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徐々にカッターナイフが駿君の首元に近づく。あたしはどうにか抵抗できないか、と抵抗するも、駿君の力の方が強すぎて抵抗することが出来ない。
死にたいと思った時に死んでしまったら、もうそこで終わりだ。あたしだって死にたいって思った時はいっぱいあった。でも、今は生きてて良かったと、あの時に死ななくてよかったと心の底から思ってる。だって、生きていればそのうちいいことがあるんだから。あたしが、梨央と桃に出逢えたように。
あたしは頭をフル回転させる。考えるのは苦手。でも、だけど、考えないと。解決方法を、今の打開策を。そして、三秒後。一つの乱暴な解決方法を思いついた。
心の中で、一応あたしは駿君に謝る。そして……駿君の脇腹を――思いっきり、蹴った。
もちろん手加減はした。あたしは中学時代は中学校が遠いことから毎日往復合わせて十キロ近く自転車をこいでいた。その脚力は、未だに衰えていない。だから、脚力には自信がある。……手加減しないと、マジで殺しかねない。
あたしと駿君の手から離れたカッターナイフが、あたしの手に当たり傷をつける。そこは切り傷になって、血がにじんでいた。なんかとても痛かったけれど、駿君の方がきっと痛いだろう。幸いにも、駿君はベッドの上に倒れたので酷いけがはなさそうだ。我ながらいいところに倒れさせたと思う。あたし、完璧。
そして、その後どたどたという足音と共に、煌さんと翔さんが現れたのだった……。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。