第77話

職場体験Ⅻ
211
2024/03/17 15:00



















____________________
__________
___




















   反咲「おはようあなた、随分早いね」







   『あ、会長』











数日前、職場体験初日の早朝








同級生より一足先に早く集合場所へ着いていたあなたは反咲の姿に気付くと、操作していたスマートフォンをショルダーバッグへ素早く突っ込みぺこりと軽い会釈をした













   反咲「まだ時間まで結構あるよ。そんなに急がなくても良かっただろうに」







   『弟と出発が被りたくなかったんですよ。あんまり言及されたくないんで』







   反咲「…なるほどね。あなたの行き先は確か…東京だっけ」







   『はい。保須市の方まで』










あなたがそう答えると、尋ねた反咲の顔が僅かに歪んだ










   反咲「…ヒーロー殺しが出現した所か……よりによって…」







   『考え過ぎですよ会長、らしくない。なにも保須市にだけ現れる、ってわけじゃないんだから。』







   反咲「……やっぱり私もついてi」



   『生徒会長が何言ってんですか。今日も普通に授業も仕事もあるでしょ。』











そんな事の為にほっぽらんで下さい、そう苦笑い顔で言う彼女とは反対、ふたつ上の先輩は苦虫を噛み潰したような渋い顔を崩さなかった










   反咲「焦凍君の職場体験先とも、そう遠くはないだろう。」







   『……ゆーて近くもないでしょ。流石に飛躍し過ぎだよ、会長が危惧してるようなコトは起こらないって』









   反咲「…体育祭の時の件もあって、こっちの信頼はまだ回復していないからね。そう思うのは仕方ないだろう」











   『……それ言われたら何も言えないなあ……』









   反咲「普段のあなたならやるはずもない事なのに、急に参加するなんて言い出すんだもの、君の行動が読めない不安定な時に何かあったらどうしようもできないからね」









鋭い指摘に、言い返す事もせず困ったように笑う






そんなあなたをじっと見つめた彼女が僅かに口を開きかけたその時、校門の方から雄英生徒の笑い声が聞こえてきた





手荷物を見るに、あなたと同行する同級生等だ。あなたが左手首の腕時計を確認すると集合時間の10分前だった







唇がようやく離れた程度まで開いていた口を名残惜しそうに閉じると、「そろそろ私は行くよ」と一言落とし背を向けた











   反咲「…………あなた、」







   『もう、今度はなに?』








跡を濁しまくりの鳥に苦笑しつつ、返答を待つ






反咲は一度背けた前身をもう一度翻し、その掌で一本一本が工芸品のような白髪にそっと手を置いた








   反咲「あんまり自分を見失わないように。体を労ってあげることを忘れずにね」












黄金色の瞳を揺らし、一直線にあなたのグレーとターコイズの瞳孔へ視線を注ぐ







あなたが何かを言う前に、それじゃあ行ってらっしゃい、と一言吐き捨て今度こそ校舎の中へ入っていってしまった










   『……出来ないって言ってるじゃん。



…………まあ、可能な限りは、気を付けます』



















____________________
__________
___
























真っ暗で塗りたくられていた路地裏が、瞬きより早く昼のような明るさに飲み込まれた






そこらかしこで炎がパチパチと揺れるが、通常の太陽のような明るいオレンジ色ではない





まるで固まった血のような、黒を含んだ赤い、どろどろと淀んだ炎













   ステイン「う"っ………あ"……ガッ……!!」











その常軌を逸する炎に全身を包まれたヒーロー殺しは、肉食獣にでもかぶりつかれたような痛みに叫び声を上げる













  ステイン「(もう一つの、個性だと…………ッ!?まさか…有り得ない)」
















全身の皮膚がぐじゅぐじゅと音を立てて少しずつ爛れていく






火炙りの苦痛に精神までをも犯されつつも、本能はこの状況の打開策を探すのに必死でくたくたと不規則なリズムで動き回る















ふと、眼前を遮っていた轟炎が揺らいだ






その僅かな炎の隙間から、路地裏の中と外を隔てていた氷壁が溶けかかった姿を背景に、半身に炎を背負って宙を舞う白髪の少女をその目に捉える



















躱す、という選択肢はその脳には浮かばなかった













平衡感覚をも鈍らせる業火が、それをさせまいと体の末端までびっしりと覆い尽くして放さなかったから
















   『あんまり早くこれを使うのも、他人の目に触れちゃうから出来なかったんだよね。中々立ち去ってくれないから苦労したよ』







   ステイン「……ッ、ぐぁ…!」
















人型に燃え盛る深紅の炎へ、彼女は大きく足を振り上げた














   『じゃあね、ヒーロー殺しステイン。





もう未来永劫、顔を見せてくんじゃねえ』








ガンッ!!



















擦り傷だらけの彼女の脚が、ヒーロー殺しの鳩尾辺りへ貫通する勢いで食い込んだ








人間の生死を握るそこに強い衝撃をくらった彼は、腹から迫り上がった体液を掠れ声と共に吐く













高く飛び散ったそれらは、誰かに認識される暇もなくジュワッという音と共に蒸発した






間髪入れずに一切の躊躇いなく、自分の身長を遥かに超える敵の胸倉を掴んで乾いたコンクリートの壁へ叩きつける
















さながら興奮気味に拍手をする観客の如く、パチパチと勢いを絶やさず燃え続ける業火の音をその衝撃音が掻き消した























"自分を見失わないように"


















出発前、祈るように告げられたその言葉が不意に脳をよぎった










   『…………ほらね、やっぱり無理だった








ぎちぎちと握り締めていたヒーロー殺しの衣からそっと手を離し、ぐったりと力無く指が折り曲げられたそれを見つめる







これといった意味もない視線を送るその瞳は、まだ滾る怒りの奥に微かな怯懦の影を宿していた













next→


_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
























もうやだ……また大遅刻投稿…………まっじで申し訳ない…………(泣)











毎度毎度多大なるご迷惑をお掛けしてますことお許しください…💦












ついでに需要皆無の近況報告













テストの個票返却されました〜












学年末テスト、無事にクラス2位を死守できたぜプチョヘンザッッ(使い時絶対違う)








ぷらすあるふぁで1月の校内模試も約350人中4位を獲得しましたぜプチョh(以下略)








おべんきょは中々に良い波に乗って小説更新は現在進行形で奈落へ落下中でございますねサイテー









ここまで来てようやく職場体験編のゴールが見えてきた…!ラストスパートよ負けないで走り抜けるわッッ







次回、ラストスパートと意気込んだ瞬間から給水所で止まる鮎はどう調理いたしましょう




他数本立てです








というわけで鮎は最後の晩餐にBLを摂取してきます。それでは皆さん良い夜を〜👋(意味深)


プリ小説オーディオドラマ