第53話

伍拾参話 灯が揺れるとき
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2025/09/01 12:00 更新






最近、朝がつらい。

布団の中で、目が覚めているのに、

身体が動かないことが増えてきた。



柾國
柾國
 テヒョン? 起きないのか? 




扉の向こうから、

ジョングクの声がする。



泰亨
泰亨
 ……もう少しだけ 




喉の奥からやっとのことで

絞り出した声は、

自分でも驚くほど弱々しかった。



陽が差し込む寝間の障子は、

優しい色をしている。

けれどその光さえ、

今の僕には重すぎた。



食事の支度をしようとしても、

匂いを感じた途端に、

胃が軋んで吐き気がこみ上げる。



茶碗に手を伸ばす手が震えて、

湯気が肌を刺すように感じる。



泰凛
泰凛
 ……食べないと、
 だめよ、お母様。 




双子が、心配そうな顔で

僕を見ていた。

テリンは、優しく箸を

手に乗せてくれる。

ジョンウンは、

炊きたての白飯をほんの一口だけ、

僕の皿に盛ってくれた。



泰亨
泰亨
 ありがとう……
 うん、食べるね。 




小さなその一口を口に運ぶまでに、

何度、息を整えたかわからない。





***




柾音
柾音
 なぁ、母様……
 最近、ずっと元気ない気がする 




廊下の向こう、

ふと聞こえたジョンウンの声に、

僕は思わず足を止めた。



泰凛
泰凛
 ……痩せたよね。
 手、前より小さくなってた。 




テリンの言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。

 

そんなつもりはなかった。

心配はかけたくなかった。

けれど、どんなに笑っても、

どんなに取り繕っても……

“気づかれている”。



足元がふらついた。

視界が一瞬、真っ白に染まる。



泰亨
泰亨
 っ…… 




手すりに掴まり、

息を整える。



これ以上、

隠せないかもしれない……



けれど、あの子たちの前では、

どうしても“母親”でいたかった。

泣きそうになるのを堪えて、

縁側に腰を下ろす。

風が冷たく、でも心地よかった。





***





夕暮れ、

ジョングクが戻ってきた。

僕の隣にそっと腰を下ろし、

手を繋いでくる。



柾國
柾國
 冷たい……
 手袋、すればよかったな。 




僕の指を、自分の掌で

包み込むようにして、

あたためてくれる。



泰亨
泰亨
 ……ジョングク 

柾國
柾國
 ん? 

泰亨
泰亨
 …ごめんね、
 最近……ちゃんと、  
 ご飯も作れてなくて…

柾國
柾國
 そんなこと、
 気にするな。
 ……テヒョンが
 笑っててくれりゃ、 
 それでいい。




そう言って、

僕の肩にそっと頭をのせてきた。

それが、

妙に疲れているように見えた。



泰亨
泰亨
 ……ねぇ、ジョングク 

柾國
柾國
 ん? 

泰亨
泰亨
 最近……疲れてる? 




少しだけ、間が空いた。



柾國
柾國
 …ちょっとな。
 でも、大丈夫だ。 
 …テヒョンが、もっと辛いのを 
 知ってるから。




その言葉が、胸に深く刺さった。



彼も……気づいてる。

僕の異変に、僕以上に敏感に。

けれど、触れない。

その優しさが、

涙が出るほどつらかった。





***





その夜、また吐き気で目が覚めた。

静まり返った部屋、

月明かりが障子を透かしている。



吐き気を押さえ、

手を口に当てたまま

縁側へ出ると……

ジョングクも、

そこで風に当たっていた。



泰亨
泰亨
 ……起こした? 

柾國
柾國
 いや。俺も目覚めてた。 




並んで座る。

お互いに、

互いの異変に触れないまま、

ただ、静かな風だけが

通り過ぎていった。



泰亨
泰亨
 …ねぇ、ジョングク 

柾國
柾國
 ん? 

泰亨
泰亨
 …来年の桜、見られるかな 




僕の問いに、

ジョングクは少しの間、

言葉を失ったようだった。



やがて、ぽつりと答えた。



柾國
柾國
 ……見られるさ。絶対に 




それは、

祈りのような声だった。

そしてその声が、

何よりも僕を泣かせた。




       정국이 오빠, 생일 축하해🎂🥰

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