焦凍が放った氷を溶かし終え、第三試合。
焦凍のクラスメイトの人と、B組の人だ。
会場の人ほとんどが熱中して観ている中、私はさっきの焦凍の後ろ姿が忘れられずにいた。
きっと、試合の前にエンデヴァーから何か言われたんだと思う。
左を使いたくないから右だけを使って、でもイラついてしまって右を最大限に放ってしまって・・・
左を使いたくないのに、右を使う上では必ず左が必要になる。
それが、焦凍にとってどれくらい辛くて悔しいことか。
私は、焦凍の痛みを分かち合えない。
私は、焦凍にとって不必要な存在。
分かち合える方が、焦凍にとっては迷惑な話だ。
第三試合が終わり、第四試合、第五試合・・・と次々に終わっていく。
多くの人が、あの場に立ちたくてここにいたはずだ。
なのに、私は・・・
私、なんでここにいれるんだろう。
焦凍たちへの行いを、家族の前で反省する素振りも見せないまま。
焦凍が苦しんでいるのに、私はクラスメイトたちと笑い合って。
本当に、何がしたかったんだろう。
歓声が上がる。
顔を上げると、そこには爆豪くんに負けじと大技を繰り広げている、女の子がいた。
あなた「すごいね、あの子」
「ねー、爆豪の位置じゃそうそう見抜けないよ」
「やっぱヒーロー科やべー」
私も、あの子のように立ち向かえる勇気があれば・・・
何か、変わっていたのだろうか。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!