秋の風が気持ちよく吹いていた。
この季節の空気は、
どこか澄んでいて、
胸の奥まで通り抜けていく気がする。
稽古場の真ん中で、
ヨンジュンとボムギュが
真剣な表情で指導している。
双子もそれに応えるように、
汗を額ににじませながら
集中していた。
僕は、その様子を
稽古場の隅で見守っていた。
隣では、ジョングクが
リンファを膝に乗せ、
風を受けながら静かに
子供たちを見つめている。
リンファが手を
叩きながら目を輝かせる。
ジョングクが小さく笑って、
リンファの髪を撫でた。
そんな、なんでもない日常の一コマ。
けれど僕は、
背中に張り付くような
違和感を拭えなかった。
ヨンジュンとボムギュが、
こちらを“時折”、見ていた。
それは視線というより__
探るような、見透かすような眼差し。
僕の小さな声に、
彼もまた低く短く返す。
***
稽古がひと段落した頃、
ヨンジュンが水の入った徳利を
持ってこちらへ歩いてきた。
その後ろには、
ボムギュの姿もあった。
開口一番、
ヨンジュンは迷いなく言った。
僕は笑って
ごまかそうとしたけれど、
視線を逸らした瞬間、
自分の動揺を悟られた。
言葉が喉元で詰まる。
僕は、返せなかった。
ヨンジュンが、
静かに目を細めた。
ボムギュの声も震えていた。
ジョングクが、
隣で拳をぎゅっと
握りしめる音がした。
でも、それでも何も言わなかった。
僕も、言えなかった。
口を開いたら、涙がこぼれそうで。
それだけ言うのが、
やっとだった。
ヨンジュンが俯いて、
小さく吐き捨てる。
ヨンジュンの声が、
泣きそうに震えていた。
僕は、拳を握りながら、
ただ堪えていた。
弟たちにさえ、
真実を告げることができない
自分の弱さが、悔しかった。
けれど、それでも__
まだ、希望を信じたかった。
***
稽古が終わったあとも、
ヨンジュンとボムギュは
僕たちの傍を離れようとしなかった。
言葉には出さないが、
何かあればすぐに動けるように___
そんな姿勢だった。
その優しさが、胸に痛い。
けれど、それ以上に嬉しかった。
僕はただ、小さく、
心の中でつぶやいた。
“ごめん、でも……ありがとう”
___そして、少しずつ
“その時”は近づいていた。


















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。