side あなた
相澤先生の言葉に、こくん、と頷き、肯定の意を示した。
数秒の間。
何か、おかしなことを言っただろうか。
顎に手を当てて思案するが、全く思いつかない。
うんうん、と唸っていると、相澤先生が、だ、そうだ。と締めくくった。
ほっとした気持ち反面、疑問符反面。
まぁ、どちらにせよ、 どうでもいい か。
窓際の一番後ろの席を使ってくれ、と伝えたれ、さっさと指定された席に着いた。
少し、みんなの視線が痛いのは気の所為だろうか。
side 緑谷
今日はいつも以上に朝から騒がしかった。
窓際の一番後ろに新しい席が置かれていて、転入生か、なんだ、と大騒ぎである。
無論、僕もとても気になった。
どんな個性の人に出会えるんだろう、と。
そのうち、相澤先生が教室に入ってきて、しん、とクラスが静まり返る。
そう言って扉の方を向くと誰かを呼んだ。
数秒も経たないうちに出てきたその人。
その刹那、時間が止まったように思えた。
さらり、と揺れる絹のような真っ白い髪。
雪のように白い肌。
完璧と言える顔立ち。
どこか遠くを見つめているような淡く、深い水色の瞳。
全てが完璧だった。
「美人」という言葉では収まりきらないような、そんな女性。
普段おちゃらけている上鳴や峰田くんや、そんな事を1ミリたりとも気にしないであろう、かっちゃんでさえ息を飲んでその美貌を見詰めている。
誰も、声を発することは出来なかった。
発することは許されない、とさえ思った。
そして、この場にいる全員が思ったであろう。
この人を、もっと知りたい、と。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。