありませんが、過去の飛行術の授業で記録をとってもらいましたから名前と顔だけは。その時は他クラスの生徒、ぐらいの認識程度だったのであまり意識していませんでしたけど

ジェイド・リーチ

モストロ・ラウンジでも姿を見かけたことすらないので、お店には一度も来たことがないという事になりますね。それどころか、昼食も食堂での食事はしないみたいですし。ラギーさんからのお話を聞くに、どうやら今まで目立たず静かに馴染みながら学校生活を送っていたようで

フロイド・リーチ

小エビちゃんと同じように異世界から来たんでしょ？なら、何処で寝泊まりしたり、お金稼いでんの？

アズール・アーシェングロット

確かに、気になりますね。一昨年、魔力のない人間が現れたという噂は耳にしていましたが、その噂は早い段階で自然と消えたので、てっきりデマか、居なくなったかと思っていました。まさかそれがレイシさんだったとは。当初はやることが多かったので気にしていませんでしたが

レイシさんは今、ユウさん達と話をしているようで僕達はその光景を観察する様に眺める。レイシさんについての情報、悪い噂、良い噂すら耳にしたことがない。言わばユウさんより“謎多き人物”と言っても良いだろう。

フロイド・リーチ

魔力のない人間って分かってても、馴染んだことによって当たり前の様に受け入れられてるのに存在忘れられてるって……相当影薄いんじゃね？

アズール・アーシェングロット

ジェイドが言ってたでしょう。目立たず静かに馴染んでいったと。レイシさんは“あえて”そうしてるんですよ。きっとね。今、見てる限りだと自ら目立ちに行くタイプでもなさそうですが……特に影が薄い訳ではなさそうですし。皆が忘れているのは、レイシさんの存在ではなく……“一昨年現れた魔力のない人間がレイシさん”だったという事実です

廊下で立っていると、「お前達はこんなとこで突っ立って何してるんだ」と声を掛けられ、横を振り向く。声を掛けてきたのはジャミルさん。その横にはカリムさんが居る。

アズール・アーシェングロット

お二人は相変わらず今も一緒に行動してるんですねぇ

ジャミル・バイパー

……一応、従者としての役目があるからな

カリム・アルアジーム

で、お前達はなにやってるんだ？誰か探してるのか？

ジェイド・リーチ

探して居る訳ではありませんが、強いて言うなら観察ですかね

ジェイドが微笑みながら言うと、カリムさんは「観察？」と首を傾げ、レイシさんの居るクラスを覗き込む。

ジャミル・バイパー

あれは、ユウとハーツラビュルの……。レイシと話してるなんて珍しいな。知り合いだったのか

カリム・アルアジーム

俺もアイツらが話してるとこ初めてみるぜ

フロイド・リーチ

あれー？二人共、あのレイシって奴のこと知ってんの？

ジャミル・バイパー

一応はな。トレイン先生から気に入られてるらしくてな。二人が話してる姿も度々見てるし、カリムが合同授業で世話になったとか

カリム・アルアジーム

そうそう。何時だったか忘れたけど、一昨年の……飛行術で初めての合同授業だったか？そこで一緒になって、俺が上手く飛べなくてホウキから落っこちそうになった時に受け止めてくれてな。今もたまにすれ違い様に話したりすることあるけど、良い奴だぜ？

ジャミル・バイパー

それでカリムが寮に何度か誘ったりはしてるみたいだが、暑いとこが苦手な上に用事があるからと断られてるらしい。カリムが世話になったこともあって俺も大分前に話したことがあったが……

ジャミルさんはその時を思い出そうと目を逸らして、間を空けてから話を続ける。

ジャミル・バイパー

なんと言うか、単純そうだが掴み所のない奴だった。俺の事を最初に見抜いたのも、アイツだったしな。アレが無自覚なのかは知らないが

ジェイド・リーチ

見抜いた、とは？

ジャミル・バイパー

こう言われたんだ。“ジャミル君って能ある鷹は爪を隠すだよね”と。“本当は野心家そうだけど、手を抜いてるのはカリム君の従者だから？”とも言われた。どうやら、たまに目にするカリムとのやり取りを見て直ぐに気付いたらしい。レイシの前でカリムと話すこともあったからな

アズール・アーシェングロット

なるほど……。因みに、一昨年の九月頭から関わりがあったようですが、お二人はレイシさんがその頃噂になっていた魔力のない人間だとご存知でしたか？

カリム・アルアジーム

そうなのか！？俺そん時のことあんま覚えてないから、噂自体あったかどうかすらうろ覚えだなー。クラスは違うし、合同授業も滅多にあるわけじゃないし、初めて話した時は体調悪くて記録に回ってたのかと思ってた

ジャミル・バイパー

そう言えばそうだったな。噂されてるのがレイシだとは分かっていたが……最初に話してからは滅多に関わることも無かったし、忘れていたな

アズール・アーシェングロット

ジャミルさんの場合、最初に気付かれたから自ら距離をとっていたのでは？とすら思えてきますがね

笑顔で言うと、ジャミルさんが黙ったまま僕の方を見てくる。だが、小さく溜息をついて「……それも、少しある。今は気にしないが」と認めた。

アズール・アーシェングロット

こうなると、余計知りたくなりますね。……あぁ、そうだ。カリムさん、ジャミルさん、少し宜しいですか？

カリム・アルアジーム

ん？なんだ？

ジャミル・バイパー

嫌な予感がする……

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第12話第一章九話お誘い

柊江

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なぁな

編集部コメント

主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした！<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。