伊織がそう唱えた時、ニャルは伊織の前へ体を伸ばし、薄く平らになっていった。
攻撃能力の一時的な放棄と伊織の両手が塞がるという条件で取得した「絶対防御」の形態である。
轟は小石を次々と投げた。爆発した小石のせいで砂煙が発生し、視界は格段に悪くなった。それにより、防御も格段に難しくなる。
砂煙を利用し、轟は机を投げた。そして轟は机を爆ぜさせた。
しかし、伊織は瞬時に防御し、ダメージを最小限に抑えた。
爆風で伊織は柱へと突き飛ばされ、激突した。
轟は衝撃に顔を歪めた。
ニャルは通常形態へと体を戻し、こう話した。
伊織とニャルがそんな言葉を交わしていた時だ。
轟は狂ったように、まわりの壁に小石を投げて爆発させていた。配線が露出した。
この瞬間伊織は思考が停止したが、瞬時に轟の意図を理解した。そして、死の気配を感じた。
伊織は露出した配線に向かい、駆け寄る。
しかし轟も足元の塵を爆発させ、推進力を得て配線の元へ向かう。
伊織から配線までは遠く、爆発による加速をした轟には負けてしまった。
轟は露出した壁にある管に触れ、こう言った。
その通り、伊織は気づいていた。
机の足には鉄が使われていた。鉄は塊の状態では基本的に爆発はしない。しかし、その机の足の鉄は爆発していた。
これから得られる答えは、「物体ではなく妖気が爆発している」ということだ。
通常は爆発し得ない物も爆発できる。つまり…
轟は燃えていた木の破片を拾い、天井へ投げた。
火災報知器が作動し、スプリンクラーが放たれる。
轟は去った。そして降ってくる水滴が爆発しようと威圧感を放つ。
伊織はニャルを盾へ変化させつつ、紅太の元へ向かった。
咄嗟に庇うものの、限界が来てしまった。落ちてくる水滴をカバーできない。このままでは死んでしまう。
だが、伊織の灰色の脳細胞は新たなる閃きを創り出した。
ニャルは逆にドーム状となり、伊織達を守った。
笑理は脱落者の名前を読み上げた。
その中には紅太の名前もあった。
紅太の顔は崩壊しかけていたものの、S.P.E.C.T.R.E.の治療なら回復できるそう。
テストが終わり、伊織は轟を睨む。どうやら轟単独で8人も脱落させたようだ。
スプリンクラーによる擬似サーモバリック爆発はしばらく続いた。どうやら開始直後から、水道管の場所の確認をしていたようだ。
そこを紅太に見られ、戦いへ発展したのだろう。
伊織は紅太のことを弟のように思っていた。
迫害された過去をもつ紅太が自分のことを慕ってくれている。
それだけで紅太に対して保護欲が生まれた。
しかしこの時は、轟に対する憎しみが、ニャルを新たな形態へと進化させることをまだ誰も知らなかった。
ついに本番。
クラス対抗のトーナメントが始まった。
うちのクラスはシードが適用され、午後からトーナメントだった。
どうやら最初の相手はAクラス。
くじで決められた戦いの内容は「鬼ごっこ」。
片方のチームが鬼でもう片方が逃げをやる。
制限時間は15分で、逃げが一人でも残っていれば逃げの勝ち。逃げが全滅すれば鬼の勝ちだ。
グラウンドでAクラスの人たちと出会い、鬼ごっこが始まった。Aクラスが逃げでこっちが鬼だ。
逃げが四方へ離れて1分ほどした。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!