第19話

第二話
120
2025/01/29 17:08 更新
平重衡
大の男が大勢で一人の女によってたかって狼藉するだなんて……
平重衡
情けなくて、見てられないね
あなた
…重衡様
面倒は起こさないって言ったけど起こしちゃったから自分で解決しようと思ったのに…
…守って、くれるんだ
堂々と歩み寄ってきた重衡さんが、私と直家さんの間に割って入る
昨日は冷たく凍っていた瞳の奥に、今はかすかな火がちらついていた
…重衡さん、怒ってる…?
平重衡
君達、確か数月前に頼朝様の傘下に入った武士だったよね
直家
…へえ!俺達のような新参者を知ってくれてるとは驚きましたよ
直家
でもまあ、放っといてもらえますかね、重衡……“様”
“様”をわざと強調し直家さんが肩をそびやかす
直家
ああいや、失礼。“牡丹の君”でしたっけ
武士
そうそう。女どもが騒いでましたよ。ずいぶん人気があるようで
…ちょーっとだけなら口を挟んでもいいかな?

……礼儀がなってない人は、苦手なんだよね
あなた
…牡丹の花言葉は“誠実”“王者の風格”…なんともまあ、素晴らしい花ですよね。頼朝様に仕え、武士を纏める方にはぴったりではありませんか?
平重衡
…!
武士
は…
あなた
気品のある牡丹の花を宛てるだなんて。随分と尊敬してらっしゃるのですね!
…ああ。失礼。重衡様目上の方に尊敬の意を抱くのは極普通のことでしたね
あなた
…ねぇ。直家“様”?
どれだけ女性同士の皮肉を掻い潜ってきたと思ってるの?
幹部様方なかむ様方関係で泥沼に突き落とされた回数なんていちいち数えてられないくらいだったからね。……後悔はしてないけど。

この程度の皮肉なら日常茶飯事。
直家
っ…な、なんだお前!!
平重衡
…容姿を褒めそやされることには慣れてるけど、それ、今の状況に関係ある?
少し言い返されただけで顔を真っ赤にして殴りかかってきそうだった直家さんを目で牽制しながら重衡さんはご最もな言葉を放つ
武士
はっ、さすがに余裕ですな、“平”重衡様は
武士
平家の癖に幕府に寝返っただけあってツラの皮が厚くいらっしゃる
あなた
…寝返った…ねぇ
小さく呟き、ぴくりとも表情を動かさない重衡さんの白哲の美貌を見つめる
…平、は平家のことか
平家と源氏はかつて大きな戦をしたのだと聞いた
___天下を二分するほどの戦いの末、頼朝さんが率いる源氏が平家を下した。
直家
“平家にあらずんば人にあらず”なあんて、一時期、平氏は言ってたそうですな
直家
まあ今は無様なもんですが
だからなんだと言うのだ
寝返るなんて政治面で多種多様な理由であるだろうに

…真逆、知らないのかな
平重衡
人が持って生まれたものを羨むのは、下劣な人間がすることだ
平重衡
君達、そんなことも習って来なかったの?
…あはは。皮肉に対して随分直球に返すなぁ…まぁそれがこの時代世界の正解か
直家
……っ
武士
何だと?!
こんな軽い挑発にも乗るなんてね
直家
…おい、よせや
……へぇ?意外。
殺気立つ周りの武士達を、かろうじて冷静さを保っていた直家さんが止めた。
直家
……へっ。さすが坊っちゃん育ちは言うことが違いますね。……そこの嬢ちゃんもな
あなた
なんでそこで私を出すの……
直家
ですが、あいにく俺らのようなもんはお上品な教えよりも力で生き抜いて来たもんで
直家
弱い相手の言うことなんざ、たとえ立場がどうだろうと聞けねえんですわ
……は〜…イライラする。
自国ならとっくに捕まってるのに
こっちには不敬罪ってものがあってね?
いっその事女に負かせられる屈辱を味わってもらおうかな
平重衡
なるほどね。だったら___
重衡さんの右手が鞘に触れ、かちりと僅かな音が響く
あなた
…!
武士
……!
平重衡
俺の実力が上だったら、君達は言うことを聞くってことだよね





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