「オークションなんて、
違う時代の話だろう」
そう思ってる人は、幾らでもいる
けれど、皆が使うネットで
画面越しに、ボタンひとつで落札する
オークションだってあるし
思想の歪んだ金持ちも、いる
私は、そんな金持ちたちの
娯楽のために使われた「人」
いつものように、両手、両足を
鍵付きの拘束具で纏められ、
まともに自由も効かない地下空間で
ただ一人、寒さに縮こまる
今日も聞こえる、鞭打ちの音
もはや出す声もなくなった不出来な奴隷
私はまだ優秀な方だから
最後に鞭打ちをされたのは
ずっと前だし
警備員の癇に障らないように
時折与えられる食事の時以外
身動ぎすらしない
「奴隷になるために生まれたガキ」
…警備員は、私たちにそう吐き捨てる
奴隷だって、悪くはないはずだ
大人しくしていれば
折檻を受けることも無いし
運が良ければ、いい家の使用人になれる
…まぁ、出戻ってきて、
この間死んだ奴隷仲間に
聞いた程度だから定かじゃないし
それ以外のことは知らない
けれど、私は、餌を与えられるから
他の奴隷よりもマシらしくて
教養と、知識と、能力が高いから、
数年に一度単位で開かれる
今度の高級オークションに出品される
今度…と言っても、今日らしくて
普段は暇さえあれば鞭打ちをする奴も
洒落たスーツに身を包んでいる
サツ……お札?お金のこと?
お金が動くわけないから、
何かの隠語だろうか…
No.3…わたし?
檻に押し入ってきた警備員に従い、
鎖で引かれるままに立ち上がり、
ふらついた足取りで着いていく
…この後の、転機について
この時の私はまだ、知る由もなかった











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!