問題児クラスの人たちと会った日から何日か経った。
その間にロイとローラはバビルスを退学した。問題を起こしたとかではなく、家の事情とのことだ。多分、後継ぎ関連だろう。昔からロイたちのお父さんとお母さんはそこだけは厳しかったのを覚えている。
さて、そんな話をしているのはただの現実逃避だ。ボクはいつものように職員室にいたのだが、問題児クラスの人が全員揃って職員室に来たらしい。その対応をカルエゴ先生がやっている。ボクはホワイトを抱きしめたまま、ツムさんの後ろに隠れている。
特待生さんの要求を要約するとこう。
問題児クラスの扱いがひどい。そのために教室移動を要求する。場所は────王の教室。
その言葉を聞いた瞬間、カルエゴ先生の纏う雰囲気が変わった。それに伴い、職員室の空気も重くなる。
カルエゴ先生が問題児クラスに提示した条件は「バビルスの教職員全員の許可書を3日以内に集めること」。
それを聞き、特待生さんはカルエゴ先生の手をとり、ハイタッチ?をして、去っていこうとする。それを止めたのはダリさんの声だった。
そう言って、特待生さんたちは職員室から出ていった。ダリさん。ボク、たぶん話すことも手を繋ぐのも無理だと思うよ。なのになんでそんなこと言うの?
ダリさんがツムさんの後ろに隠れていたボクに向かって歩きながら話しかけてくる。目の前までくると腰を折って目線を合わせてくれた。ダリさんの顔には申し訳ないという色が見えたけど、少し期待しているような顔にも見える。ダリさんの考えていることはなんとなくわかる。けれど期待には応えられないような気がするのはボクだけだろうか。
・・・・・・・・・カルエゴ先生に少し頼んでみようかな。
今思いついたことをカルエゴ先生に言ってみようと思って、近くに寄る。紙とペンを出して、カルエゴ先生に文面を見せる。
「クラスに行ってもいい?さすがにフェアじゃないと思うから」
その文面を読んでカルエゴ先生はボクの顔を見て言った。
それはもちろんだ。誰も1人で行こうとは思っていない。その日の1限がない先生に頼もうかな………。
カルエゴ先生のそばで考えていると、こちらに近づいてくる足音が聞こえる。後ろを振り向くとダリさんとツムさんが立っていた。
カルエゴ先生の話を聞いて、ツムさんが心配そうにそう聞いてくれた。だが心配ご無用。ダリさんを連れていくつもりなので。
「ダリさん、一緒にクラスに来てくれる?1限がないときでいいから」
そのつもりだったので問題なし。じゃあ早速、明日にでもいってみようかな。今日は流石に無理。
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翌日───────
職員室で朝の業務をこなしているカルエゴ先生。そろそろ時間だろうと思って席を立ち、ダリさんのデスクに向かう。その後、ダリさんと手を繋いだままカルエゴ先生のデスクに向かい、教師服を軽く引いてみる。まだHRが始まっていないから、今からいくはずだ。
ダリさんの手を再度強く握って、カルエゴ先生を見る。ホワイトも、さっきより少しだけ力を込めて抱えこむ。カルエゴ先生とダリさんにも正しく伝わったようで教室まで連れていってくれる。
問題児クラスにて───────
持ってきていた紙とペンを使い、ガープさんの質問に対する答えを書く。ダリさんにクラスのみんなに見えるようにしてもらう。魔術で彼らの顔に近づけてもらったのだ。
「ものならぬいぐるみ。人なら先生たち。ことなら勉強や読書」
シャックスさんの言葉に髪に書いてまたダリさん魔術で浮かしてもらい、彼らの目の前に出してもらう。
「先生たち。先生たちと初めて会って最初の誕生日に買ってもらった」
イクスさんの質問にダリさんが答え、カルエゴ先生が知られてほしくなかったであろうことを暴露する。案の定、嫌だったらしく、顔を顰めていた。
そうなのだ。ボクは基本ぬいぐるみに名前をつける。赤くて綺麗な羽から「ルビーちゃん」と名づけた。結構、いい名前だと思う。明日連れてこようかな。
そんなことを考えていると、特待生さんに声をかけられた。
「うん。寝るときにホワイトと一緒にギュッ、ってしてる」
嬉しいよ。だってすんごく可愛いんだもん。使い魔であるビャクヤたちも可愛いけど、また違った可愛さがあるのだ。思わず食い気味に反応してしまったが、特待生さんは笑っている。周りを見てみたら、クラスの人たちはなぜかニコニコと笑っていた。なんだろうか。
名残惜しいけれど、先生だって忙しい。大人しく職員室にいよう。
問題児クラスの扉に向かって歩きながらさっき思ったことにもう1度思いを馳せる。
ぬいぐるみのことを聞いてくれたのは嬉しかったな…………。
クラスを出て職員室へ行き、いつもの予習・復習をしていると、いつも通り、問題児クラスの人が手紙を持ってきた。朝に会ったけど、手紙を受け取る勇気がまだないから返してもらった。
やっぱり、申し訳ないな……………。
彼らからの手紙が怖いなら、自分が書けばいいのでは?それならダリさんに頼べばいい。そうだ、そうしよう!!
もらってばかりは申し訳ないし、譲歩されてばかりも嫌。先生たちのおかげで少し勇気を持てるようになった。渡すのは無理だからダリさんに任せてしまうけど、それでも今まで通ってくれたあの人たちに、そして、自信を持たせてくれる先生たちに少しでも報いたいから。
────────────これがボクの最大限の歩み。
ダリさんはボクの目を見てなにか感じたのか、息を吐いて「わかった」と言ってくれた。たぶん、ボクが思ってることも大体わかったのだろう。気恥ずかしくて照れてしまったけど、ダリさんはやさしく頭を撫でてくれた。
今日、教師寮に戻ったら早速書いてみよう。
ルティルスくん、勇気だしましたね。先生たちのおかげって思ってるから先生たちへの手紙も認めたのだとか。
次回は入間くん視点を書こうかと思っています。お楽しみに!!!





















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。