第71話

胡蝶蘭【まふまふ】
1,290
2020/02/05 12:14
まふまふside
まふまふ
まふまふ
………え?あなた…?
勢いよく開いた扉の前には、はぁはぁと息を切らしたあなたが立っていた。
萌子
萌子
………
萌子さんも、驚いたのか
僕から顔を離して扉の方をポカンとした顔で見ている。
そんな萌子さんもお構いなしにあなたは、驚いて座り込んでいる僕の前に庇うように立った。
そして、
ペシッ
萌子
萌子
痛っ……
何も言わずに萌子さんの頬をビンタした。
萌子
萌子
な、何すんのよ!!
萌子さんがキッとあなたを睨む。
あなた
あなた
……何すんのよはこっちのセリフです…………
萌子
萌子
は?何?聞こえないんだけど??
あなた
あなた
何すんのよはこっちのセリフですって言ったんです!!!!
あなた
あなた
私の事殴るなら良いですよ!別に!!
でも!でも………
あなたの目からポロポロと涙が零れ落ちる。
あなた
あなた
まふ君に……私の大切な人に!
変な事するのは止めてください!!
今まで聞いたことの無いような、
弱々しくも力強い声が生徒会室に響く。
まふまふ
まふまふ
………あなた…
きっと怖いはずなのに、それなのに立ち向かっているあなたの姿に胸の奥がじんとなる。
萌子
萌子
はぁ?なんなの?
この間までは私の事怖がってまふ君の事ほったらかしにしてたくせに!!
萌子
萌子
まふ君の前では正義のヒロイン気取り!?
ふざけないでよ!!
あなた
あなた
っ……
あなた
あなた
確かに……確かにそうです。
私は、自分の為にまふ君を避けてました……
あなたが下を向く。
僕の目の前にあるあなたの手は、
ぎゅっと拳を握っている。
あなた
あなた
………私は、ずるいやつです…………
そらる
そらる
それは違うと思うけど。
あなた
あなた
!!
そらるさんが二人の間に割って入る。
僕も、すかさず割って入る。
まふまふ
まふまふ
そ、そうだよ!!
あなたは、僕に何かあったらいけないと思って避けてたんでしょ?
あなた
あなた
………うん…
まふまふ
まふまふ
それは、自分のためなんかじゃない!
僕のために避けてくれてたんだよ!
全然、あなたはずるくなんてない!!
立ち上がってあなたの事を強く抱き締める。
あなた
あなた
まふ君………ありがとう……
震えた声であなたが言う。

………あなたの体、震えてる………
やっぱり、怖かったんだ…。
………今度は、僕が萌子さんに立ち向かう番だよね。
そう思って、あなたを庇うように立つ。
萌子
萌子
なんなの?なんなのよ………こんなはずじゃ…………
萌子さんは一人でブツブツと何かを言っている。
そらる
そらる
おい。
萌子
萌子
萌子
萌子
そ、そらる様……助けて!
私………この二人にはめられて……
まふまふ
まふまふ
は?
はめられた?
意味が分からない。
そんな嘘が通じると思ってるのか?
萌子
萌子
そ、そらる様は萌子の味方ですよね??
ね????
不安げな瞳で萌子さんはそらるさんにすがり付く。
………でも、そらるさんはそんな事どうでもいいみたいで、萌子さんに一つの資料を突きつけた。
そらる
そらる
…………お前、小学生の頃まふまふの事虐めてたやつだろ。
萌子
萌子
……へ?
まふまふ
まふまふ
あ…………
思い、出した。
萌子さん、どこかで見たことあると思ったら………小学校の時の…………
嫌な記憶が駆け巡る。
バケツで水をかけられたこと、
悪口を言われたこと、
蹴られたこと、殴られたこと………
まふまふ
まふまふ
うわぁぁぁぁ
しゃがみこんで耳を塞ぐ。
駄目だ。幻聴が聞こえる。
あの時の蹴られた感覚、
言われた悪口、
全部全部蘇ってくる。
怖い。怖いよ……。
あなた
あなた
まふ君!
するとあなたは僕の隣に来て、
あなた
あなた
大丈夫。大丈夫。
そう言って、背中をさすってくれた。

………あぁ、そうだ。
小学校の時も、こうしてあなたが背中をさすってくれたっけ。
そらるさんと二人で萌子に立ち向かって、虐めを止めてくれたっけ。
あの時から、僕………
萌子
萌子
えぇー?
虐めてなんか、ないですよぉ!!!
僕が落ち着く暇もなく、
萌子の猫撫で声がまた生徒会室に響く。
そらる
そらる
は?何言ってんの?
俺はしっかり覚えてるから。
お前がまふまふに何したか。
萌子
萌子
で、でもぉ!
そらる様一人じゃ証拠になりませんよぉ?
萌子の声が裏返る。
………随分と焦っているみたいだ。
あなた
あなた
わ、私も覚えてます!!
萌子
萌子
なっ………
萌子
萌子
で、でもぉまふ君はそんな事された記憶ないよねぇ?だって萌子してないし~……
そう言うと同時に萌子さんの僕を見る目付きが変わった。
『絶対覚えてるとか言うんじゃねぇぞ』って訴えかけてるような、怖い目付き………
まふまふ
まふまふ
~っ、覚えてます!!!
萌子
萌子
はぁ?
怖さを打ち消してしっかりとそう言う。

あなただって怖いはずなのに、僕のために勇気を出してくれたんだ。
……僕も、勇気を出さなきゃ。
まふまふ
まふまふ
蹴られたこと、悪口を言われたこと、全部全部覚えてます!!
まふまふ
まふまふ
あの時、そらるさんとあなたが僕の事を救ってくれたのも、
まふまふ
まふまふ
僕の事を庇ってくれたあなたの勇敢な姿を見て……僕が恋に落ちたのも。
………全部。
萌子
萌子
なんでよ………。
こんなはずじゃなかったのに………。
萌子
萌子
私は、ただ……………。
萌子
萌子
~っ全部お前のせいだ!!!
萌子
萌子
全部全部こいつが悪い!!!!
そう言って萌子さんはあなたの胸ぐらを掴んだ。
あなた
あなた
!!
離してください!
萌子
萌子
いつもいつもいつもいつも!!!
何でお前ばっかり!!
萌子
萌子
お前なんて………
お前なんて……!!!!
そう言った萌子さんの手には、












カッターが握られていた。

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