私たちは、廃工場の出口を目指して走りつづけた。
工場の出口が見えて、ほっとしたのもつかの間、そこには榎本くんと罵羅門のメンバーが集まって、待ち伏せしてしていた。
高田くんは、ギリッと奥歯をかんだ。
なすすべもなく、その場に立ち止まっていると、メンバーの一人が私たちに気づいた。
そうして私たちは、再び罵羅門のメンバーたちに捕らえられてしまった。
榎本くんが、薄ら笑いを浮かべてやってくる。
そこに、聞き慣れたバイクの音が近づいてきて、はっとなる。
ブォンと大きな排気音とともに、廃工場の敷地に見慣れた黒いゼファーが乗り込んできた。
蛍くんが、すぐにバイクを下りて、私の元へと走り出す。
すると、それを阻むように、罵羅門のメンバーが一斉に蛍くんの周りを取り囲んだ。
その瞬間、メンバーの一人が、蛍くんに蹴り上げられて宙に浮いた。
間髪を入れず、隣にいたメンバーもおなかに蹴りを入れられて、体をくの字にしながら後ろへ吹っ飛んだ。
蛍くんの気迫に、罵羅門のメンバー達も気圧される。
その言葉で、残りのメンバー達は一斉に蛍くんに殴りかかった。
けれど、蛍くんはさっと身をかがめて攻撃をかわすと、地面に手をついてローキックを入れ、一気に三人の足を払った。
彼らがバランスを崩して倒れこんだところに、とどめのかかと落としと回し蹴りを決めると、あっという間に三人を倒してしまった。
高田くんは、驚嘆してつぶやいた。
五人もの相手を、一瞬で倒したその光景は、映画のアクションシーンのように華麗だった。
呆然としていると、蛍くんは、私を捕らえているメンバーに向かって言った。
私を捕らえていたメンバーは、蛍くんに恐れをなして、その手を緩めた。
しばしの解放感を味わったと思った矢先、
別の手が伸びてきて、私の首元をガシッととらえた。
後ろから聞こえてきた声に、ぞくっとなる。
そう言って、榎本くんは私の顔の前にナイフを突きつけた。
蛍くんは歩みを止めて、息をのむ。
キラリと光ったナイフに、私の心臓が凍りついた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。