あなた『戻りました。』

トレーニングフィールドに戻り、待っていた五十嵐に声をかける。

あなた『五十嵐さん準備いいですか?』

五十嵐さん「おう!」

あなた『どーぞ。』

センターラインに立った五十嵐はすぐさまボールを蹴り始める。

五十嵐さん「うっし」

五十嵐がDFに着く私を抜こうとしたところで私は左足でボールを弾いた。

あなた『遅いですよ。手抜いてます?』

自信の籠った声を出してたから抜いたと思ったんだろう。

あなた『もう一本どうぞ。』

五十嵐さん「……怪我しても俺責任とらねぇからな…!」

あなた『他人の心配してる場合ですか?』

私はそう言いながら凝りずに同じ手を使ってくる五十嵐を封じ込める。

五十嵐さん「な"…」

意味がわからない、とでも言いたげな表情を見せる五十嵐。…最下位はこの程度の実力なのか。

ずっとGKの前を独占してる訳にもいかないので2本で終わりにする。

五十嵐さん「お前マネージャーだよな…?」

汗を拭いながら変な質問をしてくる五十嵐に首を傾げる。

あなた『…?、じゃあ私をなんだと思ってるんですか…ちゃんとマネージャーですよ。』

五十嵐さん「テクがマネの域超えてんだよ…」

あなた『…昔少しやってたんで。その名残りですね。』

あなた『もう1本行きます?』

五十嵐さん「いや、少し休憩…」

そう言うと、ドリンクの方へフラフラと歩いて行ってしまった。体力がないな…

國神さん「あなた、次俺とやろうぜ。」

あなた『…はい。』

國神さん「…俺の事覚えてるか?」

ボールを蹴り出した瞬間に質問が飛んでくる。

あなた『さぁ、どこかで会いました?』

フィールドの脇には休憩中の潔さんと蜂楽さんが居る。余計な事は聞かれたくない。

國神さん「なんでマネージャーやってんだよ。」

あなた『余計な事言ってると舌噛みますよ。』

國神さん「あー、じゃあ俺が勝ったら質問に応えろよっ」

会話をしながらも内側に切り込んでくる。

あなた『……』

國神「うっし、勝ち確定。」

シュートの構えをとった國神に、やられた、と思った。

あなた『っ…』

足の向きやボールの位置から適当にヤマを張って飛び込んだが、

あなた『ﾁｯ…』

ボールは私のつま先を掠めて、ゴールネットの中へ。

國神さん「おっし…!」

すっごー…筋肉ダルマ…

國神さん「ほら、俺が勝ったから質問に答えろよ。」

あなた『………
































…他人のフリしてくんない? "錬介"。』

幸い声のボリュームを落とした私達の会話を聞いてる人間は居ない。

私は知り合いがいないと思ってここに来たのに、これじゃ本末転倒だ。

錬介「なんでだよ。いとこだろ。」

あなた『いや、もう他人でしょ。ここの人達に余計なこと言わないで。』

私は錬介に1歩近づき、見上げてそう言った。

錬介「……」

あなた『おい、返事は』

錬介「…悪ぃもう喋っちった。」

あなた『は? 誰に?』

錬介「千切。」

あなた『……めんどくさ…』

錬介「てか俺の質問もうひとつ残ってるんだけど。」

錬介「お前、サッカーは?」

あなた『辞めた。』

錬介「は！？」

錬介「なんでだよ! お前あんなに好きだっただr…」

あなた『声がでかい、バカ。』

手のひらで錬介の口を抑える。

錬介「じゃあなんで辞めたんだ。」

声のボリュームを抑えて話し続ける錬介に適当な返事を返す。

あなた『……飽きた。』

錬介「嘘つけ」

あなた『嘘じゃないよ、飽きたから辞めたの。』

あなた『満足した? じゃ、あまり私に関わらないで、私の事を人に話さないで。』

錬介「………」

あなた『お願いしますね。國神さん（・    ・    ・    ・）』

錬介「お前がその呼び方辞めてくれたらな。」

あなた『辞めたら関係がバレるじゃないですか。』

錬介「ま、俺はお前が本当の事話すまでその"お願い"を聞く気はねぇけどな。」

錬介「あんなに好きだっただろ、サッカー。お前が飽きるはずねぇ。」

あぁ、めんどくさいな。

相変わらず嫌になるほど真っ直ぐで、無駄に正義感の強いヒーローだこと。

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