第26話

出発
218
2020/08/30 04:22
金色の光に包まれたかと思うと、セオドールはあの怪我もなく、牙の尖った吸血鬼になっていた。
私たちはしばらくまた見つめあい、それからどちらともなく口づける。

ジルエスタ
おーい、お二人さん。
俺を忘れるな
あっ!

急いで唇を離して咳払いをする。
ニア
ゴホンゴホン…ありがとう、ジルエスタ。
幸せになるわ
ジルエスタ
この屋敷に住むか?
セオドール
…それは嫌だ
ニア
…セオドールさえ良ければ、だけど。
世界を見て回りたいと思うの。
私は何も知らなくて助けられてばかりだったから
色んなことを知りたいのだ。
セオドール
勿論構わないよ。
僕は姫様に着いていくからね
…私ってすごい幸せ者よね。
世界を旅して…できれば、子供も作って。
いつか、素敵な場所で家を建てて暮らしたい。
きっと、すごく幸せだと思う。


どんなに辛いことがあっても、セオドールさえいれば。
ジルエスタ
いつ発つんだ?
ニア
今すぐに。
あまり迷惑はかけられないわ。
騎士団が追ってくるかもしれないし
ジルエスタ
迷惑じゃないんだけどな…金はどうする?
貸そうか?
セオドール
昨日陛下に給料をいただいた。
これでもかなりもらってる方だし一月は暮らせるよ
ジルエスタ
そうか…じゃあ、もうお別れだな
少しだけしんみりとする。

ジルエスタは大事な友達だ。
今回のことだって相談してくれても良かったのにとはちょっと思うけど、
私のために色々やってくれたんだから。

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