紅丸は、周りの若い衆達とともに纏を持つ。
その時、紅丸が珠華の名を叫んだ。
名を呼ばれた珠華は、地面を蹴って飛び上がった。
その瞬間、辺り一面に彼岸花が咲き誇り、時が止まった。
その間に、珠華は紅丸の傍へ向かう。
そして、紅丸に近づいた瞬間に、時の流れを元に戻した。
先程までいなかったはずの珠華が目の前にいたため、紅丸は目を丸くする。
そんな紅丸を気にする事もなく、珠華は目の前の“焔ビト”を見据える。
そう言って、珠華は再び、あの不可思議な空間を生み出した。
そして、“焔ビト”にゆっくりと歩み寄り、“焔ビト”の胸元にそっと手を添える。
すると、炎が彼岸花の形になり始めた――正しくは、珠華が炎を生成し、更に炎を彼岸花の形に変えた。
そう呟くとともに、時が動き出し、珠華が手を添えている“焔ビト”の胸元に、炎でできた彼岸花が咲いた。
その彼岸花はすうっと“焔ビト”に溶け込み、次の瞬間、“焔ビト”は地面に倒れ、灰になり始めていた。
あまりに一瞬の出来事で、紅丸は声を出す事もできなかった。
珠華は紅丸の方を向いて、感情を感じさせない平坦な声で告げた。
何者なんだ。そう言おうとした紅丸だったが、すぐに口を噤んだ。
珠華がそう言うと、どこからともなく彼岸と此岸が現れた。
そして、二人はそう言って、また消え去った。
紅丸はそのやり取りを見て、本能的に感じたのだ。
この三人は、完全な人間ではないと。少なくとも、あの双子が人ではないのは明らかだった。
珠華は、口元を苦しそうに歪ませた。
忘れてください、と、珠華は歩き去ってしまった。
その場に取り残された紅丸はふと、“焔ビト”の灰があった場所に目をやった。
そこには、一輪の真っ赤な彼岸花が落ちていた。
なぜかその彼岸花から目が離せなくなった紅丸は、それをそっと手に取った。
その時、まだ幼い珠華の声が、紅丸の脳裏に響いた。
紅丸がそう思って手元を見ると、確かに握っていたはずの彼岸花が、なくなっていた。
紅丸の背後に、彼岸と此岸が現れた。
瓜二つの二人はそう言って、紅丸を見つめる。
二人は、手を重ね合わせて言った。
紅丸は、二人をじっと見つめた。
紅丸は、頭を抱えてそう言った。
二人が声を揃えて言った。
そんな二人を、紅丸は見つめた。
そしてその背後に、九つの狐の尾が見えた気がした――。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。