第10話

第八話 3限
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2026/07/23 03:00 更新
伊織
10人…蹴落とす?
急に恐ろしい単語があの笑理から放たれた。
笑理
蹴落とすと言っても、負けを認めさせるだけでいい
俺もこんなことしたくないけど
恐らく詳しいことも教えてくれないだろう。
ただ、自分が落ちることだけはまっぴらだ。
毎シーズン"学校"はやるようだが、時間は無駄にしたくない。
伊織
選別ですか…教えてくれてありがとうございます
ついに迎えた準備期間最終日。
そして、選別の日。
笑理
前から話していた選別を行う
外に移動しよう
重苦しい空気の中、紅太を見かけた。
目が合い、近づいてきた。
紅太
お久しぶりです!伊織さん
伊織
ああ、元気そうで何より
紅太
伊織さんは大丈夫ですか?
倒れたと聞きましたが…
伊織
まぁな…訓練がひどくて
でもお陰でなんとか覚醒できたよ
紅太
へぇ…
僕は覚醒どころか退化してますよ
改めて話を聞くと、あの時の紅太君は能力のせいで差別されていた。その苦しみが折り重なり、能力が暴発。
能力により妖気を血に変換できる体質で、失血死もできない。ただ血が抜けていく感覚を味わうことになり、我を忘れていたらしい。
それにまだ子供だ。自死する勇気も出なかったようで、ただひたすらに生の苦しみを感じていた。
そのせいで殺してくれる存在を探すが、能力の暴走で死ななかったようだ。
伊織
つまり、あの時のように捨て身の戦いはできないと?
紅太
簡潔に言えばそうですね
伊織
安心してよ
僕が何とかするから
全てを失った少年に伊織が言えることはこれしかなかった。
悲惨な過去を送った幼い少年に今頼れるものがあるとすれば、命の恩人であり顔見知りである僕しかいないのだ。
そのため伊織はこのとき、紅太に兄としての感情のようなものが湧き上がっていた。
しばらく歩いたところで、大きな建物が見えた。
ここが樹海だと忘れさせるほど新そうで、少し荒れていた。
笑理
今からこの建物でテストする
脱落の条件は戦闘不能にするか敗北を認めさせるかだ
5分後、散らばってスタートだ
そうして醜い争いが幕を開いた。

建物は5階あり、伊織とニャルは3階の階段前の部屋からスタートになった。
伊織
今取れる初動の選択肢は
①隠れて様子を伺う
②5階から順に上から回る
③1階から順に上から回る
④協力者を見つける
ってところかな…
ニャル
相手の能力もまともにわからんのだから工夫は必要だな
そんなことを話していた時だ。
「ドゴォ…」
という轟音が上から響いてきた。
ニャル
おうおう!早くもおっ始めよって
伊織ぃ血が騒ぎよった!行くぞ
伊織
は?っておいおい…
1人ではまともに戦えないため、伊織は急ぎニャルを追った。

次の階…4階に登った瞬間、伊織は驚いた。
そこは天井が崩れ落ちて5階と繋がっていた。
さらにそこには轟とかいうやつと、紅太がいた。
紅太
つぅ…
伊織
何やってんだお前ぇ!
伊織が轟へ怒りの矛を向けたのは、紅太の上にまたがり攻撃をしようとしていたからだ。
いや、既に何度か攻撃を受けているようだ。
紅太の肌は火傷し、爛れかけていた。
恐らくこのまま至近距離で爆破攻撃を続けられたら3回もせずに紅太は絶命する。
あー
お前こいつの知り合いか?
ニャル
小僧…手を離せ
珍しくニャルが感情的になっていた。
「以心伝心」で感情を読んだところ、愚問だったようだ。

『恩人の友を傷つけて許されるとは思うなよ…』

伊織は覚悟を決めた。
伊織
ニャル…行くぞ
"リーパー"
伊織がそう唱えた瞬間、ニャルは細く、長く変形した。
隆二
ニャルさんは不安定と言っても、実は七つの形で安定することが多いんです
あの戦いの後、隆二はそう言った。
笑理
七つの形…
七通りの変化ができますね
隆二
ニャルさんは自身の体を七変化させるこの能力を「レインボー・ノヴァ」と呼んでました
笑理
伊織の思考に合わせて戦況に合った形態で戦える…そういえば伊織のIQ140だったらしいですね
隆二
ええ
伊織さんの思考を持ってすればかなり強いでしょう
笑理
有無を直接操っても"奥の手"以外あまり意味はない…
相性が最悪な奴が生まれるとはな
変形したニャルは2mはあろう大太刀になった。
祢々切丸かよ…
にしても重くないのか?
ニャル
愚問!
我は体を主に妖気で構成しておる
妖気に重さはないからな!
伊織
つまりこの大太刀は非力な僕でも振り回せるのさ
なるほど…
接近前提の俺からしたら迷惑だな
轟はそんなことを言ったが、内心は異なっていた。
実は接近前提というのはブラフで、触れた小石などを飛ばして爆ぜさせることもできるのだ。

轟は小石を拾い、自身の妖気を込めた。
それを見たニャルは伊織に耳打ちした。
ニャル
おい…何か来るぞ
小石が異常な威圧感を孕んだ。
それが生む感情はなんとも形容し難く、興奮にすら似た恐怖であった。
咄嗟に紅太から離れ、体勢を整えた。
伊織
面倒臭いなこの能力
…!閃いた
伊織は以心伝心を使い、新たな発明をニャルの脳に直接伝えた。
ニャルはそれを理解し、新たな形態へと変態した。
その形態は他の形態とは異質で、「何に代えても護る」という固い信念のもと作られる。
つまり、他の形態と比べて最も「愛」という感情が込められているのだった。

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