第11話

毒牙
1
2024/07/02 11:00
松乃
松乃
…被害にあった人たちに、共通点が見つかったの
将吉郎
将吉郎
共通点?なんですかい?
松乃
松乃
一番初めに被害にあった人は?
将吉郎
将吉郎
登竜でやんすね
松乃
松乃
三番目は?
将吉郎
将吉郎
お幸さん
松乃
松乃
ここまで言えばわかるでしょ?
将吉郎
将吉郎
わからないっす…
松乃と将吉郎は屋敷に帰って情報を整理していた。
将吉郎
将吉郎
先生の出す問は難しい。せめてあっしでもわかるようにしてくだせえ
松乃は昔から胡散臭い性格なのでこうして人をからかうのを楽しんでいる。
松乃
松乃
ほら、みんな噂してたでしょ
将吉郎
将吉郎
あぁ、恋仲でやんしたね
松乃
松乃
次、二番目と五番目は?
将吉郎
将吉郎
芳太郎とお靖でやんしたね
将吉郎
将吉郎
この二人も恋仲で
松乃
松乃
そうそう。あと一組やっておきましょうか
松乃
松乃
初牡丹と飛梅
将吉郎
将吉郎
恋仲…とまではいかなくても初牡丹は飛梅にかなり貢いでいやしたね
松乃
松乃
二人は恋仲、と
松乃はいつの間に用意したのか帳面に書きつけていった。将吉郎はその文字を見つめている。
松乃
松乃
何見ているの?
将吉郎
将吉郎
いやあ…先生の字って綺麗だな…と
松乃
松乃
見てても何も出ないわよ
将吉郎
将吉郎
どうです?何か思い浮かびやしたか?
松乃
松乃
そうねえ…
松乃は言葉を区切り、しばらく考え込んだ。
松乃
松乃
やはり、恋仲になっている人たちが許せないのかと
将吉郎
将吉郎
そうでやんすか…
松乃
松乃
ということがあったのよ
お鷹
お鷹
へえ…だいぶ分かってきたねえ
お桃
お桃
松乃さんすごい!
松乃
松乃
へヘ…それほどでもないわよ
将吉郎
将吉郎
先生、顔に出てます
松乃
松乃
あらそう?
お鷹
お鷹
ともかく、情報提供ありがとうね
お鷹
お鷹
よかったら、泊まっていってもいいよ
お桃
お桃
布団と座敷ならあるから、ゆっくりしていったらいいわ
松乃
松乃
いや…大丈夫よ
お鷹
お鷹
いやでも…もうこんなに暗くなったし
お桃
お桃
松乃さんだって狙われないとは限らないわ
松乃
松乃
将吉郎、提灯は持ってきたね
将吉郎
将吉郎
へい、用意してありやす
将吉郎は提灯の中の蝋燭に火をつけ、それを持った。扉を開け、先導する。
松乃
松乃
じゃあ、おやすみね
お鷹
お鷹
おやすみ
そう言いながらもお鷹は、何か胸騒ぎがするのを感じていた。
口を開こうとすると、すでに松乃は垣根の外に出て、道を歩いていた。
お桃
お桃
ち、ちょっと待って松乃さん
お桃
お桃
もう見えなくなっちゃった…
ここからでは、声が届くのは絶望的だろう。
松乃
松乃
そろそろつくね。将吉郎、もう蝋燭を消していいよ
松乃は節約のため、屋敷が近づいてきたら提灯の蝋燭を消すようにしている。
将吉郎は言われた通り、蝋燭の火を吹き消した。
と、刹那せつなの後、二人組の男が無言で襲いかかってきた。
口を塞がれそうになった松乃はとっさに男の腕を捻り上げ、地面に磔にした。
将吉郎も松乃と同じようにした。
男二人は、手に筒のような物を持っていた。
将吉郎
将吉郎
ふん。あっしと先生に何かしようなんて、百年早い
松乃
松乃
ちょっと大人しくしててもらうよ
松乃は男たちの鳩尾みぞおちに拳を叩き込んだ。
男は、白目をむいて倒れた。
松乃
松乃
将吉郎、奉行所うちで調べるよ
将吉郎
将吉郎
将吉郎は縄を取り出し、男たちを後ろ手に縛って担ぎ込んだ。

プリ小説オーディオドラマ