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第10話

不安、と、寂しさ
───撮影が夕方で終わった今日。

会いたくて会いたくて仕方なかった、大好きな来栖さんと会えることになった。
栞那
栞那
かおるちゃん、
メイク崩れてないかな?
小林 かおる
小林 かおる
大丈夫よ。
撮影終わりの疲れを感じさせない
パーフェクトな可愛さだから
栞那
栞那
ほんと?良かった。
ありがと、かおるちゃん
小林 かおる
小林 かおる
やーっと会えるのね〜
1ヶ月以上会えてないんでしょ?
久しぶりにたっくさん甘えなね!
栞那
栞那
……そうなの!
久しぶりだから少し緊張するけど
めいっぱい甘えようと思う
来栖さんの仕事が終わるのが17時半。
18時には現場近くまで車で迎えに来てくれることになっている。

あと少しで会えるのに、その少しがとても長く感じて、昨日の夜はまるでクリスマス前夜みたいな気分だった。
***


「道が混んでて遅くなった」と言いながら来栖さんが現れたのは17時50分を少しすぎた頃。

スキャンダルにならないようにと、来栖さんとの待ち合わせ場所までかおるちゃんは同行してくれて、最高なアシストで私を来栖さんに引き渡してくれた。

来栖さんと合流するのは18時を過ぎるかもしれないと思っていた私にとっては、”遅い”どころか会えるまでの時間が短くなって得した気分だった。
栞那
栞那
わぁ、来栖さんの部屋
すっごい久しぶりに感じる……
そのまま来栖さんのマンションまでやって来た。玄関を入った瞬間、来栖さんの匂いに包まれる。

久しぶりに来ても、何ひとつ変わらないシンプルな部屋は来栖さんらしくて安心感すら覚える。
来栖
来栖
久しぶりに感じるんじゃなくて
現に久しぶりなんだろ
栞那
栞那
そ、それはそうだけど!
言いながら、着替えのために寝室へと向かってしまった来栖さんは、久しぶりに会えたって言うのに、いたっていつも通りで……。

あれ?会いたかったのも、寂しかったのも、久しぶりに会えて嬉しく思ってるのも……もしかして、私だけなのかな?

もしそうだとしたら、私と来栖さん間には温度差があるってことで。そんなの……悲しすぎる。
***

来栖さんがササッと手際よく作ってくれたオムライスを頬張りながら、最近のことを報告し合う。

とろふわの卵に包まれたケチャップライスは、ほんのりバターの風味と野菜の旨味が感じられて、私が作るものより数倍美味しい。

……もっと、料理の勉強もしないと。
来栖
来栖
なんだよ、難しい顔して
栞那
栞那
なんか、彼女よりも女子力が
高い彼氏って……悔しいなって
来栖
来栖
ハッ……なんだそれ
栞那
栞那
でも、そうだよね。
来栖さん一人暮らしだし……
家事も一通り出来ちゃうよね
来栖
来栖
まぁ。
掃除、洗濯、風呂洗い、
料理、食器洗い、ゴミ捨て
栞那
栞那
生活力に溢れてる……
来栖
来栖
当たり前だろ。
俺はもう社会人だからな
そう言って勝ち誇ったように笑う来栖さんに、ムッとするのはやはり私がお子ちゃまだからなのか。

……ふと、忘れそうになる。
私がまだ高校生だということ、それから来栖さんが社会人でおまけに警察官なのだということも。
栞那
栞那
私だってすぐに追いつくし!
それに、家事もこれから覚えて、
いつか……
来栖
来栖
いつか?
来栖さんのお嫁さんになりたい。

その一言は、恥ずかしさからか、それとも自信のなさがそうさせるのか、喉につかえて言葉に出来なかった。
栞那
栞那
来栖さんよりも美味しい料理
作れるようになるんだから!
来栖
来栖
……なーんだ。
嫁に来てくれんのかと思ったのに
栞那
栞那
……えっ!?
───~♩♩

来栖さんの言葉に、目を見開く。

咄嗟に聞き返したところで、テーブルの上に乗っていた来栖さんのスマホが着信を知らせた。

「悪ぃ」と言いながらスマホに手を伸ばし、ディスプレイを見て少し眉間にシワを作った来栖さんは、そのまま応答ボタンをスライドさせる。
来栖
来栖
もしもし?
中野 紗彩
中野 紗彩
あ、もしもし!
来栖先輩?
栞那
栞那
……!?
電話の向こうから聞こえてきたのは、間違えようもない女の人の声。甘ったるい話し方になぜか少しヒヤッとする。

とは言え、「来栖先輩」という言葉に、職場の後輩かもしれない……と、瞬時に自分を落ち着かせる。

でも、今まで女性がいるなんて聞いたことないような気がして正直、電話の内容に気が気じゃない。
来栖
来栖
何かあったのか?
思いのほか優しい声で話す来栖さんに、モヤモヤしつつ、電話の行方を静かに見守ることしかできない私。
中野 紗彩
中野 紗彩
今、家ですか?
来栖
来栖
……あぁ
中野 紗彩
中野 紗彩
今から、会えません?
栞那
栞那
……っ、
まるで、はじめはポツポツと降り始めた雨が、突然ザーッと土砂降りに変わった時みたいに。

私の心の中に大きな大きな水たまりを作っていく。

電話の向こうの女性は、明らかに来栖さんに好意がある。

それに勘づいてしまった今、仮に電話が終わったあとに、来栖さんから『心配するな』と言ってもらえたとしてもきっと私の不安は拭えない。