第7話

河原
2
2024/06/13 11:00
役人
役人
これはひどい…
第一発見者である子供が見たことを、お千代は包み隠さず話した。
死体をよく見ると、縛られたあとがあった。
しばらくして川下を捜索していると、括られていたとおぼしき縄と、大きな石が見つかった。
誠之助
誠之助
誰が一体、こんなひどいことを…
役人
役人
わからない。でもこいつは力士だ。相当の力があったんだろう
お鷹
お鷹
そうかい
お桃
お桃
そうでしょうね
お鷹
お鷹
こいつからは、眠り薬の匂いがする
役人
役人
え…?
お千代
お千代
眠り薬…
お千代
お千代
前の事件のように、医者と何かしらの関係があった人間かしら…
お鷹
お鷹
その可能性が高そうだな
お桃
お桃
…また?そんなに逆恨みするようなことが…
お千代
お千代
まあ、一旦帰ってそれぞれ考えをまとめたら良いわ
お鷹
お鷹
そうだなあ…夜も近いし
誠之助
誠之助
分かった。教えてくれてありがとうな。俺はお鷹とお桃の支援をできるだけしたい
家に帰る道で、お桃はお鷹に話しかけた。
お桃
お桃
お鷹姉さん、湯屋に行こう
お鷹
お鷹
へ?どうしてだい?
お桃
お桃
だって、寒そうだもの
お鷹は死体を見つけたとき、川に入って回収した。春先の、とても寒い川の中にだ。
ちなみに、お鷹は普段風呂ではなく井戸の水浴びで体の汚れを落としている。
お鷹
お鷹
そうだね。そうしよう
そして二人は家に帰り、手ぬぐいなど必要なものを持って湯屋に向かった。
お桃
お桃
姉さん、背中流してあげる
お鷹
お鷹
ありがとう
お桃
お桃
…ん?
お鷹
お鷹
どうしたんだい?
お桃
お桃
姉さん、傷だらけ
お鷹の背中にはいくつもの切り傷があった。背中だけではない。腕や肩、腹などにも傷があった。
お桃
お桃
…それもそうか
お鷹
お鷹
…私はまともに戦えないんだよ。どうしても男との力の差があるし、それは仕方ない
お桃
お桃
姉さん、強いじゃない
お鷹
お鷹
そりゃ、動かない相手とか、まともに戦ってないやくざかぶれのものとか、酔っぱらい相手にはねえ…
お桃
お桃
姉さん、自信なくしちゃだめ
お桃
お桃
姉さんは強いだけじゃなくて、優しいもの
お桃
お桃
あたしはそんな姉さんがかっこいいと思う
お鷹
お鷹
…あ、ありがとう
お鷹の頬には赤みがさしていた。
きっと湯の熱だけではないだろう。
お桃
お桃
それじゃ、帰ろうか
お鷹
お鷹
そうしよう
お桃
お桃
一つ、聞きたいことがあるんだけど
お鷹
お鷹
なんだい?
お桃
お桃
姉さんって、どうして侍になろうと思ったの?
お鷹
お鷹
それは…まあ、言うべき時が来たら言うよ
お桃
お桃
じゃあ今は、まだ言うべきときではないと
お鷹
お鷹
そういうことだ
お桃
お桃
…忘れないでね?絶対にあたし覚えてるから
お鷹
お鷹
わかった、わかった
家に帰ると、何故かすでにごはんが出来上がっていた。
近くを見ると、書き置きがあった。
お桃
お桃
…この間は、親、姉のことをいじめたやつを捕まえてくれて、ありがとうございました
お桃
お桃
お礼の気持を込めて、岸やの美味しいご飯を作らせていただきました
お桃
お桃
これからは、私一人で頑張っていこうと思います
お桃
お桃
琴より
お鷹
お鷹
そうか、じゃあ美味しくいただこう
お桃
お桃
ふう、お腹いっぱい
お鷹
お鷹
美味しかったね。さすが、人気の料理屋だ
お鷹
お鷹
さて、もう寝るとするか
お桃
お桃
もう遅いもんね、おやすみ
お鷹
お鷹
ああ、おやすみ

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