あなたside
体育大会当日
私は、実行委員長としての仕事が忙しく校内を走り回っていた。
竜と廊下でばったり会う。
忙しすぎて頭が回らず、なんとなくそう返事をした。
仕事全部終わってから見に行くか、そう思ったがすぐに片付く仕事の量ではなかった。
気が遠くなりそうになりながら、足早に次の仕事へと向かった。
ー
同じ実行委員の子が私に声をかけてきた。
朝から放送での招集、各競技の準備・片付けなど…たくさんの仕事をしてきた。
だが、まだ少し仕事が残っていて、とてもじゃないけれど終われない。
何となく私に向けた言葉なのか、意図的に向けられた言葉なのかよく分からなかったが、その一言に甘えることにした。
私は、頑張っているであろう"あの人"のことを思いながら体育館に向かい走った。
ーーーーーーー
残り10分
電子タイマーにかかれた数字を見て、焦る。
光輝先輩たちのチームは5点差で負けていた。
光る汗を拭きながら走っている姿は、今までの優しい先輩とは違っていた。
わかる。バスケのルールをよく知らない私でもわかる。
光輝先輩や竜先輩は、本気でバスケを楽しんでる。
負けているこの状況でも、表情は生き生きしていた。
光輝先輩は、上手く相手をかわしシュートをうった。
点差3点。
シュートするために飛んだ足。相手チームに体を押され、その足がぐにゃと曲がり地面に着地した。
捻挫…したようだった。
私は、気にせずに走っている光輝先輩を見て、思わずサポーター席まで走った。
光輝先輩!そう、思わず叫ぼうとした瞬間、誰かに腕を強く引かれた。
腕を強く引っ張っていたのは、休憩で選手交代していた竜先輩だった。
そこまでして頑張れる理由は何?
私は何かに一生懸命になんてなれない。
竜先輩は、ありがとうの代わりに私の背中をトントンと優しく叩いた。
ーーー
残り1分
2点差まで縮めたが、残り1分ということもありさすがにチームのみんなも焦っていた。
刻々と時間が過ぎていく中、2点差の差は一向に縮まらない。
5
4
3
2
1
ピピッー
その瞬間私は何が起こったのか分からず、ただその場に立ち尽くしていた。
5秒の中で、光輝先輩はパスをうけ、ドリブルをし、シュートをした。
スリーポイント地点で。
光輝先輩の周りは、一瞬にして人に埋めつくされていた。
54対55
圧巻のプレーを見せられ、その場に立ちつくすことしかできない。
名前を呼ばれ、声の方を向くと光輝先輩はこちらに向かって走ってきた。
光輝先輩は、私の前に立ちそう言った。
こんな私のために頑張ってくれた…。
それだけで嬉しかった。
光輝先輩に笑顔を向ける。
すると、光輝先輩も私に笑顔を向けてくれた。
光輝先輩はそう言い、私の腕を掴んで胸に引き寄せた。
光輝先輩の甘い匂いに一気に包まれる。
しばらくの間、抱き寄せられたままの状態で鼓動が早くなった。
私が聞いた途端、光輝先輩は私の耳元でこう言った。
その瞬間、光輝先輩は足首をおさえて崩れ落ちた。

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!