第10話

朱い橋
1
2024/06/29 11:00
お鷹はかまどの火を見つめていた。
お桃はすでに寝静まっている。
団子が蒸し上がると、お鷹は一本手に取り、口に入れた。
お鷹
お鷹
おいしい
寝ているお桃のじゃまにならないよう、小さくつぶやく。
お鷹
お鷹
(確か…才谷屋だっけか)
その日はかまどの火を消し、眠った。
次の日。お鷹が目を覚ますと、お桃はすでに起きて、朝ごはんを作っていた。
お桃
お桃
…私、ちょっと今日、外に出てみる
お鷹
お鷹
なんでだい?
お桃
お桃
伊勢屋で誰かが言ってたの、昨日橋の上で斬り殺された人がいるって
お鷹
お鷹
…仕方ない。気をつけるんだよ
お鷹
お鷹
(水の中で死ぬやつがいると思ったら、今度は橋の上か)
お桃
お桃
まあ、というわけで行ってみるから
お桃は外に出て、まだ少し冷たい朝の空気を吸い込んだ。
お桃
お桃
えっと…たしかここだったはず
昨日は人が多すぎて、役人も入る隙がなかったが、今日は橋の上は誰もいなかった。
奉行所が詳しく調べるため、人払いをしたらしい。
松乃
松乃
…こらこら、ここは子供が入っていい場所じゃありませんよ
将吉郎
将吉郎
こりゃひでえなあ。ねえ先生
橋の欄干らんかんは、べったりと血がついて、赤く染まっていた。
お桃
お桃
いいよ、あたしはそんなに気にしていないですから
松乃
松乃
あの、そういう問題じゃなくてね?
お桃
お桃
ん?
松乃
松乃
ちょっとあなた!
将吉郎
将吉郎
行っちゃいやしたね
お桃
お桃
…あなたはどうしたの?
魂
仲間に…殺られた…
お桃
お桃
仲間?もしかして…
魂
そうだ。川に人を突き落とした人たちだ
お桃
お桃
名前とか、言える?
魂
言えない…
お桃
お桃
(それもそうか)
松乃
松乃
将吉郎
将吉郎
将吉郎
へい
松乃
松乃
この仏の身元を調べて
将吉郎
将吉郎
じゃあ一旦屋敷に戻りやしょう
松乃
松乃
そうだね。資料とかもたくさんあるし
将吉郎
将吉郎
あっしが思うには…
松乃
松乃
この人はやくざだと
将吉郎
将吉郎
そう思いやしたね。入れ墨が入ってるし
お桃
お桃
姉さん、ただいまー
お鷹
お鷹
おう!おかえり!
お鷹
お鷹
どうだった?
お桃
お桃
…調べてみたら、川に人を突き落としていた人たちの仲間だったみたい
お鷹
お鷹
ほう
お鷹
お鷹
ということは、話が漏れることを恐れて殺られたのかもしれないな
お桃
お桃
たぶんそう
将吉郎
将吉郎
身元がわかりやしたよ!
松乃
松乃
誰なの?
将吉郎
将吉郎
松虎組の二葉葵っていうやつみたいです
松乃
松乃
松虎組…初牡丹もやられていたし、やっぱり関わりがあるのね
松乃
松乃
ちょっとお鷹の厄介になろうと思う
将吉郎
将吉郎
じゃああっしは屋敷の留守番してますね
松乃
松乃
ええ、お願い
松乃
松乃
お鷹ー、来たわよ
お鷹
お鷹
おう
お鷹
お鷹
あ、この子が昨日言ってた新しい家族だ
お桃
お桃
えっ!?
松乃
松乃
え?
お鷹
お鷹
ほらお桃、挨拶しなさい
お桃
お桃
えっと…あたしはお桃です
松乃
松乃
この子…さっきあったの
松乃
松乃
追い返したけど、何か一人でつぶやいてた
お鷹
お鷹
あー、話をしてたんだな
お桃
お桃
で…えっと…お姉さんは?
松乃
松乃
あ、松乃です。お鷹姉さんのお友達よ
お鷹
お鷹
で、話したいことって?
松乃
松乃
あの人…松虎組の人だったの
お鷹
お鷹
へえ、初牡丹のときもそうだったね
お桃
お桃
何か関係があるのかしら
お鷹
お鷹
まあでも、協力してくれて助かったよ

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