第6話

2つの笛
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2024/06/21 10:00
まず、何から話しましょうか、、、
私の過去からでしょうかね
私は昔、安房の洲崎というところで漁師をしていましてね
妻が1人の男の子を産んだんですよ
花奏 藍音
え?糠助おじ様って結婚してたの!?
糠助
えぇ、でも、、、亡くなりましたが
闇奏 亥来馬
そっか、、、その子供は?
闇奏 亥来馬
今何処にいるんだ?
糠助
それがですね、、、
妻が亡くなってからは、私は男手一つでその子を育ててました
しかし、当時の私は貧しくてですね
つい、漁が禁じられている区域で魚を取ってしまったんですよ
その後、役人さまに捕まってしまってね
追放の刑 つまり安房から出てけと言われました
花奏 藍音
それで、大塚村に?
糠助
いえ、それはまだ先です
まだ乳飲み子だったその子を連れてのですからね
その子は泣くし、私は食べる物が無い
どうしようかと思いましてね
糠助
2人で身投げしようとしたんですよ
闇奏 亥来馬
身投げ!?
それで、川に飛び込もうとしたら武士の方に声をかけられましてね
私は武士の方にその子を託して別れました
糠助
武士の方は足利成氏様の家来だと
花奏 藍音
足利成氏様の、、、
糠助
はい、良い方に託せました、、、
闇奏 亥来馬
それで、大塚村にか
糠助
はい、村長さまに雇って貰えるように頼み込んで使用人になりました
その後、藍音様のご両親や藍音様と親しくなり
花奏 藍音
、、、
藍音様から亥来馬様のことを知りました
極寒の雪の中、家の前で倒れているのを見つけたと
母親はすでに息絶え、亥来馬様は虫の息だと
その後、藍音様から亥来馬様を託され、村長さまにご相談し養子として育てることになりました
闇奏 亥来馬
藍音、糠助、本当にありがとう
花奏 藍音
亥来馬、、、
糠助
それで、亥来馬様のことなんですが
糠助
渡したいものがあります
闇奏 亥来馬
渡したいもの?
糠助
藍音様、そこの引き出しにある箱を
花奏 藍音
箱?、、、これ?
糠助
それを、私に
花奏 藍音
?、、、はい、どうぞ
糠助
これは、亥来馬様のお母様が持っていらした品物です
闇奏 亥来馬
それは、、、笛!!
花奏 藍音
、、、!?
糠助
知っておられますか?
闇奏 亥来馬
あぁ、俺が生まれた時に闇奏家の屋敷にこつぜんと現れた笛だ
闇奏 亥来馬
以来、その笛は俺の御守りとされたのだが、そうか、糠助が持っていたのか
糠助
はい、あんまりにも立派な笛なので、村長さまに見つかったらどうなるかと思い
闇奏 亥来馬
そうか、ありがとうな、糠助
花奏 藍音
ねぇ、亥来馬、糠助おじ様
闇奏 亥来馬
ん?どうした?
糠助
どうしました?藍音様
花奏 藍音
それ、俺も持ってる、、、
闇奏 亥来馬
え?
花奏 藍音
ほら、、、これ!
藍音が取り出した笛は亥来馬の笛と同じ笛だった
藍音の笛は、淡い桃色に花の模様が彫られた笛
亥来馬の笛は、紫がかった黒に月が彫られた笛
形も、重さも、何もかも一緒
糠助
なんと!
闇奏 亥来馬
まったく同じ笛、、、
花奏 藍音
これ、父様から渡された物でね
花奏 藍音
俺が生まれる前に、母様が「女神様から授かりました」ってもってきたらしい
闇奏 亥来馬
女神様?
花奏 藍音
うん、母様がね「子供を授かりますように」って毎日お参りしてたんだって
花奏 藍音
そしたら、女神様が現れてこの笛を授けてくれたって
花奏 藍音
その後、俺が生まれた
闇奏 亥来馬
そうだったんだ、、、
闇奏 亥来馬
、、、あれ?なんか文字が彫られてる
花奏 藍音
え?
闇奏 亥来馬
ほらっ!俺のには「X」
花奏 藍音
俺は、、、「A」
花奏 藍音
なんて読むの?
闇奏 亥来馬
さぁ?
糠助
そうですか、、、
糠助
亥来馬様だけでなく、藍音様もですか
花奏 藍音
どうしたの?糠助おじ様
糠助
亥来馬様、藍音様
糠助
お願いがあります
闇奏 亥来馬
なんだ?
糠助
私の一生の願いを叶えてください

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