滲む涙を少し乱暴に制服の袖でゴシゴシと拭うと 、
滲んだ視界がクリアになって 、目の端に映る窓から
溢れ出る柔らかい日差しが癪に障るくらい 、
キラキラと輝いていた 。
少し眩しく感じるその光に目を細める 。
いつのまにか先程まで浮かべていた笑みが
崩れていた事なんて全然気づかなくて 、
ただ 、この胸の苦しさを消すのに必死で 、
また滲みそうになる涙をぐっと堪える 。
ただどうしようもなく 、
鼻の奥がツンとして 。目頭が熱くて 。
段々と無意識に弱気になっていく自分に嫌気がさした 。
ガヤガヤと騒がしくて 、賑やかな教室にとって 、
場違いすぎるようなこの表情を誰にも見られたく
なんてなくて 。
机に顔を伏せてぎゅっと目をつぶった 。
すると抑えきれなくなった涙が頬を濡らして 、
また酷く痛む胸と 、拭えない息苦しさが押し寄せる 。
『 ッぅ ... 。 』
思わず声が漏れると 、荒くなる息遣い 。
耳の奥で心臓の音が 、大きく 、鮮明に響いて 、
全身が圧迫されているような感覚に陥った 。
生活音や周囲の声がだんだんと遠のいて 、
不快感と気持ち悪さが増す 。
私の名前を呼ぶ声がした気がするけれど 、
段々と聞こえなくなる音に耳をすませるほどの
余裕なんてなかった 。
込み上げてくる謎の不快感から逃れるために
息を吐き出すと 、ズキリ 、と増す胸の痛み 。
ひとつひとつの胸の鼓動が
重くて 、痛くて 、大きくて 、苦しくて 。
恋という気持ちが心に存在する事実を受け止めるのが 、
この時の私にとっては 、何故だか 、
どうしようもない程に辛くて仕方なかった 。
受け止めきれない
この気持ちにぐちゃぐちゃになった心 。
この苦しみに耐える方法が思いつくほど 、
頭はまわらなくて 。
そんな事実にまた胸が締め付けられて 。
改めて恋の辛さを実感することしかできなかった 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。