第6話

花衣
1
2024/06/08 11:00
お梅の一件が終わってからしばらく後。
江戸には桜が咲き乱れていた。
お勝はあのあと奉行所へ行き、いままでのことをすべて話したそうだ。
これからの処分はまだ決まっていない。
お桃
お桃
お鷹姉さん!
伊勢屋に行った帰り、隅田川によったの
お鷹
お鷹
へえ、どうだった?
お桃
お桃
桜がいっぱい咲いていたの!
お桃
お桃
ねえ、暇なときがあったらさ、みんなでお花見に行こう!
お鷹
お鷹
そうしようかね。ちょうど誠之助も見に行きたいって言ってたからね
お桃
お桃
わあ、いつ行こうかな
お鷹
お鷹
明後日にでも行こう
誠之助
誠之助
俺は年中暇だよ
お鷹
お鷹
あんたはもっとやることあるだろうが
誠之助
誠之助
やることって…店番くらいだよ、いまやれることは
あの一件の後、誠之助はちょくちょくここに顔を出すようになった。
お桃
お桃
お団子、作っていこうかな
お桃
お桃
それともお餅?
お桃
お桃
いや、お菓子だけっていうのもね…
お桃
お桃
お寿司作ろうかな、それともお煮しめ…
お鷹
お鷹
それより先に、お千代に休みを取ることを伝えないといけないんじゃないかな
お桃
お桃
そうだね
早速伊勢屋に向かい、休みを取ることを伝えた。するとお千代は
お千代
お千代
明後日ね。私も、寺子屋のわんぱく坊主たちをお花見に連れて行こうか、迷っていたのだけれど、これで決心がついたわ
お桃
お桃
わぁ、みんなで行ったら楽しいかもしれないですね
お千代
お千代
そうしましょう。みんなにお弁当を持ってくるように頼んで、隅田川に集合ね
早速お桃はおにぎりとお煮しめ、そして団子と餅を作ることを決めた。
お桃
お桃
お餅は、先作ったほうが良いかな。でもお煮しめは先に作って味を染み込ませるのも…
お鷹
お鷹
悩んでるみたいだね
お桃
お桃
え?
お鷹
お鷹
お餅は私が買ってきてあげるよ
お桃
お桃
ほんと?ありがとう!
お桃
お桃
姉さん大好きー!
お鷹
お鷹
ち…ちょっと、抱きつかないで…
お桃
お桃
ああごめん
お煮しめを作り、しばらくおいて味を染み込ませることにした。
お桃
お桃
うん、このくらいの味がちょうどいい
お桃
お桃
姉さんも味見する?
お鷹
お鷹
あ、ありがとう
誠之助
誠之助
おーい
お鷹
お鷹
なんなんだい、急に
誠之助
誠之助
天麩羅の屋台も出るみたいだぞ!
お桃
お桃
へー!私天ぷら大好き!
そして次の日の朝。
お千代
お千代
明日はみんなで隅田川にお花見に行きましょう!
お千代
お千代
皆さんお弁当を持ってきてくださいね!
子どもたちの大きな返事が聞こえた。
ところどころ歓声も聞こえる。
お桃
お桃
(みんな嬉しそうだな)
そしてその日も無事に仕事を終えた。
お桃
お桃
うーん、明日の朝おにぎりを作るのは大変だから、今日作っておこう
お桃
お桃
ついでにお団子とお煮しめもお重に詰めて、と
お鷹
お鷹
なんだか楽しそうだね
お桃
お桃
え?
お鷹
お鷹
顔にそう、書いているよ
お桃
お桃
ほんとに?でも、やっぱり嬉しい
お桃
お桃
あたしはなかなか外に出なかったからね
お鷹
お鷹
そうなのかい
お桃
お桃
うーん、明日は暑くなりそうだし、塩をきかせておこうかな
お鷹
お鷹
私も、手伝おうか?
ところが、お鷹が作ったおにぎりは大きさがまちまちで不格好だった。
お桃
お桃
ふふ、ふ
お鷹
お鷹
笑わないでよ!仕方ないじゃん
お桃
お桃
くくく…でも、手伝ってくれてありがとう
そしてお花見当日になった。
お桃
お桃
わあ、立派ー!きれい!
お千代
お千代
さて、このあたりでお昼にしましょうか
お千代
お千代
みんなは散らばって食べてもいいけど、はぐれないようにねー
ところがしばらくして。
お千代
お千代
えっ…なんて?
お千代
お千代
そ…そう。あの辺りには他の子達も近寄らないようにしましょう
お桃
お桃
な…何があったの?
お千代
お千代
お桃さんも…見ないほうが良いかもしれません
お桃
お桃
私、見てくる
気づいたときにはもう、駆け出していた。
お千代
お千代
ちょっ、ちょっと待って!
お桃
お桃
な、なんてこと…
そこには、土左衛門(注:水死体のこと)が浮かんでいた。

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