持っていた写真を暖炉に投げた。
パチパチという音がして、まもなく紙切れは燃え尽きる。
家族写真だ。
娘と、自分と、今は亡き愛しい妻の。
国を統べる吸血鬼の王の目には、もう誰も映ってはいなかった。
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王家からの勘当。
おかしい。今朝だって「行ってきます」と言ったら「気を付けて行ってらっしゃい」って笑顔で…というか鼻の下伸ばして言ってたのにさ。
そんなことはないと思うけど……
そもそもそんなに話さないけど
家族仲は良いと思うよ?
そのくらいしか思い付かないんだよ!
うん。
コクリと頷くが…どうも納得できない。
どうしていきなり勘当なんてしてしょうもない罪をなすりつけたのよ!
今度会ったら問い詰めてやる!
私は鼻息荒く決意を固めた。
──なんとなく。
お父様……国王陛下とは。
もう、会えないような、気がした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!