セオドールもこちらを探していたようで、
教室にたどり着くまでに出会うことができた。
逃げる?
でも。
ギャー!
な、なんつー罪を負わせてるのよ!
実の娘に!……いや、もう娘じゃないんだっけ。
二人はなぜか私を頼むだの頼まれるだの言った後。
セオドールは私の手を引いて裏門へと走り出す。
ジルエスタの声を背中で受け止めスピードを上げる。
速く速く速く。
私とセオドールは夢中で走った。
風を切って障害物を避け、地面を蹴って。
遠くへ。
✳ ✳ ✳
馬車に揺られてしばらくすると、
王都とは一変した港町へと到着した。
もう空も暗くなりかけている。
馬車での長時間の移動で体は疲労していた。
ジルエスタが屋敷で出迎えてくれた。
彼の馬車の馬は立派だし、乗り継いでなければすぐにつくのだろう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!