第25話

( 25 )
301
2020/11/27 00:33
宮 治
宮 治
北さんすみません…
北 信介
北 信介
ええよ…
春高予選の前、私が兄と部活を見に行った時。
主力である治くんが捻挫をした。
あと3日しかない。間に合わない。
早くても2週間はかかる。

今回は治くん抜きで予選に挑むそうだ。

__________________

主力が抜けた稲荷崎は少し危うい試合もあったが無事に予選で優勝し、春高出場が決まった。

12月ごろから月バレで特集が始まった。
そこには稲荷崎の記事もあった。

"春高優勝候補""最強の挑戦者"と書かれていた。
インハイ2位なので、今回はシード権を獲得し、2日目からの参加となる。

____________________

春高2日目。彼らの試合が始まる。
相手は宮城県代表、烏野高校。

最近は全然聞いてなかったけど
久しぶりの出場だそうだ。
北 信介
北 信介
愛生
西山 愛生
西山 愛生
…頑張って!
私は彼の背中を押して
みんなの元に行くのを見守った。
(みんななら、絶対勝てるから!)

____________________

公式練習が始まった。
スパイクを見ていると
10番がすごく目立っていた。

9番と10番の変人速攻
あれは誰にも真似できないものだと感じた。
(なんやあの速攻…)

そういやあの9番について
侑くんに教えてもらった。

同じユース候補の
影山 飛雄(かげやま とびお)くんという。
まだ1年生なのに凄いなと感じた。

でも、みんななら勝てる。
私は、そう信じていた。

____________________

そして始まった彼らの戦い。

今回も信介くんはベンチスタートだった。
悠真も怪我をして万全な状態ではなかったので
ベンチにいた。
1セット目を落とし
少し空気がピリついていた。

ブロックにかかったり
サーブミスしたり
いらない失点が少し増えてきた2セット目終盤。

選手交代の笛が鳴る。

その選手を見ると…
西山 愛生
西山 愛生
…信介くん…!
彼は1年の時よりも
逞しく見えた。

自信で満ち溢れているようだった。
北 信介
北 信介
…ちゃんとやんねん
ちゃんと試合で活躍できる
大きな活躍はないかもしれないけど
ちゃんと繋ぐ
自分はしくじらない

そういう自信だと思う。
信介くんが入ってから稲荷崎も安定し
宮兄弟やメンバー全員が安心して
プレーできている気がする。


西山 愛生
西山 愛生
すごい…
西山 春馬
西山 春馬
信介、めっちゃ成長したな
西山 愛生
西山 愛生
うん…
わたしが彼らを見ない間に
こんだけ成長していることが
とても嬉しくて感動した。
____________________

試合は、1-2で負けてしまった。
気づけば試合が終わっていた。
わたしはそれくらいこの試合に見入ってたのだ。
西山 愛生
西山 愛生
…終わった……んやな…
西山 春馬
西山 春馬
そう…やで…
とてもいい試合だった。
春高は毎年何が起こるかわからない。
下克上だって起こり得る

6人で強い方が
6人でボールを落とさない方が
強い、そして…勝つんだ。

稲荷崎の応援団と一緒に彼らに拍手を送った。
礼をする彼らの背中は
前よりもかっこよくて逞しかった。
__________________
試合後の彼らに一声かけたくて
彼らのところに行くと…
北 信介
北 信介
「どや俺の仲間すごいやろ」って
もっと言いたかったわ
信介くんはそれを笑顔で言っていた。

その笑顔には嘘はなく、
本当にこの仲間たちを誇らしく思っていたんだと感じた。

3年になってもベンチで
なかなか試合に出れなかったけど
信介くんは部員一人一人をちゃんと見てた。

だからこの言葉が言えるんだと感じた。

いつもは無表情な信介くんが
最後に見せた笑顔は、眩しくて儚くて
涙が止まらなかった。

3年生も2年生も1年生も全員
信介くんの言葉に涙していた。

__________________

ミーティングが終わり
わたしは信介の元は向かった。
早く彼に会いたくて走って行った。
西山 愛生
西山 愛生
信介くん…っ!
北 信介
北 信介
愛生、走って大丈夫なんか?
西山 愛生
西山 愛生
うん、早く会いたくて…
わたしがそういうと彼は微笑んでくれた。
少しだけ、涙が目を浮かんでいる気がした。
私は彼に抱きついた
北 信介
北 信介
どうしたんや?
西山 愛生
西山 愛生
……っお、つかれ…さま…っ
わたしが泣くところじゃないのに
泣いてしまった。
北 信介
北 信介
愛生?
西山 愛生
西山 愛生
…めっちゃ…、かっっっこよかったで…!
わたしのその言葉に聞いた時、
信介くんの「ありがとう」の声が震えていた。
わたしが離れようとすると
もっと強く抱きしめて
北 信介
北 信介
…ごめんな…っ
と彼は言った。
西山 愛生
西山 愛生
なんで、謝るん?
北 信介
北 信介
…日本一、なれへんかった…
西山 愛生
西山 愛生
謝らんといてや
北 信介
北 信介
愛生を日本一のマネージャーにしたかってん…
西山 愛生
西山 愛生
え…
北 信介
北 信介
春馬さんと…約束してん…
西山 愛生
西山 愛生
信介くん
私は彼から少し離れて
彼の手を握って、彼の目を見て話した。
西山 愛生
西山 愛生
私にとって稲荷崎は
世界で1番のチームやし
信介くんは世界で1番のキャプテンやで
北 信介
北 信介
…でも…
西山 愛生
西山 愛生
日本一になるんもええけど
信介くんのそばに居たいから
ならんくてよかったかも?
北 信介
北 信介
なんで?
西山 愛生
西山 愛生
そんなん、他の子に取られるかもやん?
私は付き合ってるわけじゃないし…
私がそういうと
彼は私をグッと引き寄せて耳元で
北 信介
北 信介
何言うてんねん
俺には愛生しかおらんのやけど…
と言った。
こういうところ、本当にずるい。
西山 愛生
西山 愛生
…信介くん、大好きやで
北 信介
北 信介
俺もやで
西山 愛生
西山 愛生
もう一回、私と付き合ってくれますか?
私がそう聞くと
大事そうに頭を撫でながら
北 信介
北 信介
お願いします
と丁寧に返してくれた。

プリ小説オーディオドラマ