第17話

総長、参上
5,059
2022/09/03 23:00
私たちは、廃工場の出口を目指して走りつづけた。
高田 肇
高田 肇
もうすぐ出口だ!
工場の出口が見えて、ほっとしたのもつかの間、そこには榎本くんと罵羅門のメンバーが集まって、待ち伏せしてしていた。
高田 肇
高田 肇
なんてことだ……!
せっかく脱出できたっていうのに……
高田 肇
高田 肇
あの人数じゃ、逃げきれそうにないな
高田くんは、ギリッと奥歯をかんだ。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
そんな……
なすすべもなく、その場に立ち止まっていると、メンバーの一人が私たちに気づいた。
罵羅門のメンバー3
おい!
あれ、見ろよ!
罵羅門のメンバー4
倉庫に閉じ込めたのに……、
なんでここにいるんだよ?
罵羅門のメンバー3
早く捕まえろ!
そうして私たちは、再び罵羅門のメンバーたちに捕らえられてしまった。
高田 肇
高田 肇
くっ……!
榎本 冴己
榎本 冴己
おいおい、
勝手に抜け出したらダメじゃないか
榎本くんが、薄ら笑いを浮かべてやってくる。
榎本 冴己
榎本 冴己
もうすぐショータイムが始まるっていうのに、困るなぁ
高田 肇
高田 肇
ショータイム……?
そこに、聞き慣れたバイクの音が近づいてきて、はっとなる。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
(この音は……、蛍くん!?)
榎本 冴己
榎本 冴己
……スペシャルゲストの登場だ
ブォンと大きな排気音とともに、廃工場の敷地に見慣れた黒いゼファーが乗り込んできた。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
蛍くん……!
蛍くんが、すぐにバイクを下りて、私の元へと走り出す。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
妃奈乃!
すると、それを阻むように、罵羅門のメンバーが一斉に蛍くんの周りを取り囲んだ。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
罵羅門のメンバー3
あんたが噂の、無敵の総長さん?
罵羅門のメンバー4
女みたいな顔しやがって、ムカつくなぁ。
コイツが、ほんとに強えの?
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
……そこを、どけ
罵羅門のメンバー3
とっとと俺らを倒してみろよ?
無敵なんだろ?
罵羅門のメンバー4
それとも女みてぇに泣いちゃう? 
……グフッ!
その瞬間、メンバーの一人が、蛍くんに蹴り上げられて宙に浮いた。
罵羅門のメンバー3
なっ!?
……がはっ!
間髪を入れず、隣にいたメンバーもおなかに蹴りを入れられて、体をくの字にしながら後ろへ吹っ飛んだ。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
早く、どけって言ってんだろーが!
蛍くんの気迫に、罵羅門のメンバー達も気圧される。
罵羅門のメンバー5
つ、強えぇ……
罵羅門のメンバー2
おい、ひるむんじゃねぇ!
やっちまえ!
その言葉で、残りのメンバー達は一斉に蛍くんに殴りかかった。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
けれど、蛍くんはさっと身をかがめて攻撃をかわすと、地面に手をついてローキックを入れ、一気に三人の足を払った。
罵羅門のメンバー2
うわっ!?
彼らがバランスを崩して倒れこんだところに、とどめのかかと落としと回し蹴りを決めると、あっという間に三人を倒してしまった。
高田 肇
高田 肇
つ、強い……
高田くんは、驚嘆してつぶやいた。

五人もの相手を、一瞬で倒したその光景は、映画のアクションシーンのように華麗だった。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
(蛍くんって、……こんなに強かったの?)
呆然としていると、蛍くんは、私を捕らえているメンバーに向かって言った。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
早く、妃奈乃を離せ
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
……今、俺はメチャクチャ機嫌が悪りぃんだ。
手加減できねーぞ
罵羅門のメンバー6
ひっ!
私を捕らえていたメンバーは、蛍くんに恐れをなして、その手を緩めた。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
あ……
しばしの解放感を味わったと思った矢先、
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
!?
別の手が伸びてきて、私の首元をガシッととらえた。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
妃奈乃!
榎本 冴己
榎本 冴己
……もうお前らなんか、あてにしねぇ
後ろから聞こえてきた声に、ぞくっとなる。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
(……榎本くん!?)
榎本 冴己
榎本 冴己
強いとは聞いてたけど……、
その強さは反則だよなぁ
榎本 冴己
榎本 冴己
じゃあ、俺も反則技を使わせてもらうよ
そう言って、榎本くんは私の顔の前にナイフを突きつけた。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
!!
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
なっ!?
蛍くんは歩みを止めて、息をのむ。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
あ……
キラリと光ったナイフに、私の心臓が凍りついた。

プリ小説オーディオドラマ