第28話

黒色 どうもこんにちは
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2020/10/19 13:12
なんだかずっと遠い道を歩いてきた気がする。遠いところに行きたかった。もっと先の景色を見たかった。気づいたら物好きな虹色が俺足跡を踏んだり踊ったり走ってきたりして追いかけてきた。1回も振り返ろうとしなかった。過去を見るのは嫌いだから。なんて、嘘だ。

「おいグルッペン」

あぁ。この声は誰だろうか。振り返って確かめようとしてこの特徴的な声で誰かということに気づき少し早足で先を歩く。ゴメンなコネシマ自分は後ろなんか振り返ったらダメなんだ。

「なぁグルちゃん」

少し柔らかい呼び方と男にしては高めの声に振り返りたくもない。いつになったら振り替えれるのかな。いや、ごめんな。大先生。まだ先に行かなきゃな。俺がみんなを守る壁だ。だからまた少し駆け足になる。

「グル氏」

すぅっもと息を吸う音が耳元で優しい声がする。目の端で赤色がかすめる。トン氏か。そんな赤色で君がいることが分かるのが悲しい。肩になにかが触れるのを感じて足を早めて気づかず駆け足になる。ごめんなさい。目に涙が溜まって急いで拭く。とうとう世界の一番端までたどり着く。しゃがみこんで肺に溜め込んだ空気を逃がす。

「はぁ…はぁ…」

息を切らして後ろを振り返る。

ダレモイナイ。

携帯のなる音でベッドから飛び起きて汗でぐっしょりと目の前で揺れる髪の毛を耳にかけて眼鏡をかける。嫌な…夢だ。バクバクする心臓を抑えて携帯の電話に出る。

「よぉ!おはようグルッペン」

目を細めるような朝日のような声に頭が眩む。

「おはようコネシマ」

電話してくるなんて…珍しい。ウトウトしながら目を擦る。

「グルッペン!今日何の日か覚えとるか!?」

やけに元気な声だ。ゴミ箱に捨てたカレンダーを思い出して答える。

「いや…覚えとらんわ」

そういうと電話の向こうからため息が聞こえて電話がぶちっと途切れる。
また電子音がピコッという音でしてTwitterを開く。
そこには彼にしては珍しい長文が並んでた。
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んぇー。
皆さん今日何の日か覚えてますか?そうです例の人の記念日なんですよね。なんだかみんなとてもウキウキしてて僕も楽しいです。例のなんちゃらさんも楽しんでてくれたらいいなとか思ってはります。元気にしてるか?なんちゃらさん。相変わらずか?まぁええよ。俺が一番望んでるのはな?あのな、
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そこでツイートが途切れてる。首をかしげて緑のボタンをぽち。
その瞬間大量のいいねが溢れて通知箱がカオスになる。
急いで携帯を閉じてベッドから這い出でる。
今日なんの日だ?
また首をかしげてコーヒを作りに行く。
昔エーミールから教わったやり方。
ドロドロに甘いそれを口に回してようやく頭も回る。
ようやく落ち着いてきた通知を消しながらふと1人の通知に目を止める。

「これが言いたかったんやろ?10周年おめでとうグルッペン」

…10周年。
感傷的すぎて笑えてくる自分の考えを撫でる。
ツイートしようかな。
自分のページに行って最初の文を打つ。

『どうもグルッペンなんちゃらです』

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