第71話
だい。ごじゅうさんわ
「出会いには必ず別れがある」
こんな言葉これっぽっちも信じていなかったのに。彼らとの別れは突然あった。
ムギュッと私の体に腕を回し抱きついてくるツリメ。
私は慣れた口で彼に答える。
顔は見えないけれど、なんとなく事情がありそうだと感じた。
何か困っていると思ったのに、彼の言葉の妙な明るさに変に鼻についたが気のせいか。
私はう〜んと首をかしげる。どうも、いつもとは何かが違うみたい。
また妙に明るくする。何かおかしいよね。
いつもの彼とは全く違う。まるで、「彼」が「彼」ではないみたいだ。
私が無駄に考えすぎてるだけなのか……それとも本当に彼はおかしいのか…。
私が返事に渋っていると、彼は駄々をこね始めた。
最後の言葉の強さに体が反応して、ビクッと動く。
普段の彼の言葉の明るさとは全く違かったからだ。
いつの間に書かれに恐怖を抱くようになっていた。私が怖いと感じていても彼は御構い無し。
彼のおかしさに私はある一つの事実にたどり着いた。
あの人だったら自分の言うことが聞けない人間は切り捨て、自分の「モノ」にはとてつもない執着心の持ち主だ。
私がここにいるのだって知っている……。影山もそうだ。
あの人は手段を選ばない。私を取り戻すためには……。
そう決心した私は彼にこう告げた。
彼はとても喜んだ声を出したが、表情は違うのだろう。
私は、はぁ……と静かにため息を漏らす。
帰ったらお父様から罰を受けるだろう。影山から怒られるだろう。
でも、彼らと過ごした日々はとても楽しかった。人生で1番。
もう……私には……悔いはないよ。
彼の言う通りに私は手を伸ばす。すぐに、彼は私の手を握り立たせる。
彼は私に歩くスピードを合わせて歩く。
ふっと我ながらよくここまで逃げたと笑みをこぼす。
すると、ばったり、りょうに会ったみたい。
彼は私に便乗してりょうに伝える。
りょうが行きたそうだったのを彼は言葉で封じた。
やっぱり……おかしいよ。
私は素直に彼について行けばよかったのに。そうすれば彼らに何も危害を加えなかったのに。
私はどうしても、お父様に抗ってみたくなったのかも。あの家から出ないければこんなこと思わなかった。
私はりょうの服をそっと引っ張った。
私はこれだけ伝えると、自分なりの笑顔を彼に見せその家を出た。
「りょうなら気づいてくれる」そう信じてーーーーーーーーーーーーー。