「親なんて消えてしまえばいい」
それを聞いた時
一瞬、ほんの一瞬だけ、少し、動揺した。
即座に否定出来なかった。
喉に詰まってしまった。
理由は多分
「別に消えてもいいなと思っているから」
だと思う。
耳の中を這ってまとわりつく甘い声が
心底不愉快で
心底気持ち良い
甘い声に解されないように身を固めても
そんな隙なく、根元から解される。
そんな感覚
………この人なら───
「出来ますか」
たくさんの意味が混じった言葉。
曖昧な言葉だが、明確な意思が篭っている。
会話から推察すれば、その意思は一目瞭然。
恐らく、彼にとって運命が変わる決意だろう。
そのことを剣持さんも悟ったのか、少し気まずそうに、驚いたように、疑うように、言葉には出さずとも、見つめている。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。