Akito side
オレに才能なんてないから
永遠まで泣いてんだろ
あいつらの声が遠ざかっていく
オレもあいつらみたいに……
羨ましい
ポツポツ
ん? 雨……
空はこんなに青いのに雨かよ
贅沢だなw……
羨ましい
雨が降ったからか、オレの座っているアスファルトは温度が下がって冷たくなっていた
真夜中のように真っ暗な心を照らしてくれるような灯りを求めてオレはセカイに逃げた
オレは、自分の求めているものだけ描いてきたつもりだ
他のメンバーの成長やらアンチやらで心が閉まることも沢山あった
相棒に向かって叫びたかった
オレは、もっと、あいつらにも負けないように強くいたいと願った!
努力もした!
でも、オレの声は出す前に無常に散るんだよ
そして、孤独になる
オレの指先はさっきの雨で赤く悴んでいた
なぁ冬弥、お前はオレを……
さっきまで天気雨だったのがどんよりした灰色の空へ変わっていた
オレの羨んでいた青色は灰色にくすんでしまった
才能才能才能才能才能
みんな才能を求める
だけどな結局、才能なんて借りもんなんだ
自分のモノじゃない
オレの大好きな人の声
でも、その声のせいでアイロニーを見失った
もうどこにも見えない
アイロニーだけじゃない
希望ですら見失った
もう、夢も、人生もどうだっていい
「諦めちゃダメ」
だったらオレのこの感情を奪いさってくれよ!
オレが…オレが…ドロドロになる前に
なぁ冬弥
お前はさ、オレだけ見てろよ
オレだけに愛を伝えてよ
はぁ……こんなセカイは、オレらのセカイじゃない
アイツらのセカイだ
オレの想いが映っている場所は滲んで
アイツらの夢の形に泣いたように消えてった
end.
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。