レッスン場に着いたら、入口の所に車が止まってて、神ちゃんが誰かと話してた。
でっかい声であいさつしたら、全力で神ちゃんに止められた。
何事かと思って神ちゃんの指さす方を見ると、車の中でしげが眠ってた。
おでこには冷えピタシート。タオルケットにくるまれたしげ。
見たことのない、しげのしんどそうな顔。
急に顔を覗き込まれて顔を上げると、さっき神ちゃんと話してた人。
あ、しげのお母さんか。
自己紹介してお辞儀すると、しげのお母さんは「あ、望くんね!」と笑った。
お母さんは嬉しそうに話すけど、僕は笑えなかった。
僕は、
いつも明るくていつも笑顔のしげしか知らんから。
こんなしげ見たら不安になってまうねん。
後ろから声がして振り向くと、濱ちゃんと淳太君。その後ろから照史君と流星も。
みんながお母さんと話してる間、しげから目が離せなかった。
お母さんが車のドアを閉める前に、しげの手元に1枚の写真を置いた。
そう言って。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!