本気で怒っている晴人さんには申し訳ないし
心配させてしまった事に心が痛むけど
プンプン怒っている彼を、もう可愛いとしか思えない。
わたしは彼の隣に座って
もう一度「ごめんなさい」と謝った。
晴人にんはこっちを見てもくれない。
わたしが言い訳を始めると
彼はやっとチロっと視線を動かした。
晴人さをがイラッとした声を上げた。
ここで変に嘘をつくと
やましい事があるみたいになってしまう。
それだけは避けたい。
わたしがそこまで言うと
〜♪〜
晴人さんのスマホに着信音が。
スマホを服のポケットから出すと
わたしの横で電話に出た。
そう言うとスマホを耳から離して
やっとわたしの顔を見てくれた。
わたしがそう返事すると晴人さんは少し頷いて
またスマホを耳に当てた。
晴人さんは、電話を切って
スマホを服のポケットにしまうと
ソファから立ち上がって
わたしに手を差し伸べた。
ゆっくりと手を伸ばして晴人さんの大きな手と重なった。
晴人さん…電話で彼女って言ってたな…
田口さんと松村さんかな…。
車の中ではずっと無言で、晴人さんは
何も話してくれなかった。
まだ怒ってるのかな…
わたしはそれほどの事をしてしまったのか
というか、何処に行くんだろう…
でも…心が暖かくて心地が良かったのは
無言の中でも
ずっとわたしの手をギュッと握ってくれてたから…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!