第17話

早く来てやれなくてごめんな
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2020/01/19 21:09
あなた

ええー……

途方に暮れた私は、
渋々ひとりで暗い森の中を進む。

カラスの鳴き声、草木の揺れる音。

そのどれもが不気味で、
進む足がカタカタと震えだす。

しばらくして結構歩いたのに
ゴールが見えてこないのに気づき、
私は足を止める。
あなた

幽霊役の人も出てこないし、
もしかして道を間違えたのかも……

すぐに道を引き返そうとしたのだけれど、
四方八方木々に囲まれていて、
どこから来たのかわからなくなる。

(どうしよう……)
あなた

誰か──

祈るように思い浮かべたのは、悠貴の顔だった。

そのとき、「あなたーっ」と誰かに呼ばれた気がした。

弾かれるように顔を上げた私は、耳を澄ませる。
佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
あなたーっ
(この声、悠貴だ!)

私は大きく息を吸って、悠貴に届くように叫ぶ。
あなた

悠貴ー!

するとすぐに足音が近づいてきて、
近くの茂みが揺れたと思ったら──。
佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
あなた! よかった、やっと見つけた!
勢いよく悠貴が飛び出してきて、
私を抱きしめると安堵の息をつく。
あなた

悠貴、どうしてここに?

佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
あなたのペアの男子がものすごい勢いで
俺たちを追い抜いて行ったから、
ひとりなのかもと思って引き返してきた
あなた

そうだったんだ……迎えに来てくれて、
ありがとう。私、どこかで道を間違えた
みたいで迷ってたの

佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
早く来てやれなくてごめんな? 
怖かったよな……
強く強く抱きしめてくれる悠貴の胸に、
私は頬をすり寄せる。
あなた

悠貴が来てくれたから、平気だよ

佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
もうひとりにしないから、
一緒に戻ろう。ルートから外れると
足場が悪くて危ないって、
鉱が言ってたからさ
あなた

うん

私たちは手を繋いで、
元のルートを目指して歩き出す。
あなた

そういえば……
悠貴のペアの子はどうしたの?

佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
あとから来たペアの子たちに預けてきた
あなた

そうだったんだ。ありが……

もう一度、お礼を言おうとしたとき、
ズルッと足が滑る。

(──えっ……)

身体が崖のように急な斜面のほうへ傾いて、
宙に投げ出された。
あなた

きゃああっ

佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
──あなた!
切羽詰まった悠貴の声が耳に届く。

(落ちる……!)

そんな絶望が胸を過ったとき──。
佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
俺の手を放しちゃだめだ!
幸いにも悠貴と繋いでいた手が私の命綱になった。

でも、昨日は雨が降って足場がぬかるんでいて、
私を支える悠貴も急な斜面のほうへずるずると
少しずつ引きずられている。

(このままじゃ、ふたりで落ちちゃう)
あなた

悠貴、ごめん

佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
……え?
(悠貴まで、巻き込むわけにはいかないから──)

私はパッと悠貴の手を振り解く。

その瞬間、悠貴の目が大きく見開かれる。
佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
なんで……あなた!!

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