第16話

第16話 焼き付いた記憶
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2026/01/26 09:00 更新
ひなにい
ねぇ、それほんとに持っていくの?
お父さん
念の為だよ念の為
ひなにい
その念の為で荷物が増えてるんだけど、、

俺は玄関に並べられた4つのスーツケースを呆れながら見る。

父さんはまあまあと言いながら今もまだ荷物を増やし続けていた。

ふと母さんの方に目をやると母さんは何度も荷物を出しては中に入れを繰り返していた。
お母さん
充電器は持った?
ヒナ
持ったよー!!
お母さん
ほんとに?
ヒナ
持ってるってば!!

母さんはヒナの言葉を聞き「心配だわ」っと呟く。


結局、俺とヒナがどれだけ急かしても何度も何度も荷物整理をしていた為、少し遅れて出発した。


車に乗り込むとシートベルトの音が一斉に鳴る。
ヒナ
ようやく出発できる、、

ヒナがそう言うと父さんと母さんはごめんと言い反省していた。

父さんがエンジンをかけると少し遅れてラジオから懐かしい音楽が流れてくる。
お母さん
あ、この曲
ひなにい
昔よく流してくれてたよな
ヒナ
渋滞の時とかよく流しててくれてたよね
ひなにい
お前は毎回途中で寝てたけどな
お父さん
俺、昔からこの歌好きなんだよな〜

父さんはそういいながら歌い出す。

するとすぐさま文句や批判が飛んでくる。
お母さん
恥ずかしいからやめてくれる?
ひなにい
窓ちゃんと閉めとこ、、、
ヒナ
お父さん下手くそーw
お父さん
、、、父さんみんなが辛辣すぎて泣きそう

父さんのそんな言葉に父さん含めた全員が笑う。車内の空気は少しだけ温かくかくなった気がする。


市街地を抜けると景色はゆっくりと変わっていった。
お母さん
温泉着いたら何しようかしら
ひなにい
部屋で1回休む
ヒナ
えー!!すぐお風呂行こうよ〜!!
お父さん
ご飯何時からだっけな〜
ひなにい
父さんはすぐご飯のことを考えるんだから

そんなどうでもいい様な話を交わす。でもそんなどうでも言い話がとても心地良かった。


山道に入ると景色がゆっくりと変わっていく。

窓の外の縁が一気に濃くなり、空が近くなる。

少しだけ窓を開けるとひんやりした風が入り込んできた。
お母さん
空気いいわね
ヒナ
ちょっと眠たくなるね
お父さん
そうだなー
ひなにい
絶対寝るなよ

父さんは目の前の景色を少し切なそうに見ていた。

風が入り、車内の匂いが少し変わる。父さんはスピードを落とし、ハンドルを切った。
お父さん
この道、静かだな
お母さん
ほんとね、都会から離れたからかしら
お父さん
帰り道はどこ寄る?
ひなにい
何でもう帰りの話してるんだよ
お父さん
楽しかったら、帰りたくなくなるだろ

父さんのその言葉に誰かが「分かる」と小さく言った。


カーブが続き、ガードレールの向こうに木々が重なって見える。
ヒナ
下、結構深そう
お父さん
見ない方がいいぞ
お母さん
写真とる?
ひなにい
何で今なんだよ、、、おかしいだろ、、、

ラジオの音だけがゆっくり流れていた。

それは本当にただのドライブだと感じる程だった。




心地いい、、そう思えていた、、、




次のカーブを曲がった、そのとき。

ヘッドライトの先、道路脇の暗がりから、茶色い影が弾かれたように飛び出した。

一瞬、何か分からなかった。

次の瞬間、それがたぬきだと理解する。

丸い体が、迷うように一拍置いて、そのまま道路の中央へ出てくる。
お父さん
危ない!!!!

父さんの声と同時に、父さんが強くブレーキを踏み、ハンドルを切った。

タイヤが軋む音が、さっきまでの会話を切り裂く。

体が前に投げ出され、シートベルトが胸に食い込む。

視界が大きく揺れ、フロントガラスの向こうで、たぬきの赤い目が一瞬だけ見えた気がした。














次の瞬間、車はガードレールにぶつかり、そのまま宙に浮いた。


金属がきしむ音。


ガラスが割れる音。


空と木々が、何度も視界を横切る。


ほんの数分前まで、どうでもいい話をして、笑っていたはずの時間。


それが壊れる音だけが、やけに長く、耳に残っていた。






次に目を覚ますとそこは瓦礫の下だった。




一瞬で理解した。崖から落ちたのだと、、、


激痛が俺に走る

ひなにい
母さん、、、父さん、、、ヒナ、、、

俺が目を開き辺りを見渡すとそこには、



下半身と上半身がバラバラに離れている母さんと


顔半分が岩の下敷きになって虚ろな目をしている父さんがいた。

ひなにい
あ、、ぁ、、、ぁあ、、、!!!!!!!!


ひなにい
父さん!!!母さん!!!

俺はすぐさま体を起こし四つん這のまま父さんと母さんに駆け寄る。
ひなにい
あ、、あ、、、あぁああああ、、、、

先程まで笑いあって居た

温かかった空間は一瞬で壊れ果てた。
ヒナ
ルカ、、、に、、、ぃ、、
ひなにい
ヒナ!?

弱々しい声で俺の名前を呼ぶヒナの声が聞こえた。


俺は急いでヒナの方に向かう。

ヒナを見るとヒナの足は瓦礫の下敷きになっており、頭から血が流れていた。
ひなにい
ッ!!今どかしてやる!!

俺はヒナの瓦礫をどかそうとする。

ギシギシとなる腕なんて気にならなかった。


瓦礫をどかし、俺はヒナの上半身を軽く持ち上げる。


ヒナの呼吸は荒々しく弱々しい肩で息をしていた。目は今にも閉じそうだった。
ひなにい
待ってろ!!すぐに病院に連れて行ってやるから!!

俺はヒナをおんぶして山を大急ぎで降りる。


足がミシミシと悲鳴をあげる。

激しい痛みが俺を襲う。

ヒナ
ルカ、、に、、ぃ、、
ひなにい
大丈夫、、大丈夫だから!!

ヒナの呼吸はさっきより少なくて体が少しずつ冷たくなるのが感じる。
ヒナ
もう、、わた、、し、、ダメ、、、みたい、、、
ひなにい
そんなことない!!
ヒナ
わた、、し、、、ね、、ルカ、、、にいの、、、妹に、、、なれ、、、て、、、よかっ、、、た、、、

ヒナ
だから、、もう、、いい、、、んだ、、、よ、、

ヒナはそう言って俺の背中に顔を埋める。
ひなにい
ヒナ、、、
ヒナ
りょ、、こ、、いけ、、、なか、、、たね、、、
ひなにい
怪我が治ったらいくらでも行こう、、行きたいとこ、、連れってて、、やるから、、
ヒナ
ルカ、、、に、、また、、、みんなで、、、行け、、、かな?、、、おか、、さ、、と、、、お、、、う、、さ、、、とルカ、、に、、と




ヒナ
いえ、、、も、、、さ、、と
ひなにい
ッ!!あぁ行けるよ絶ッ対、、、

俺がそう言うとヒナは嬉しそうに笑う。
ヒナ
たの、、み、、だ、、、、、、な、、、

さっきまで弱々しい力で俺に捕まってたヒナの手は人形のようにだらんとする。

ひなにい
ヒナ、、、、、、?

ヒナが冷たくなるのを感じる。


さっきまで聞こえていた心臓の弱々しい音は全くと言っていいほど聞こえなくなった。


それでも俺は病院に向かってまだ走り続ける。



何度も何度もヒナに「大丈夫だ」「お兄ちゃんに任せろ」と声をかけ続ける。


ヒナからはいつになっても返事は来ない、、、


俺の頭に何度も何度もみんなの声が再生される




何度も何度も皆の幸せそうな顔が幸せそうな笑い声がそして、みんなの






死んだ姿が






頭から離れない。

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